【R18】蜜を求める牢獄

ロマネスコ葵

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第一章 出会いと別れ

3 彼は何か異変に気づく。 ※微

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「うっ……」

 本当にいいのかな。もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。
 今ならベルを蹴って突き放すこともできる。けれどその後を考えると、何をされるか分からない。ならここで受け入れてしまえば。……でも……。

 すると、急にベルは私から目を右横に逸らし、舌打ちをした。え……? 私は何もしていないのに。何に対しての舌打ち?

 ベルは私から離れ、自分が元いた位置に戻った。解いた紐の上に座り込み、わざと手首を腰に添えていた。
 暫くしてからどこからか、足音が聞こえてきた。ああ、このガシャガシャしたプレートの音は恐らく兵士だろう。ベルは前からこれに気がついていたのか。

「……鋭いんですね」

 そう、私はボソリと呟くが、ベルは最初の時のような薄暗い雰囲気で俯きながら黙り込んでいた。
 ……演技もできるのかな。なんとなく、相当なやり手なんだろうな。そんな気がする。


「飯の時間だ」
 

 兵士二人が二つの皿を持って私達の前に現れる。いつもと同じ、ペットに餌でもやるかのような底の浅いボウルに泥のような物が盛られていた。
 慎重に扉を開けるのが分かる。二人目は後ろで剣を構え、私達が強引に抜け出さないが為に警戒をしているようだった。
 私のご飯は丁寧に置かれたけれど、ベルの物に対しては乱暴に放り投げられた。ご飯はほぼ床に溢れてしまい、食べられそうにない。
 ご飯をよこした兵士は一人でクククと嘲笑っていた。

 扉を閉めるとその兵士は鉄格子の隙間から足を出し、ベルの頭に押し付けた。

「残さず食うんだな」

 一人楽しそうにベルを虐めているようだが、ベルは何も反応を示さなかった。
 ここで反応すれば、また何をされるか分からないだろうし。にしても、兵士はよっぽど彼を粗末に扱っている。何か恨みでもあるのではないかというくらいに。
 うーん、ここで散々暴れ回ったから、か? それとも……。

「そうだ。626。お前も手首が苦しいだろう。悪いなぁコイツと一緒の部屋にさせて。お前の大人しさに免じて、少し過ごしやすくしてやる」
「え…………?」

 すると、私の手首に縛られた紐が熱で溶けてるかのようにドロッとした感触がした。魔法か何か。けれどその紐から尋常じゃない熱さに圧倒されそうになる。

「あ、つ……!! 熱い……痛い……!!」

 熱さも束の間だったのかもしれない。今度は首に違和感を感じる。急に首元に輪っかのような物がぶら下がった。
 首輪? 厚めで少し重みを感じる。
 手首……動かせる。解放された? 今まではご飯の時ぐらいしかまともに解放されなかったから、未だ感覚が麻痺しているようだ。

「おい」

 重みのある、刺さるような声でベルが兵士に言う。

「何だ203? この女に恋でもしたか」

 兵士がそう煽った後に、

「626。これで多少なりとも、203に何かされたら抵抗はできるんじゃないか? ま、下級に手を出すほど、こいつもそこまで落ちぶれてるとは思わないけどなぁハハハハ!」

 兵士はベルの頭から足を離すと、満足がいったのかもう一人の兵士と嘲笑いながら出て行ってしまった。


***

 …………手。あの熱さは何だったのかというくらい火傷の跡もなく、多少の切り傷のみで済んだ。

 動く。こんなに長い時間、手を動かしたのは何日ぶりだろう。私は壁に腰を掛けて、足を伸ばした。そして自由になった手で何度か空気を掴んでみせた。
 自分の頬もずっと両手で押さえられている。足だってさわれる。
 首輪は……鉄でできているのかな? 重いし、肩に負担がかかっていそう。


「ひゃっ!?」


 そんな事してる間にベルが再びベッドにのし上がり、隣に座ってきた。
 そしてベルは私の手首を掴んでまじまじと傷口に目を向けていた。

「大丈夫なのか」
「っ大丈夫です……!! お気になさらず」
「そりゃ心配するさ。俺の未来の伴侶様だぞ??」
「違います! 私は貴方の運命の人でも、未来の伴侶様でもありません」

 ばっさりとお断りをすると、ベルは一瞬ムッとした表情をしたが、直ぐに元通りにケロッとした。

「ふーん。じゃ、続き聞かせて? お前が形見を盗んだ話」
「話そうにも、また先程のようにされたら、まともにお話できなくなってしまいます。……それに、兵士も仰ってましたが、私のような人間に手を出すなんて恥を知るべきです!」
「俺の様子にも気づかない奴の話を信じるのか。アイツらは俺が縛られてない事すらも愚か、血を拭った跡さえも見逃した」

 一人を除いては……だが。と、意味深な言葉も添えられる。

「信じる、といいますか……彼らが言う前から、私も自分自身の事をそう思っていました」 

 あ、そう。と言わんばかりの表情。興味が無さそう。はぁ、と溜め息だけ吐かれる。

「お前が自分をどう思おうが、俺は知ったこっちゃないね。いいからさっさと俺に全てを話すか、もう一度だけさせてくれない?」

 そうやってキスを迫ってくる。
 これ以上、力を加えられたら耐えられそうにない。彼の思うままになってしまう。
 
「もう! 貴方のことを思って、伝えてるのに」
「……ったく、自己評価が低い割に、堅いな」
「う……」
「でもそれでいい。堅物のほうが更に狙われにくくなる」

 脱力感。何を言っても、平行線なんだ。
 こんなに思い悩んでても、ベルは私の髪を指で絡めて弄んでいた。
 暫くの間は私の肌を嗅いだり、好きなように楽しんでいたけれど……。
 
「んー流石は運命の人。匂いもそそられるし。さっきだって、お前の口ん中が麻薬で塗りたくられてるんじゃないかと思うくらい良かったんだ」
「――――っあ」

 私の手を持ち上げ、手首の傷に舌を差し込むかのように舐めとられる。今気づいたけれど、先程の切り傷から血が流れていた。
 
「うん……? 血までこんな味がするのか。これは、まさか」

 
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