192 / 211
・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】
49.幼馴染と私 4
しおりを挟む
「―――っ」
みるみる内に、目の前の勇気の顔が真っ赤に染まった。
そんな顔を見たのは初めてだった。
それで漸く心の底から理解する。
あ、勇気って、私のこと本当に好きなんだ……。
ボンっと体がレンジでチンし過ぎた肉まんみたいに膨れ上がった。
きっと私の顔も―――真っ赤になっているのだろう。
勇気の手が伸びて来て、私の手首を再び捕まえる。
最近多くなったその仕草。それまでは私を留めたり、制止したりする目的で行われていたとばかり思っていた、その仕草に新しい意味が与えられる。
大きな手は私を拘束していたのではない。
この手はいつだって私を守る為にあったのだ。
仁見さんに絡まれた私をその場から連れ出してくれた。
落ち込んでいる様子の私の気持ちを聞き出そうとしてくれた。
独りで帰ると言い張る私を送ろうとしてくれた。
さっきのは流石にビックリしちゃったけど……でも、今改めて勇気が私を好きだと言う前提で考えると。……うーん、「コイツ何勘違いして勝手に変な方向に走って行こうとしてるんだ!」って勇気の方こそ吃驚しちゃったんだって事は―――何となく分かる。それで押し倒すのはどうかと思うけど。要するに勇気の堪忍袋の尾がとうとう切れちゃったって事だよね……うん、私が悪いのかも。
「あの……勇気、ゴメンね。私気が付かなくて……」
「うん。―――いや、いいんだ」
勇気は頷いてから、首を振った。
「俺も最初は気付かれない方が良いって思っていたんだ」
「え……?」
それはどういう意味?
「凛は俺の物だってずっと思ってた。凛には俺しかいないって勝手に己惚れてた。でも、そう思う一方で―――はっきり凛に気持ちを伝えて、その上で拒否されるのが怖かったんだ」
驚いた。
いつも勇気は自信に満ち溢れているような気がした。何でも卒なくできて、誰とでも楽しく話せて、人付き合いに躊躇したり他人を怖がったりなんかしない。私の出来ない事、全部できているような勇気が羨ましかったし、いつも頼もしいなって思っていた。
クラスでは勇気のいる場所はピカピカ輝いているのに、私はいつも隅っこの暗ーい場所に隠れているようなイメージがあった。澪がいたからそれでも楽しかったけど。でもきっと独りだったら周りと引き比べて自分の不甲斐なさに落ち込んで卑屈になっていたかもしれない。
だから勇気が私にどう思われるかをそんなに気にして、怖れさえ抱いていたなんて想像もしていなかった。いつも私の方が勇気に一歩も二歩も遅れているような気がしていたから……。
私の手首を握っていた手が―――掌を掬い上げるように移動し、お互いの掌がぴったりと触れ合う。
大きくて温かな温もりがそこから伝わって来る。
「でも怖がってばかりいたら駄目だな。それが凜を不安にさせてたなんて、そこまで考えが及ばなかった。―――凛、俺こそゴメン」
「ううん」
私は首を振った。
勇気が謝るような事じゃない、本当にそう思ったからだ。
「凛が好きだよ。友達じゃない、いや今でも大事な友達だけど―――女の子としても好きなんだ。だから俺の……彼女になって欲しい」
真剣に覗き込まれて、私はもうベッドに押し付けられている訳でも無いのに、固まってしまった。ドキドキ胸が高鳴る。
あれ、勇気ってこんなに格好良かったっけ……。何だか2割増しくらい頼もしく見える。
私はスッゴく恥ずかしくなった。
頬が再び熱を持つのが分かる。
だけどもう、何故そんなにドキドキしてしまうのか……その理由を知ってしまったから。
その場から逃げ出したくなるような衝動を抑えて、私も負けじと勇気の手を握り返した。
「はい。―――こちらこそ、よろしくお願いします」
見上げる勇気は強張っていた表情を、ホッと緩めて笑顔になった。
わあ、何だか……。
胸の中にほんわかと温かいものが湧き上がって来る。
気付いて無かったけど、私はこんなに勇気の事が好きだったんだって、改めて実感してしまった。
勇気と同じだ。
私も勇気を失うのが怖かった。だから見ない振りをしていたのかもしれない。
友達だったら、少し距離が離れたって決定的に交流が途切れる事なんて無くならない。なんたって勇気はお隣さんなんだし。
怖かったのは私も同じなんだなぁ……と思うと、何だかおかしくなってクスリと笑いが込み上げて来る。
クスクス笑っていると、大きくフウッと息を吐いた勇気が―――そっと私の肩に腕を回して私の体を引き寄せた。柔らかく抱き締められて―――少し驚いたけれども、私は勇気の胸に耳を付けてみた。するとドキドキと勇気の胸も割と早いリズムを刻んでいると言う事が手に取るように理解できたのだ。
みるみる内に、目の前の勇気の顔が真っ赤に染まった。
そんな顔を見たのは初めてだった。
それで漸く心の底から理解する。
あ、勇気って、私のこと本当に好きなんだ……。
ボンっと体がレンジでチンし過ぎた肉まんみたいに膨れ上がった。
きっと私の顔も―――真っ赤になっているのだろう。
勇気の手が伸びて来て、私の手首を再び捕まえる。
最近多くなったその仕草。それまでは私を留めたり、制止したりする目的で行われていたとばかり思っていた、その仕草に新しい意味が与えられる。
大きな手は私を拘束していたのではない。
この手はいつだって私を守る為にあったのだ。
仁見さんに絡まれた私をその場から連れ出してくれた。
落ち込んでいる様子の私の気持ちを聞き出そうとしてくれた。
独りで帰ると言い張る私を送ろうとしてくれた。
さっきのは流石にビックリしちゃったけど……でも、今改めて勇気が私を好きだと言う前提で考えると。……うーん、「コイツ何勘違いして勝手に変な方向に走って行こうとしてるんだ!」って勇気の方こそ吃驚しちゃったんだって事は―――何となく分かる。それで押し倒すのはどうかと思うけど。要するに勇気の堪忍袋の尾がとうとう切れちゃったって事だよね……うん、私が悪いのかも。
「あの……勇気、ゴメンね。私気が付かなくて……」
「うん。―――いや、いいんだ」
勇気は頷いてから、首を振った。
「俺も最初は気付かれない方が良いって思っていたんだ」
「え……?」
それはどういう意味?
