【R18】蜜を求める牢獄

ロマネスコ葵

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第ニ章 もう一人のヒーロー。

24 海族って?

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 ――――琥珀王子は、ベルの事を知っている?

「お姉さんは、お兄様のことご存知ですか? 牢獄で、お会いしたことありますか……?」
 
 私はゴクリと唾を飲んだ。ここで、はいと言えばどうなる? 一見、何もなさそうだけれど……。

「答えたくなければ、それでいいんですっ」

 押し黙る私に、笑顔のサービスをくれる。

「彼の名前はベルナードさんと言ってね、ボクにとって最高の勇者様なんですよ!」
「……勇者様?」
「あ、分かりませんか? 強いて言うなら、スーパーヒーローみたいな感じです! スーパーマンです!」

 色々と別の名称を並べてくれる王子。言いたいことは分かったのだけれど……。

「何故、彼が勇者なのですか?」
「本当の勇者ではありませんが、ベルナードさんはボクを助けてくれた時があったんです。――盗賊なのに。こんなボクを、ね」

 キッカケは、四年前の事だった。
 琥珀王子がまだ六歳の頃、兵士と手合わせをしていた時に海族に手を出されたらしい。
 その海族はローズ周辺の海に住む者達だった。
 王子は上級土地に居たのにも関わらず、セキュリティの問題ですんなりと忍び込めてしまった海族達は王子を捕獲して兵士を脅したのだという。

 その時に、ベルが突如空から降ってくるように現れて、両手に持った短剣を海族の首に振り下ろして王子を逃したんだそう。

「あの時はカッコ良かったな~~! お礼を伝えようとしたら直ぐ下の中級土地に飛び降りてしまって」
「す、すごい……! 一撃必殺だったというわけですね」
「そうです! ベルナードさんは、『友達の為』とだけボクに伝えて、どこかへ去ってしまわれました」
「友達……??」
「ええ。リベラさんの事です。リベラさんは元々海族だったので」
「っえ? リベラ……さん? 元々海族? え?」

 海族が王子を襲った理由……。それは、グロキシニアの牢獄へ閉じ込められた仲間を故郷に取り戻す為。

 その仲間とは、リベラの事だった。

 彼女は本来はローズの海族であり、人魚姫であった。けれどリベラは故郷である海を出てグロキシニアで数々の人間達を虜にしていき、金銭をばら撒き狂わせていったという。それが問題となり、リベラはある兵士と行為の最中に女兵士に取り囲まれて拘束され、牢獄に閉じ込められたんだと。

 人間に深入りしてはいけない。そういった掟が海族の中であり、リベラは故郷の掟を破ってしまった。
 仕来りを破った者は深海にて、ある処罰を受ける事となるそうで、海族達は何としてでもリベラを牢獄から引きずり出して処罰を与えたかったんだそう。
 何やら処罰で掟破りの者には謎の焼印をするんだそうだけれど、深海で焼印なんてできるのかな……?

 グロキシニア城はリベラを牢獄から出すのを許さず、罪を犯した者を一度手放すのは国民に不安を与えると判断し、海族らの話を一切聞かなかった。だから、海族らは強行突破という形でこのような事件を起こしたんじゃないかと言われている。

「そしたら、ベルナードさんは友達であるリベラさんをその処罰から逃す為に王子を助けたって感じでしょうか……?」
「恐らく、そうだと思います……それをやられるくらいなら、牢獄にいた方がいいと判断したのかもしれないですっ」
「なるほど……」
「…………ああ、会いたいなぁ。ベルナードさんに。僕と自分の友達まで助けてくれた勇者のベルナードさん……!」

 まるで夢を見てるかのような表情。

 しかしそれは叶わなかった。
 世では王子を助けてくれたヒーローは誰なのか分からないまま、王子だけがそれを知っていてベルはそのまま姿を消したのだという。
 王子は一度、王に報告をしたが信じてもらえなかった。ベルは王にとって厄介な大盗賊であり、殺人鬼という肩書が残されていたから。

 ――って、琥珀王子は淡々と語り続けるけれど。

「……私も会いたいです」
「えっ?」
「!! コホンッ! 何でもありません。……にしても、意外でした。リベラさんが海族だったなんて。普通に生身の人間だと勘違いしまって――なんというか、人魚らしくも無かったというか……」
「っああ……! そ、それは、ですね……」

 急に琥珀王子の頬が真っ赤に染まる。何をそんなに息詰まっているのかというくらいに。
 
「噂……ですが。リベラさんに人間のを与える事によって、人間のお姿に変わる事ができると聞いていますっ」
「精?」
「あっ……えと……それが実は、男性器から出る、その……精子だと言われていて……はわわわ」
「っえ……!!」

 お互いに腕をふるってバタバタとする。

「あのっ……王子……!!」
「い! いや! お姉さんが言わせたんじゃないですかーっ!」
「で、でも! でも……これにはっ!」
「べ、別にその、精子じゃなくても女性から出る液でも良いとか悪いとか」
「フォ、フォローになってないです……!!」

 そ、そしたら……もしかして、もしかして。

「そしたら……ですよ。王子? もしかしたら、ベルさんもそれに協力したりとか」
「…………?? さ、さぁ……無きにしも非ずといいますか」
 
 王子の額から溢れ出る汗。私も同じく、ハンカチが欲しいくらいに汗が滲み出てきた。




「それは、あるだろうねぇ」

 ――この声は。

「る、ルーツへいちょー!」

 王子が振り返ったその先には、壁に肩を預けて腕を組んでいるルーツの姿があった。
 
「王子。そういう話はもっと大人になってからするもんです。ったく……パパから教えてもらわなかったのかな?」

 表情から察するに、ルーツは何だか機嫌が悪そう。

「ご、ごめんなさい……。ルーツへいちょーのお兄様のお話をしていたら、リベラさんの事情も話さなきゃいけなくなってしまって、つい」
「ハッ、どいつもこいつも兄の話ばっかだ」

 所々に兄から影響を受けたような口調。そんなルーツは眉を潜めて釣り上げながら、私の前へと近づいてくる。
 
「ねえ、キラさん」

 自分のズボンの各ポケットに両手を差し込んだまま寄ってくる彼に、

「気安く呼ばないでください……!!」

 私は椅子を盾代わりにして後ろについた。

「君もこれを見れば兄に失望するだろう。僕が見せてあげるよ」

 
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