MASK 〜黒衣の薬売り〜

天瀬純

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登録販売者

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【登録販売者】
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 ドラッグストアや薬局などで、かぜ薬や胃薬といった一般用医薬品の販売ができる専門資格であり、その資格を取得している者を指す。

 医薬品は主にリスクごとに分類されいる。

 薬局医薬品、要指導医薬品、そして一般用医薬品。

 さらに一般用医薬品は第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品といったように細分化されており、登録販売者が扱えるのは第二類と第三類となっている。

* * * * * * * 

「ありがとうございました」

 レジの中から軽くお辞儀しながら、会計を終えて店から出ていくお客さんを見送る。

 紆余曲折あって大学卒業後に就職したドラッグストアでは、日々様々な老若男女が訪れて買い物をしていく。

 一般用医薬品を買う人、化粧品コーヒーで吟味する女子高生、日用雑貨を買い物カゴに次々と放り込んでいく夫婦など。

 慣れない業務に最初は戸惑いの連続で苦労していたけれど、1ヶ月も経つ頃には多少の余裕ができて楽しめられるようになった。来店されるお客さんの記憶には残らないものの、その人たちの日常生活が円滑に送れるように寄り添って支えられる、仕事が俺は好きだ。

「レジ、大分出来るようになってきたね」

先輩スタッフであるパートの谷木やぎさんがレジカウンターの外から声をかけてきた。谷木さんは双子の娘を持つ母で、子供たちが学校や部活動に行っている時間帯に登録販売者として働いている。

「まあ…、なんとか。バーコード決済やら電子マネーとか、種類が多くて大変ですけど……」

「大丈夫、大丈夫。入社してまだ1ヶ月ちょっとでしょ?その割にはちゃんとできてるじゃん」

朗らかに笑いながら、谷木さんはレジ傍のドリンクコーナーに商品を補充していく。

「そういえば、夏あたりの受けるんでしょ?」

「え?…ああ、はい。そのつもりです」

ふいに聞かれたので、反応が遅れてしまった。試験というのは、毎年8月下旬から9月にかけて各都道府県で行われることの多い登録販売者の資格試験のこと。日程が重ならない限り、複数の場所で受験が可能だ。一応俺も職場近くと他県とで合わせて3ヶ所の会場で受験するつもりだ。

「どんなクレーマーも君が取得したら頼もしい限りだね」

飲料水の補充を終えた谷木さんは言って、バックヤードのほうへと戻って行った。

(どんなクレーマーも、か……。やっぱり話題になっちゃうよな~)

職場はもちろんのこと、学生時代からの友人にも一度も話したことがないのだが、

 俺には特殊な“力”がある。

 古来より言葉には不思議な力が宿っており、発せられた内容通りの結果を実現させられると信じられてきた。その“力”を人は【言霊】という。

 俺に備わった“力”もまた、に近い。

 相手の目を見て、自分の声帯に意識を集中させて言葉を発すると、対象者の感情を変化させたり、新たに別の感情を抱かせることができる。例えば、

『落ち着け』

この言葉を優しい口調で言えば、聞いた相手は穏やかで暖かい感情が芽生え、鎮静作用にも等しい効果が働く。

 逆に脅すように同じ言葉を発すると、百獣の王を目の前にした小動物の如く、背筋が凍るほどの“恐怖”を抱くこととなる。

 この力がなぜ俺に備わっているのか、いつから使えるようになったのかは、正確に覚えていないが、のおかげで理不尽なクレーマーたちをさせて状況を打破してきた。おかげで店長をはじめとする店の人たちからの信頼は厚い。

 一応、能力を使わずしての対応力と通常業務でのスキルを高めようと努力はしている。接客業に関連する書籍を読み漁ったり、仕事中に書き記したメモを自宅アパートで何度も読み返したりして、機会を見つけては常に職場でアウトプット。

 とはいうものの、学生時代とは異なる社会人生活での心労は週休2日をかけても洗い流すことが難しく、ここ最近は割り増しされた能力のに悩まされている。

 そう、

 ー 喉が痛い ー

… … … … … … … … … … … …

… … … … … …



 
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