189 / 211
・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】
46.私の部屋で 2
しおりを挟む「―――ぐっ!」
グイーッと目の前にいた勇気の体が遠のき始めた。
パチパチと瞬きを繰り返す。
其処に居たのは―――
「お兄ちゃん!」
「ただいま」
ガバッと体を起こした私に向かって、ビシッと決まったスーツ姿のお兄ちゃんはニッコリと微笑んだ。
だけどスッゴイ違和感ありまくりだ!
苦しそうに顔を歪めている勇気の首根っこを捕まえて、搾り上げている。
私は慌ててお兄ちゃんの腕に取りすがった。
「や、やめて!」
「……」
お兄ちゃんの薄ら笑いが怖い……!
「お兄ちゃん!お願い!」
私が懇願すると、ゆっくりとお兄ちゃんは勇気を解放した。
ドサッと勇気の体がベッドに落ちる。
「ケホッ……!」
「勇気、大丈夫?」
思わず勇気の背中に手を当てて、覗き込む。
トントンと胸を叩きながら、勇気は片手を上げて自分の無事をアピールした。
「何だ、まだ大丈夫そうだな。―――おい表に出ろ、勇気」
「……はい」
勇気が観念したように立ち上がった。
私はバッと二人の間に滑り込んだ!
「待って!お兄ちゃんまだ話の途中……」
「約束も守れないような奴の話なんか聞く必要無い」
「……」
お兄ちゃんの怒りにあてられて、完全に頭の冷えた様子の勇気は粛々と判決を受ける容疑者のように押し黙っている。
「違うの!その……部屋に入ったのは、話があって」
「押し倒さなくちゃ話のひとつもできないような奴に対して、聞く耳なんか持たなくていい」
「―――私が『良い』って言ったのよ」
落ち着いた柔らかい声が、その場にリーンと響いた。
「……蓉子さん」
お母さんがミルクとココアの入ったマグカップを乗せたお盆を持って、廊下に立っていた。
緊張感が一気に緩む。お母さんを目の前にして、お兄ちゃんは怖い顔を維持できなくなってしまった。
「心配ばかりしても仕方ないでしょ?多少失敗するかもしれないけど、グッと堪えて見守る事も必要よ」
「でも」
「はい、『お兄ちゃん』は退場!夕飯食べた?用意するから着替えて下りて来てね。今日は蓮君の好きなトンカツなんだから」
「蓉子さん、あの」
「話は後で、ね?」
お母さんは私にお盆を手渡して、お兄ちゃんの背を押した。お兄ちゃんはさっきまで虎みたい牙をむいていたのに、借りて来た猫みたいに大人しく廊下に追い出されてしまった。
クルリと振り向いたお母さんは、拳でトン、と勇気の胸を小突く。
「勇気君も、頭を冷やしてね。信用に値する行動を取ってくれなきゃ、扱いを変えなきゃいけないわ。―――できるでしょ?」
「はい。……気を付けます」
「じゃあ、時間制限を設けます。8時には話を終えて、家に帰る事!それまでにちゃんと話し合ってちょうだい。分かった?」
お母さんはニッコリと微笑んで、勇気と私を交互に見た。
私達はお互い目を見交わし、それから慌ててお母さんに向けてコクリと頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※特別編9が完結しました!(2026.3.6)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
さよなら、私の初恋の人
キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。
破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。
出会いは10歳。
世話係に任命されたのも10歳。
それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。
そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。
だけどいつまでも子供のままではいられない。
ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。
いつもながらの完全ご都合主義。
作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。
直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。
※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』
誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。
小説家になろうさんでも時差投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる