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・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】
17.二人の気持ち
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「凛、どうしたの?」
お母さんがダイニングテーブルでパソコン作業をしていた。一応専業主婦なのだけれど、語学が得意なので時々知合いの翻訳事務所から依頼されて日本語の資料を外国語に翻訳したり、大学の先生が書いた英語の論文の添削をする仕事をしている。お兄ちゃんが以前言ってた。お母さんは本当は仕事の出来るスゴイ人だったのだけれど、家でお兄ちゃんが独りぼっちにならないようにお父さんと結婚した後、家に居てくれるようになったんだって。今はきっと私の為に居てくれるのかな……?って思う。お兄ちゃんと私は、優しくて、いつも冗談ばかり言って笑っているお母さんが大好きだ。
「えっと……飲み物を取りに来たの」
「あら飲むの早いのね。じゃあ持って行ってあげるから、上で待ってていいよ。またミルクティーで良い?ココアにする?それとも麦茶が良い?3人分でいいのかな」
部屋に残したマグカップの事を、やっと思い出した。
並々と満たされたミルクティー。2人のマグカップもそれ程減っていなかった筈。咄嗟にした言い訳が成立していない事に気が付いた。
2人は驚いた顔をしていたけど……きっと今頃、顔を見合わせているに違いない。
いや、それとも気にしないで宿題の続きをしているのかも。
それか宿題はもうとっくに終わって、おしゃべりなんかしているかな。
私がいる時はいつも、澪が本やタブレットを手にしながら勇気と私がゲームをしたりおしゃべりしているのを聞いていて、時折ズバッと合の手を入れてくれる……そんな風に過ごして来たけれど、2人きりの時は一体何を話すんだろう。
もしかして私がいる時より話が盛り上がってたりして。
2人とも私の事を時折「しょうがないなぁ」と言うような表情で見る事がある。そして頭を撫でてくれたりポンポンと肩を叩いてくれたり、言葉をしまって優しさを伝えてくれる。
でも本当は……話の通じない私より、2人で話した方が楽しかったりしないのかな?だって勇気と澪は私が分からない会話をしている事がある。偶に目と目だけで通じ合ったり。
2人は私の大切な友達で……2人といるのはとても楽しくて……。
だけど本当は、2人は私がいない方が楽しかったりして。
「凛?」
嫌な事に気が付いてしまった。
2人は私よりずっと互いに気持ちが通じ合っているようだ。
そして私がそれを特に気に留めていなかったのは―――もしかしてそれが、私と次元の違う感情の遣り取りであったからじゃないだろうか?売り物みたいに完成された見事な女子マネに勇気が素っ気ないのは、勇気がもう既に他の相手を見ているからでは??
つまり……その……友情では無く……
「凛、大丈夫?ボーっとしてどうしたの?」
お母さんが薄いパソコンをパタンと閉じて、立ち上がり私の二の腕に触れた。
私はやっとプールの水面に顔を出したかのように、我に返った。水の中で耳が聞こえなくなるみたいに、今思い付いた考えに夢中になってしまっていたのだ。
「だ、大丈夫。あの、飲み物大丈夫だった。じゃなくて……お菓子が食べたいなぁって思って」
「そう。じゃあ私が作った豆乳レアチーズケーキ、そろそろ固まるからそれ食べる?」
「あ、うん!食べたい」
「じゃあ、盛り付け手伝ってね」
「あ、えと私がやる。お母さん、仕事の続きしてて良いよ」
「そう?じゃあお願いするかな」
「うん、してして」
私はことさら明るく言って、キッチンへ大股に向かった。
しかし頭の中はまた、先ほど思い付いた考えの沼にはまり込んでしまって―――作業をスムーズに進める事が出来ずに、いつもよりずっと時間を掛けてしまう事になった。
お母さんがダイニングテーブルでパソコン作業をしていた。一応専業主婦なのだけれど、語学が得意なので時々知合いの翻訳事務所から依頼されて日本語の資料を外国語に翻訳したり、大学の先生が書いた英語の論文の添削をする仕事をしている。お兄ちゃんが以前言ってた。お母さんは本当は仕事の出来るスゴイ人だったのだけれど、家でお兄ちゃんが独りぼっちにならないようにお父さんと結婚した後、家に居てくれるようになったんだって。今はきっと私の為に居てくれるのかな……?って思う。お兄ちゃんと私は、優しくて、いつも冗談ばかり言って笑っているお母さんが大好きだ。
「えっと……飲み物を取りに来たの」
「あら飲むの早いのね。じゃあ持って行ってあげるから、上で待ってていいよ。またミルクティーで良い?ココアにする?それとも麦茶が良い?3人分でいいのかな」
部屋に残したマグカップの事を、やっと思い出した。
並々と満たされたミルクティー。2人のマグカップもそれ程減っていなかった筈。咄嗟にした言い訳が成立していない事に気が付いた。
2人は驚いた顔をしていたけど……きっと今頃、顔を見合わせているに違いない。
いや、それとも気にしないで宿題の続きをしているのかも。
それか宿題はもうとっくに終わって、おしゃべりなんかしているかな。
私がいる時はいつも、澪が本やタブレットを手にしながら勇気と私がゲームをしたりおしゃべりしているのを聞いていて、時折ズバッと合の手を入れてくれる……そんな風に過ごして来たけれど、2人きりの時は一体何を話すんだろう。
もしかして私がいる時より話が盛り上がってたりして。
2人とも私の事を時折「しょうがないなぁ」と言うような表情で見る事がある。そして頭を撫でてくれたりポンポンと肩を叩いてくれたり、言葉をしまって優しさを伝えてくれる。
でも本当は……話の通じない私より、2人で話した方が楽しかったりしないのかな?だって勇気と澪は私が分からない会話をしている事がある。偶に目と目だけで通じ合ったり。
2人は私の大切な友達で……2人といるのはとても楽しくて……。
だけど本当は、2人は私がいない方が楽しかったりして。
「凛?」
嫌な事に気が付いてしまった。
2人は私よりずっと互いに気持ちが通じ合っているようだ。
そして私がそれを特に気に留めていなかったのは―――もしかしてそれが、私と次元の違う感情の遣り取りであったからじゃないだろうか?売り物みたいに完成された見事な女子マネに勇気が素っ気ないのは、勇気がもう既に他の相手を見ているからでは??
つまり……その……友情では無く……
「凛、大丈夫?ボーっとしてどうしたの?」
お母さんが薄いパソコンをパタンと閉じて、立ち上がり私の二の腕に触れた。
私はやっとプールの水面に顔を出したかのように、我に返った。水の中で耳が聞こえなくなるみたいに、今思い付いた考えに夢中になってしまっていたのだ。
「だ、大丈夫。あの、飲み物大丈夫だった。じゃなくて……お菓子が食べたいなぁって思って」
「そう。じゃあ私が作った豆乳レアチーズケーキ、そろそろ固まるからそれ食べる?」
「あ、うん!食べたい」
「じゃあ、盛り付け手伝ってね」
「あ、えと私がやる。お母さん、仕事の続きしてて良いよ」
「そう?じゃあお願いするかな」
「うん、してして」
私はことさら明るく言って、キッチンへ大股に向かった。
しかし頭の中はまた、先ほど思い付いた考えの沼にはまり込んでしまって―――作業をスムーズに進める事が出来ずに、いつもよりずっと時間を掛けてしまう事になった。
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