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第一章 出会いと別れ
9 彼女からのアドバイス?
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「いい? ここはどう見ても男が多いんだから。アンタは若いんだし、若さを使って男の人を利用するのよ!」
「若さ、ですか……」
それよりも、どうしても見ちゃう……。胸。
そして此処は浴室――と言っていいのか。鉄壁で薄暗く、擦れたような跡がいくつか残ってて少し怖いところ。
兵士に案内され辿り着いたのは、ボロいけれど大きな浴室だった。
どこの部屋もそんなもんか。私達に気を遣ってリフォームなんて、これっぽっちも考えてないんだろう。
にしても、気色悪い……。床が汚れているのかな。どの水溜りも濁っている。
私達は兵士を置いて浴室へ入り、シャワールームへと向かっている。お互いに裸なんだけれど、にしても、同じ性別なのに体格差が……。
リベラを見てると、私の胸、小さく感じるなぁ……。
「そ! どんな時も可愛く対応するの。そうしたら気に入ってもらえるから。ましてや既にベルに気に入られてるんだから、できるでしょ?」
「自信がありません。下級という肩書もあるので。そもそもベルさんに気に入られてるのは紛れなんです」
「またぁ。ここにいる奴らはもう、全員下級以下なのは分かるでしょ? 大体の奴らは性別が女であれば良いと思ってるのよ」
「そうでしょうか……。でも確かに、食堂にいた時も視線を感じました。そして、ベルさんと出会った時にも、私を狙ってる人は多かったと聞いています」
「下級は基本、相手に対して常に従順である事がルールでしょ。そりゃそうよ。何でも言うことを聞いてくれるなんて、都合が良いじゃない」
「なるほど。確かに都合の良い人だから扱いやすいかも……」
本当にいくつものシャワーが掛けられてる。
リベラは肩にかかった髪を広げるように靡かせ、一番奥のシャワーの前に立つと、自動的に水が流れてきた。思いの外、シャワーの圧は強く、お湯が出ているのか湯気がたつ。
リベラの足元を見ると、スイッチのような窪みが一部あるのが解った。なるほど、これを足で押すとお湯が出る仕組みなんだ。
「あんまり良い水じゃないから、口に入れないようにね」
「はい」
私もリベラの隣で、シャワーを浴びる。……凄い。下級の生活よりマシかもしらない。普段なら池から水を組んで、布に水を含ませて拭うのが日常だったから。
「実は、シャワーって初めてなんです。本で読んだだけで」
「ええっ!? ……ほんとに不便。アンタの故郷は」
「はい。ここでシャワーを浴びていると、私の暮らしは本当に不便だったんだなぁと、ひしひし感じます」
髪の隅から隅まで水が伝っていく。温かいから尚更、なんて心地よいのか。
温かい。ほんとに。体中を包み込んでくれている。
「……はい。石鹸」
「えっ」
下から上に、軽く放り投げて私に固形物を渡してきた。手のひらに収まるほどのサイズだ。
あれ? これってもしかして。
「アンタにあげる」
「これ、もしかして、先程ベルさんから貰っていた報酬ですか?」
「違うけど。でも確かにベルから貰ったのは石鹸よ。しかも香りつき。アンタのはあたしのお下がり。匂いはしないけど、ちゃ~んと汚れを落としてくれるから」
「わぁ! ありがとうございます。嬉しい」
「石鹸は希少価値が高いんだから、大事に使ってよね」
「はい! ……ですが、香りつきの石鹸となると、兵士に怪しまれませんか?」
「問題なし。他の兵士から貰ったと伝えればね。そこで仲間割れが発生してくれれば、あたし達にとっても敵が減っていいでしょう」
リベラの人脈は凄いなぁ……。そうやって人を転がしていくんだ。
リベラの髪はどんどん泡立っていき、溢れていく。体に纏わり付く泡を見ていると、なんだかドキドキしてきちゃう。
……私って、変だな。さぁ、自分も気持ちを切り消えて、泡を。
手のひらで水を含ませながら転がすと、徐々に泡立ってきた。
凄い。小さな泡玉がふわふわと飛んでいく。
優しく髪に乗せていく。シャワーで溶けちゃうから、少し横にずれて、と。
髪に絡むともっと泡が増えてきて気持ちいい。
これでベルにも、綺麗になったから褒めてもらえるかな。
「ねぇ、さっきの紛れってどういう意味?」
「えっ、あ、ベルさんの事ですか? 実は」
さっきの紛れ。私がベルさんに気に入られた理由。それは私にとてつもない魔気を感じた事。そしてベルさんがイベリス教の信者である事。後者の話は知っていたようだけれど、リベラは何だか眉間にシワを寄せていた。
「そっか。そういう事ね、納得」
「はい……」
「ま、いいわ。とにかく、どこ行ったってこの国は一妻多夫制なんだから。性はどんどん利用してかなくっちゃね。逮捕されてようが何だろうが、女は需要が高いのよ」
一妻多夫制……??
「私達は何人もの旦那様に選んで頂けるのてすか?」
「女にも選ぶ権利があるわよ。ここの兵士に選んでもらえれば、あたし達はこっから抜け出せる事だってできるのよ」
「えっ……!!」
受刑者だろうと、相手が兵士であり国からも信頼のある兵士であれば、彼らが受刑者の責任も全て背負っていくという理由で、住民からは黙認で受刑者は解放されるという事。これが適用されるのは一度まで、らしい。
「ふふ。そう考えると、ベルの相手をしてる暇はないでしょ? いくら一妻多夫制とはいえ、兵士を利用してベルまで引きずり上げるなんて無理に等しいから」
「なるほど……抜け出す為には、そうかもしれません」
心にないこと、なのかもしれない。
一瞬、どうせなら一緒に抜け出したい……という気持ちが湧いてきた。彼の罪状も知らないし、まだよく分からない事が多いけれど。色々協力してくれるし、良い人だと思ってる。
その分、求められる事もあるけれど……。
「んっ……?」
急に、腹の下辺りがキュンと押されるような感覚が。子宮?
また今日も……してくれるのかな。急に脳内にベルの姿が浮かび上がってきちゃって。今にも溶けそうだった目つきとか、そんな表情をしながらも私を気持ちよくしてくれて――――
「…………なんだ、つまらない。全然アドバイスしても引っかかってくれないじゃん。その様子じゃぁ、ベルに離れる事はないのかしら」
「はっ」
今、ボーッとしてた?
「あんな奴の事なんて、忘れちゃえばいいのに……」
水の音ともに密かに聞こえたリベラの声。
今、確かに冷たい声で、ベルを指した言葉を発したような。
「――今、なんて?」
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