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マドンナ・マンドラゴラ 《服薬》
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あの日、あの晩に見た光景は、実に奇妙な物だった。夢だったのか、現実だったのか。今でも分からない。
朝、目を覚ますと、あのバーカウンターで見た紙袋がベッドの傍に置いてあった。もちろん、なかには薬売りの彼から貰った粉薬が3包ほど入っていた。俺は同封されていた説明書に従い、3日間、1日1回朝食後に水と一緒に薬を1包ずつ服用した。
すると、学校で高山の姿を目にしたり、声を耳にしたりしていくうちに、彼女に対する恋愛感情は少しずつ薄れていくのが、自分でも分かった。思春期特有の淡く切ない感情は、1週間ほどで消え去った。代わりに、仲睦まじい2人の幸せを願う、優しい感情が入れ替わるように現れた。
しかし、瀬戸内と高山は高校卒業後も付き合っていたようだが、どういうわけか自然消滅するかたちで破局した。親友の俺でも、詳しい経緯は知らない。
その後、成人式で俺が地元に戻ると、当時のクラスごとの同窓会で彼女と再会した。男性陣は彼女のお眼鏡に敵おうとひっきりなしに話しかけていたものの、その全てが無駄に終わっていた。そんな中、俺は奇跡的に彼女と意気投合し、互いの連絡先を交換することができた。高校生の俺だったら、緊張して会話どころではなかったはずだ。けれども大学近くの喫茶店で身につけた接客スキルと彼女と付き合いたいという願望が微塵もなかったことから、俺は彼女と適度な距離感を保ち、落ち着いた雰囲気で会話を楽しむことができた。大学でも言い寄られることの多い彼女には、それが新鮮に感じられたらしい。
やがて、アスリート魂に由来する彼女の積極的なアプローチに影響を受け、俺の中に残っていた僅かな薬の成分が活性化された。学生時代に抱いていた、焦りと切なさが入り乱れた“恋愛感情”とは全く別の感情が生まれたのだ。定義し難いものではあったが、“彼女を幸せにしたい”という、実に穏やかで暖かく強い感情だった。
そして今日、彼女と一緒に新たな門出を迎える。純白のドレスに身を包み、微笑む彼女は実に綺麗だ。
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あの日、あの晩に見た光景は、実に奇妙な物だった。夢だったのか、現実だったのか。今でも分からない。
朝、目を覚ますと、あのバーカウンターで見た紙袋がベッドの傍に置いてあった。もちろん、なかには薬売りの彼から貰った粉薬が3包ほど入っていた。俺は同封されていた説明書に従い、3日間、1日1回朝食後に水と一緒に薬を1包ずつ服用した。
すると、学校で高山の姿を目にしたり、声を耳にしたりしていくうちに、彼女に対する恋愛感情は少しずつ薄れていくのが、自分でも分かった。思春期特有の淡く切ない感情は、1週間ほどで消え去った。代わりに、仲睦まじい2人の幸せを願う、優しい感情が入れ替わるように現れた。
しかし、瀬戸内と高山は高校卒業後も付き合っていたようだが、どういうわけか自然消滅するかたちで破局した。親友の俺でも、詳しい経緯は知らない。
その後、成人式で俺が地元に戻ると、当時のクラスごとの同窓会で彼女と再会した。男性陣は彼女のお眼鏡に敵おうとひっきりなしに話しかけていたものの、その全てが無駄に終わっていた。そんな中、俺は奇跡的に彼女と意気投合し、互いの連絡先を交換することができた。高校生の俺だったら、緊張して会話どころではなかったはずだ。けれども大学近くの喫茶店で身につけた接客スキルと彼女と付き合いたいという願望が微塵もなかったことから、俺は彼女と適度な距離感を保ち、落ち着いた雰囲気で会話を楽しむことができた。大学でも言い寄られることの多い彼女には、それが新鮮に感じられたらしい。
やがて、アスリート魂に由来する彼女の積極的なアプローチに影響を受け、俺の中に残っていた僅かな薬の成分が活性化された。学生時代に抱いていた、焦りと切なさが入り乱れた“恋愛感情”とは全く別の感情が生まれたのだ。定義し難いものではあったが、“彼女を幸せにしたい”という、実に穏やかで暖かく強い感情だった。
そして今日、彼女と一緒に新たな門出を迎える。純白のドレスに身を包み、微笑む彼女は実に綺麗だ。
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