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第ニ章 もう一人のヒーロー。
40 これからの事。
しおりを挟むよいしょ、よいしょ……重い。
ゴム製なのか、ピッタリと張り付く全身スーツ。その上からプレートを。着替える度にガチャガチャとプレートの音がする。目から鼻までを守る鉄仮面もとても重く、ずっしりとしてる。これは首と肩の負担が大きいだろうなぁ。
仮面を被ると、何だか香水の臭い……。ちょっと、ニオイがキツイかも。
視界の隙間も狭く、いちいち首を横に向けたりしないと辺りを見渡すのが難しそう。
「ふおお……いい感じですよ!」
「……」
「キラ姉様? お姉様?」
私は少し根に持っていた。
少し、エッチなことをされたから……。
「まさか先程のこと、怒ってます? やあんっ! ごめんなさい、ごめんなさいーー!!」
私の目の前でピョンピョン跳ね出す。その度にガチャガチャと響く……。
「今度からは事前に教えてね」
「ふむむ……でも、教えちゃうと、より演技らしくなってしまうと思うリリアです」
「で、でも!」
何だか思考回路が兄のジンと似ている気がする。兄妹だからか……。人の迷惑よりも目的を優先する姿が特に似ている。
「ま……結果的には上手くいったし! 行きますか……!」
「はーい! レッツラゴーなのです!」
ぐぅぅぅぅ……。
お互いに腹の虫が鳴る。絵本にあるお決まりな展開、まさか現実でも起きるとは……確かにリリアとなら、そこまでおかしくないかもだけど!
「ううん……」
「お姉様。リリアもお腹が空きました……」
「変装中だし。少しは何か食べても大丈夫かな?」
「食堂に行ってみますか? もしかしたら侵入者もお腹空いて、食堂に行ってるかもしれませんし!」
人のことはあまり言えないけれど、そんな呑気な侵入者なんているのかな。けれどお腹の虫には勝てそうにない……。
「……そうかもね。行ってみましょう!」
***
トンッ。
「あっ」
「あ……失礼。ところで合言葉は?」
「えっ?」
狭い廊下ですれ違いざまに私より二周り程大きい背の高い兵士と肩がぶつかり、合言葉を問われる。
後ろに居たリリアが、胸に拳を当てて敬礼すると、
「我らは民の光!」
と、堂々と答えた。
「ご苦労様っス!」
同じように敬礼する兵士。満足したのかそそくさと帰って行った。
「凄い……リリア」
「こんな時の為に覚えといたのです!」
「流石! ありがとう、助かったよ」
ほっと一息。
ついに二人分入りそうな大きな扉を見つけ、押し開けてみると何人もの兵士がテーブルを並べてご飯を食べていた。
「リリア達は立って食べましょう。皆集まってるテーブルは少し危ない気がしますので」
「そうだね」
レールの上には大きなお皿。そして、乗せられた食材達。どれも色合いが泥のようでぐちゃぐちゃしてるけど……。
なんだか、牢屋で食べたご飯と変わりはない気がする。兵士たちが食べるのに、酷い待遇。
「美味しくなさそう……」
「はい……食欲が薄れていくリリアなのです……」
「私も」
そういえば、ルーツ達も食堂に来るんじゃないかと思った。リリアに聞いてみると、二人だけは特別待遇で別の部屋があるはずだと言っていた。
別の部屋って何? と聞くと、城内では二人だけの部屋が存在し、そこにメイドさん達がご飯を持ってきてくれるんだって。本来は他のお客様をおもてなしする為の部屋らしいけれど……。
とりあえず私達はトレーを取って、トングを利用し適当にご飯を掴んでいった。
「ルーツと、ジンさんは何を食べるんだろう」
「お兄様はルーツ様のご飯しか食べないのです」
「……というと?」
「ルーツ様お手製のご飯のみ! なのです」
リリアは変装しているからか、淡々とした口調で答える。
「へぇー……ルーツも料理するんだぁ」
「ルーツ様はお兄様のせいで料理が得意になってしまったのです……はっ!」
「うん?」
「ここで、お兄様は禁句ですね」
今更ながらに気づくリリア。私も薄々止めようと思っていたけれど、スルーしてしまった。
「あっ、確かにそうだね」
「……ジン、様。うぅぅ! なんだか気持ち悪いのです」
「ふふ、そんな変わらないって」
変装して悪い事をしてるはずなのに、仮面の中で笑みが溢れてしまった。
「んー、これで、いっか」
お肉と魚は多分、味の期待を裏切らないと思い、そればっかりを選んでみたけれど。色合いがとても茶色で、ドロドロしている。一体どんな調味料がかかっているんだろう。
肉、魚と大して変わらないけれど、お野菜はとても事細かく刻まれていて砂のようになっていたから……やめた。
周りの人はそれを振り掛けていたけれど、どんな味になるのか分からないので諦めた。
そして、リリアはというと……。
なんというか、デザートだった。心は満たされても、元気になれないんじゃないかな?
果物とお花をてんこ盛りにして、大きなお皿を片手で持ってもぐもぐと平らげていた。
信憑性のないメインのご飯よりかは、リリアみたいなのがよかったかなぁ……?
「んねぇ、キラ姉様? っあ! 姉様」
「どうしたの?」
壁に寄りかかって、二人きりで隅っこにて食べ始める。
「もし、ほほを、ふへはひて」
「えっ、えっ?」
リリアはフォークを持って、口いっぱいに食べ物を詰め込んでる。そのせいで何を言ってるか分からない……!!
それをリリアは察したのかごくりと喉を鳴らした。
「んぐっ……もし、ここを抜け出して」
「うん」
「目的を果たせたら、その後どうしますか?」
「目的って、所謂リリアはリベラさんを助けて、私はベルさんを助けて――までで、いいんだよね」
「はいですっ!」
「うーん、そうだなぁ」
何も考えてなかったわけじゃない。結婚――とか、ベルとの事は少し考えてた。そこでルーツの顔も思い浮かぶわけだけど、二人の関係がうまくいくように思えなくて。
私の理想の夢は叶いそうにないというか……。
いつか三人で、仲良くお話できる日がきたらいいなって思ったりもしたけど。無いなぁ、私が二人に怒られて、責められる未来しか見えない。
一体どっちを選ぶんだ!! って。
「お姉様? なんだか顔色が悪いのです……」
「ううん! 皆で仲良く過ごせたらいいなって思ったの。リリアも居て、ベルさんも居て、ルーツも居て。ジンさんも、リベラさんも集まって、ね」
「わぁ! それは良いのです!」
「でも……そこで誰かと深い関係を求めちゃうと、うまくいかなくなっちゃうかな……って」
私がそう言うと、もごもごと動いていたリリアの口が止まった。
リベラはベルが好き。そしてリリアは多分、ルーツが好き。本当なら、私が割り込んじゃいけなかったはずなのに。
リリアは俯いたまま何も返答してくれなかった。
そりゃ、そうなるよね。と、私も同じように俯いた。
変な話、しちゃったな……。
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