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七草 《開店前》
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都内某所。
午前11時の開店に向け、私はカウンター内の厨房スペースでスタッフとともに仕込みに追われていた。
ここは自分が店主として切り盛りしている、カフェ『七草』。
人間たちを観察し、交流することに面白さを見出していた私は、里で培った薬草や山菜の知識をカフェのメニューに活かし、充実した日々を送っている。
カランッ。カランッ。
まだ開店時間になっていないのに、店の扉が開く音が聞こえた。顔を上げて店の出入り口を見ると、見慣れたスーツ姿の男が立っていた。
「こんにちは」
開店前に現れたのは、薬売りを生業とする古い友人だった。名前は黒衣 漆黒。ふらっと会いに来ては近況報告を兼ねての他愛も無い会話をしたり、彼の作る変わった薬を見せにきたりする。
「どうしたの、漆黒? まだ開店前だけど」
「いえ、そろそろなくなる頃だと思いましてね。渡しに来たんですよ」
そう言って、彼はカウンター席の上にチューブ型の薬を置いた。その薬の名前は【柔肌類似再生ハンドクリーム】。寝る前に肌が荒れている部分に塗れば翌朝には完治しいているという優れもので、妖たちで彼と交流のある飲食店経営者は、こぞって愛用している。
「ああ、確かに。もうすぐで切らすところだった。ありがとう、漆黒」
薬を受け取った私は、代金として彼にホットコーヒーを淹れた。
「今度は、どこ行っていたの?」
「ちょっと沖縄のほうに。とあるハブ酒がですね……」
どうやら今回も面白い土産話を持ってきたようだ。私は彼の沖縄での出来事に耳を傾けながら、開店準備を進めていった。
午前11時の開店に向け、私はカウンター内の厨房スペースでスタッフとともに仕込みに追われていた。
ここは自分が店主として切り盛りしている、カフェ『七草』。
人間たちを観察し、交流することに面白さを見出していた私は、里で培った薬草や山菜の知識をカフェのメニューに活かし、充実した日々を送っている。
カランッ。カランッ。
まだ開店時間になっていないのに、店の扉が開く音が聞こえた。顔を上げて店の出入り口を見ると、見慣れたスーツ姿の男が立っていた。
「こんにちは」
開店前に現れたのは、薬売りを生業とする古い友人だった。名前は黒衣 漆黒。ふらっと会いに来ては近況報告を兼ねての他愛も無い会話をしたり、彼の作る変わった薬を見せにきたりする。
「どうしたの、漆黒? まだ開店前だけど」
「いえ、そろそろなくなる頃だと思いましてね。渡しに来たんですよ」
そう言って、彼はカウンター席の上にチューブ型の薬を置いた。その薬の名前は【柔肌類似再生ハンドクリーム】。寝る前に肌が荒れている部分に塗れば翌朝には完治しいているという優れもので、妖たちで彼と交流のある飲食店経営者は、こぞって愛用している。
「ああ、確かに。もうすぐで切らすところだった。ありがとう、漆黒」
薬を受け取った私は、代金として彼にホットコーヒーを淹れた。
「今度は、どこ行っていたの?」
「ちょっと沖縄のほうに。とあるハブ酒がですね……」
どうやら今回も面白い土産話を持ってきたようだ。私は彼の沖縄での出来事に耳を傾けながら、開店準備を進めていった。
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