ユニークスキル『ゲーム化』で異世界ドロップの旅!

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ぶらり旅編

アルテマ

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 白いドレスに身を包んだ金髪の美女。
 見た目には悪霊とは思えないが、気配には怒りに満ちたモノを感じる。
 同時に悲しみも感じるのは『彼女』が悪霊になりきれてないということだろう。

 恨みは普通『相手』が存在するモノ。
 だが、霊となった時点で『個人対する恨み』は『生きている者を対象』にしてしまっている。
 これは『彼女』のせいではなく『霊』となったことによる『弊害』と言えるだろう。
 『霊』になった彼女は憎しみによって『悪霊』と化した瞬間、対象は『個人』ではなく『生きている者全般』になってしまったのだ。
 つまり、霊には意思が無く生きれていたころの感情によって地縛霊となってしまう場合があるのだ。
 通常、死んだ者は魂が『天界』に行き新たな生命として『輪廻転生』する。。
 だが、恨みや憎しみに囚われた者は地縛霊となり、たとえ悪意は無くても周りに悪影響を及ぼすのだ。
 その上、闇の感情は生きている世界に悪い影響を及ぼす。
 故に悪霊を除霊か浄化する必要があるのだ。

 しかし、この地縛霊はかなり強固にこの場所に縛られているな……。

「君の名を教えてもらえるかな?」
「……アルテマ」
「アルテマ……良い名前だな。アルテマはどうしてここに?」
「この屋敷の主人に拉致されてココに監禁されたの」
「俺の読み通りか…。じゃあ、監禁されたまま……」
「死んだわ」
「それは可哀そうに……」

 餓死か…。さぞ辛かっただろう。

「アルテマ。君を除霊する」
「どうするの?」
「君の遺骨を丁寧に埋葬する。もちろん、君の望む場所にね」
「それでどうなるというの?」
「君を縛る枷がなくなる。もう、世界を恨む必要はないんだ」
「…分かったわ。出来るだけ鼻の咲き誇る場所に埋葬してください」
「了解」

 俺は屋敷の庭園に埋葬して墓石を建てる。

「安らかに眠りたまえ……」

 手を合わせて彼女を弔う。
 その瞬間、屋敷が輝きだす。

 屋敷中を覆っていたアルテマの『悪意』は消え去り、清い気が満ちていく。
 たかがと思うかもしれないが、霊となった者が納得することが大事なのだ。
 もう、彼女は悪霊なのではなくなったのである。

「ありがとう」
「アルテマは天界に行くのかい?」
「…いえ、しばらくはここに留まりたいとと思います。もう、しがらみもないので自由に色んな場所に行ってみたいと思います」
「それも良いかもしれませんね」
「お名前を聞いても?」
「俺の名はタクマだ」
「タクマ…また会いましょう」
「ああ……」

 そう言うとアルテマは消えた。

 …何だろう?あんなに無関心だった霊に対して俺は喜びを感じていた。
 これはある意味、良い傾向なのかもしれない。
 たった数ヶ月で俺の中で何かが変わろうとしているのを感じ、何となくだが嬉しくなった。

「さて、これで『拠点』を確保できたな」

 俺は意気揚々と冒険者協会に向かうのだった。
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