俺のねーちゃんは人見知りがはげしい

ねがえり太郎

文字の大きさ
160 / 211
・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】

17.二人の気持ち

しおりを挟む
「凛、どうしたの?」

お母さんがダイニングテーブルでパソコン作業をしていた。一応専業主婦なのだけれど、語学が得意なので時々知合いの翻訳事務所から依頼されて日本語の資料を外国語に翻訳したり、大学の先生が書いた英語の論文の添削をする仕事をしている。お兄ちゃんが以前言ってた。お母さんは本当は仕事の出来るスゴイ人だったのだけれど、家でお兄ちゃんが独りぼっちにならないようにお父さんと結婚した後、家に居てくれるようになったんだって。今はきっと私の為に居てくれるのかな……?って思う。お兄ちゃんと私は、優しくて、いつも冗談ばかり言って笑っているお母さんが大好きだ。

「えっと……飲み物を取りに来たの」
「あら飲むの早いのね。じゃあ持って行ってあげるから、上で待ってていいよ。またミルクティーで良い?ココアにする?それとも麦茶が良い?3人分でいいのかな」

部屋に残したマグカップの事を、やっと思い出した。
並々と満たされたミルクティー。2人のマグカップもそれ程減っていなかった筈。咄嗟にした言い訳が成立していない事に気が付いた。

2人は驚いた顔をしていたけど……きっと今頃、顔を見合わせているに違いない。

いや、それとも気にしないで宿題の続きをしているのかも。
それか宿題はもうとっくに終わって、おしゃべりなんかしているかな。
私がいる時はいつも、澪が本やタブレットを手にしながら勇気と私がゲームをしたりおしゃべりしているのを聞いていて、時折ズバッと合の手を入れてくれる……そんな風に過ごして来たけれど、2人きりの時は一体何を話すんだろう。

もしかして私がいる時より話が盛り上がってたりして。

2人とも私の事を時折「しょうがないなぁ」と言うような表情で見る事がある。そして頭を撫でてくれたりポンポンと肩を叩いてくれたり、言葉をしまって優しさを伝えてくれる。
でも本当は……話の通じない私より、2人で話した方が楽しかったりしないのかな?だって勇気と澪は私が分からない会話をしている事がある。偶に目と目だけで通じ合ったり。

2人は私の大切な友達で……2人といるのはとても楽しくて……。
だけど本当は、2人は私がいない方が楽しかったりして。

「凛?」

嫌な事に気が付いてしまった。
2人は私よりずっと互いに気持ちが通じ合っているようだ。
そして私がそれを特に気に留めていなかったのは―――もしかしてそれが、私と次元の違う感情の遣り取りであったからじゃないだろうか?売り物みたいに完成された見事な女子マネに勇気が素っ気ないのは、勇気がもう既に他の相手を見ているからでは??

つまり……その……友情では無く……

「凛、大丈夫?ボーっとしてどうしたの?」

お母さんが薄いパソコンをパタンと閉じて、立ち上がり私の二の腕に触れた。
私はやっとプールの水面に顔を出したかのように、我に返った。水の中で耳が聞こえなくなるみたいに、今思い付いた考えに夢中になってしまっていたのだ。

「だ、大丈夫。あの、飲み物大丈夫だった。じゃなくて……お菓子が食べたいなぁって思って」
「そう。じゃあ私が作った豆乳レアチーズケーキ、そろそろ固まるからそれ食べる?」
「あ、うん!食べたい」
「じゃあ、盛り付け手伝ってね」
「あ、えと私がやる。お母さん、仕事の続きしてて良いよ」
「そう?じゃあお願いするかな」
「うん、してして」

私はことさら明るく言って、キッチンへ大股に向かった。

しかし頭の中はまた、先ほど思い付いた考えの沼にはまり込んでしまって―――作業をスムーズに進める事が出来ずに、いつもよりずっと時間を掛けてしまう事になった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※特別編9が完結しました!(2026.3.6)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

処理中です...