「凛は俺の物だってずっと思ってた。凛には俺しかいないって勝手に己惚れてた。でも、そう思う一方で―――はっきり凛に気持ちを伝えて、その上で拒否されるのが怖かったんだ」
驚いた。
いつも勇気は自信に満ち溢れているような気がした。何でも卒なくできて、誰とでも楽しく話せて、人付き合いに躊躇したり他人を怖がったりなんかしない。私の出来ない事、全部できているような勇気が羨ましかったし、いつも頼もしいなって思っていた。
クラスでは勇気のいる場所はピカピカ輝いているのに、私はいつも隅っこの暗ーい場所に隠れているようなイメージがあった。澪がいたからそれでも楽しかったけど。でもきっと独りだったら周りと引き比べて自分の不甲斐なさに落ち込んで卑屈になっていたかもしれない。
だから勇気が私にどう思われるかをそんなに気にして、怖れさえ抱いていたなんて想像もしていなかった。いつも私の方が勇気に一歩も二歩も遅れているような気がしていたから……。
私の手首を握っていた手が―――掌を掬い上げるように移動し、お互いの掌がぴったりと触れ合う。
大きくて温かな温もりがそこから伝わって来る。
「でも怖がってばかりいたら駄目だな。それが凜を不安にさせてたなんて、そこまで考えが及ばなかった。―――凛、俺こそゴメン」
「ううん」
私は首を振った。
勇気が謝るような事じゃない、本当にそう思ったからだ。
「凛が好きだよ。友達じゃない、いや今でも大事な友達だけど―――女の子としても好きなんだ。だから俺の……彼女になって欲しい」
真剣に覗き込まれて、私はもうベッドに押し付けられている訳でも無いのに、固まってしまった。ドキドキ胸が高鳴る。
あれ、勇気ってこんなに格好良かったっけ……。何だか2割増しくらい頼もしく見える。
私はスッゴく恥ずかしくなった。
頬が再び熱を持つのが分かる。
だけどもう、何故そんなにドキドキしてしまうのか……その理由を知ってしまったから。
その場から逃げ出したくなるような衝動を抑えて、私も負けじと勇気の手を握り返した。
「はい。―――こちらこそ、よろしくお願いします」
見上げる勇気は強張っていた表情を、ホッと緩めて笑顔になった。
わあ、何だか……。
胸の中にほんわかと温かいものが湧き上がって来る。
気付いて無かったけど、私はこんなに勇気の事が好きだったんだって、改めて実感してしまった。
勇気と同じだ。
私も勇気を失うのが怖かった。だから見ない振りをしていたのかもしれない。
友達だったら、少し距離が離れたって決定的に交流が途切れる事なんて無くならない。なんたって勇気はお隣さんなんだし。
怖かったのは私も同じなんだなぁ……と思うと、何だかおかしくなってクスリと笑いが込み上げて来る。
クスクス笑っていると、大きくフウッと息を吐いた勇気が―――そっと私の肩に腕を回して私の体を引き寄せた。柔らかく抱き締められて―――少し驚いたけれども、私は勇気の胸に耳を付けてみた。するとドキドキと勇気の胸も割と早いリズムを刻んでいると言う事が手に取るように理解できたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※特別編9が完結しました!(2026.3.6)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
さよなら、私の初恋の人
キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。
破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。
出会いは10歳。
世話係に任命されたのも10歳。
それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。
そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。
だけどいつまでも子供のままではいられない。
ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。
いつもながらの完全ご都合主義。
作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。
直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。
※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』
誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。
小説家になろうさんでも時差投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる