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第ニ章 もう一人のヒーロー。
22 好きになる、好きになる。 ※微
しおりを挟む「はい、僕のことが好きにな~る、好きにな~る」
「好きに、なる……す……き……に……」
好きになる、好きになる……。
「おはようございます! ルーツへいちょ! あの、先ほどルーツへいちょーのお気に入りが泣いて出て行ってしまいましたケド……」
誰かが元気な声を出して扉を開ける。
扉の半分くらいの背丈の男の子が、ポカンとした表情で私達の方を見ていた。
「だ……れ……?」
視界がボヤける。ウトウト、ウトウト……。
小さくて、なんとなくクセっ毛が強い金髪で、毛先がグラデーションのようにピンクになっている男の子が居る……。服装もしっかりしていて、白シャツの上にブラウンで七部丈のオーバーオールを着ていた。
「あわわ……あ、新しいお気に入りさんですかっ?」
男の子は扉を半分ほど、そぉーっと静かに閉めていく。ルーツが私に顔を向けながらも、目を横に向けて舌打ちをした。
「はぁ……。も~、駄目じゃないか。勝手に入ってきちゃ、ね? 琥珀お坊ちゃん」
「あっ、あっ……ごめんなさ。いえ、申し訳ございません。へいちょー」
困ったような、いじらしい顔……。なんでこんな子供がここにいるんだろう。お坊ちゃん……?
ルーツは私から離れて先程の椅子に座り、コホン……と咳を一つ。
「で、何用かな?」
「あ、実はボクのパパが――いやっ、父上がルーツへいちょーとお話がしたいそうですっ」
「王が話を……? 話ってのは何か、少しでも聞いてるかい?」
「う、うーんと……、父は日頃のルーツへいちょーのお姿を見て、とっても気を良くされています。それで、ぜひ……おシゴトの合間に一時間だけでもボクに剣術を教えてあげてほしいと」
「…………は?」
ルーツの事が好き……ルーツの事が……って、あれ……? 何だか椅子の向こう側からとても嫌なオーラが出ているような。
私も起き上がると、琥珀という男の子が自分の人差し指を合わせてモジモジとしているのが見えた。
「んっと……なんというかぁ、こういう時間にボクと手合わせをしてもらえればなって! 父もそう仰ってます」
「嫌だ」
ピシッと拒絶され、琥珀はその場で震え上がっていた。
「はうっ!」
「んーそうだね……。僕もそこまで時間は無いんだよなぁ。――あ! なんなら王子! このお姉さんと遊べばいいじゃない」
ルーツが指差したその先には……まさかまさかと思っていたけれど、紛れもなく私に向けられていた。
「え……ええええっ!? わ、私が子守をするのですか!? し、しかもお坊ちゃん――いえ、王子の!?」
ちなみにどこの王子様なのでしょう? とルーツに問うと、グロキシニア城の王子に決まってるじゃないかと、これまた即答される。
あんまりだ……。
私なんかが王子を触っていいわけがない。ましてや私は、恐らくこの子の母である形見を盗んでるんだから。
無理、無理です。絶対に無理です、ルーツ。私は神に願うように両手を合わせて、首を左右に一生振り続ける。
「へいちょー!! ボクは剣術を覚えたいのですっっ! おままごとをしたいワケじゃありませんっ!」
「悪いけど、剣術は専門外だとパパに伝えてくれないかい? 僕は基本、銃しか使わないんだ」
ん……兵士なのに、ルーツは剣を使わないの……? 私の偏見か、兵士は基本剣を使うような気がしているけれど。
「せ、せんもんが? とは……?」
「……ふぅ。つまりね、パパにこう言うんだ。い・や・だ! ってね」
「わ、わかりました……! パパに伝えます!」
ペコリ……琥珀王子は正しく九十度の角度でお辞儀をする。そうして、そそくさと扉を閉めて出て行くかと思いきや――
「あ、あの、新しいメイドさんっ! 今度、ボクと遊んでくださいねっ……?」
大きな琥珀色の瞳をぱちくりと覗かせながら、言い終えた後に扉を慎重に閉めていった。
「――――か、可愛らしい王子様でしたね」
「どこが? 折角の時間が台無しだよ。純粋に見えて裏がある奴だから何か変なこと企んでないといいけど……」
まぁまぁ……宥めようと彼の椅子前まで向かう。覗き込むようにルーツの顔を見ようとすると――
「んっ……!?」
急に頭を抱えられて不意のキスが訪れる。舌がねじ込まれて、三日振りのねっとりとした感触に溺れそうになる。
「あっ……ふっ、んっ……むぁっ……」
「ぷはっ……ん、甘い」
ルーツは肘掛けに脚を引っ掛けて、私を抱き寄せた。ソファのように広いわけでもないから若干窮屈だけれど、その代わりに密着度が増した気がした。私の胸がルーツの胸板に当たる。大人しくしていれば彼の鼓動が聞こえてくるようだった。
「僕のこと、好き?」
「うん、好き……」
「だと思った。鼓動が速くなってるの、伝わってるよ」
「はっ!!」
今、ルーツの爽やかで王子様のような笑顔に騙されそうになった。
「あの時、丁度いいタイミングに王子が来てくれて良かったです。またしても貴方の変な呪いにやられるところでした……」
「失礼しちゃう……。さぁ、君は僕とエッチがしたくな~、る、う!?」
私はルーツの唇を片手で押さえた。驚いた目つきで私を見てくるけれど、そんなのお構いなしだ。
「早く私をここから出してください。牢獄に帰してください! お願いだから、ベルに会わせ――――て? あれ……なんだか変な感じ……」
私は何を? 何故、ルーツ様の口を塞いでいるのだろう?
ごめんなさい。ルーツ様……私としたことが。貴方が私を望むのであれば本望です。
私はこうして、ルーツ様に自らキスを落とした。
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