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第ニ章 もう一人のヒーロー。
39 逞しくなった女の子? ※微GL?
しおりを挟むそういえば、ベルとバーテンダーのショウが話していた時のことを、ふと思い出した。
ショウは解除魔法が使える。解除の範囲はどこまでか分からないけれど、もしかしたら石化も解除できたりするんじゃないかな?
詠唱――とか、言ってたっけ? なんて唱える?
解除。
解除、解除、解除!!
この石化を解いてーー!!
「…………」
しーーん……。
「ひゃぁぁ……私には駄目なのかなぁ」
「あ、諦めるの早っ!? 早過ぎ!? 早過ぎてびっくりなリリアです!!」
ちなみになんて唱えたんですか? と、聞かれたので素直に答えた。
「安易過ぎます。リリアよりも、おバカです……」
「おかしいじゃない……なんで魔量があるはずなのに、こうも上手くいかないんだろう」
「んと、詠唱が上手くいってないからじゃ」
「詠唱って、どうやるの……??」
「それはぁリリアに聞かれてもぉ……。で、でも、世の中には無詠唱もあると言いますし! それに掛けてみるのもありですよね??」
無詠唱。
無詠唱……つまり、どうしろと?
私はリリアに背を向けたまま、背で語るように硬直してみせた。察してほしい半分、助けてほしい半分。
「無理そうですね。無詠唱を分かってない感じがリリアに伝わってきます!!」
「誰かに開けてもらえれば、な……」
「……!! そうですよ!! 開けてもらいましょうよ!!」
「えっ……どうやって??」
…………。
猫のモノマネをするとか言い出したので、即座に却下した。
「駄目ですか……?」
「絶対に、嫌! もっと他の方法を探しましょう??」
「そしたら!」
女騎士でも、兵士でも何でも。
相手が女であれば行動をする。何故なら、開けてもらうのと同時に衣装も全て奪い取る為!
リリアは、えっへん! と声を張り上げた。
「でも、何をするの?」
「女兵士なら基本、ルーツ様と関わりがあるはずなのです」
「それで……?」
「嫉妬させるのです!」
「嫉妬??」
所謂、どちらかがルーツのモノマネをして、どちらかが愛人の役をするという。ルーツは女誑しだけれど、何とか愛人関係は上手くやっているようで、誰も気づいてないみたい……。だからそれを利用するのだと。
「でも、それってルーツと相手の信頼関係を壊すって事だよね」
「いいんです、そんなの気にしなくたって! いつか壊れる運命なんですから!」
「そ、そんなもんなのかなぁ」
ガッツポーズするように、自分の両手をぎゅっと掴むリリア。ふんすっ! と鼻息までたてる。
「じゃあ、ルーツ役はどっちがやる?」
「えっと……そしたら、リリアがやります!」
「分かった! そしたら私は愛人役ね」
へへへ、と互いに笑い合う。やっと心が通じて協力し合ってる感じに喜びを得た。
「……ぁ……あーー。あーー」
「リリアさん?」
「あ、いえ。今、ルーツの声を出してみようと思って」
低い声を出そうとしても、リリアの可愛らしく子供っぽい声に変わりはない。何だか、声変わりには程遠い男の子のような声。
「無理だよ……」
「ふええ……そしたら愛人役のキラ姉様に頑張ってもらうしかないですぅ」
「わ、分かったよ。どうしたらいいかな? ルーツ様、好き……とか?」
「あ、そうですね! 如何にも愛し合ってるかのような言葉を並べてみましょう!」
愛し合ってるような言葉。
すると、本当にタイミングが良く、兵士がどうかまでは分からないけれどドア越しから女性の笑い声が聞こえてきた。リリアがゴーサインを出すかのように、こくこくと無言で頷く。
「っ……えと」
これは本音じゃない。これは本音じゃないと自分に言い聞かせる。
「ルーツ様……大好き!!」
大好きを強調して大きな声で言ってみた。
すると、途端に笑い声が薄れていく。
親指を立てるリリア。
「ルーツ様、私と、ずっと傍に居てくれますよねっ……!!」
駄目だ。嘘でも恥ずかしい。心臓がバクバクと張り裂けそう。何だか体も火照ってきてるような。
え……。と扉から声が聞こえる。笑い声も消えた。
「や、約束、でしょ? 他の人とはもう関わらない、私だけだって!! っひゃあ!?」
急に抱きついてくるリリア。これも演技の為……?
そしてリリアの手が私の胸に近づいてくる。
「ち、ちょっと……やり過ぎ……!!」
「ここはリリアも、ルーツ様っぽくならないとと思って!」
リリアが耳元で囁く。
「そんな……!! きゃっ!?」
むにゅ、むにゅ……。小さな手がゆっくりと服の中へと訪れて私の胸を揉みしだく。リリアの手では私の胸は収まらず、指と指の隙間から零れ落ちそうになる。そして蕾を詰むように強く――
「っあん!」
何してるのリリア……!?
「ちょっ、やめて! なんで、んっ、そんな事」
すると、扉を大きく叩くような音が。
「「ちょっと、どういう事!!??」」
お、怒ってる……!? 怒り狂う女の声だ。
でも、予定通りに事が進んでいる。本当に嫉妬して怒る人が居るんだ。
もういいでしょうと私はリリアの手首を掴むけど、なかなかやめてくれない。
「やめっ、やめ、やめて、あっ……!!」
すると、せーーのっ……と息を合わせたような声が扉越しから伝わってきて、ついに扉を破壊しに来たのか丈夫な木材が折れそうなぐらいに、バキッ!! と音を立てる。
けれど扉は外側だけが崩れているのか、内側がびくともしていない様子。
「キラ姉様、もっとお色気のある声を出してもらえますか? あともう少しだと思うのです……!」
「もう少しって! もういいよぉ……!!」
「ね! リリアの事、ルーツ様だと思って」
「無理だよ! 無理ぃっ……!!」
すると、リリアの指は胸から離れて腹部に伝うように、そして私の下半身へと移動していく。
「んやぁっ!? だめ! そこはだめ、だめ、だめ……!!」
ドンッ!!!!
「この時を待ってたのです!! ええい!!」
危ない!! 無事傷はつかなかったけど。リリアは服がはだけた私の前で短剣を振り、扉の方に向ける。すると扉の中央には大きな穴が出来上がり、二人の女兵士がはまっている。
「あれ……ルーツ様は?」
「いないわ……ルーツ様。まさか! アンタたち騙したのね!?」
二人がキーキー騒ごうとしたところ、リリアは素早く一人の女の首に短剣を至近距離まで向けた。
ひっ……!? と、首元に短剣を向けられている女が悲鳴を止める。
「これも脱獄する為なのです! 常に本気なりリアは貴女達に容赦致しません!」
ポケットから何かを取り出し、二人の口に無理矢理含ませる。すると二人は呆気無く気絶したのか、眠りに落ちてしまった。
「……えと、もしかして睡眠薬?」
「ふふん。こんな時の為に所持しといたのです」
ささ、手っ取り早く女兵士から服を頂きましょう! その言葉を最後に、リリアはそそくさと女兵士を扉から外すところから始めた。
何だか……急に逞しく感じてしまった。
やり方が盗賊っぽいので、これもまたベルかルーツに教えてもらった事なのかな……と、少し思った。
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