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・後日談・ 俺とねーちゃんのその後の話
17.いろいろごめん、と言われても <清美>
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鴻池はカップを包み込むように持って、カフェラテの白っぽい水面に目を落していた。
「いろいろ……ごめんね」
「……」
『いろいろごめん』と言われても。
本当に色々としつこく絡まれて―――しかも俺だけならまだしも、ねーちゃんに対する鴻池の態度は最悪だった。腹立たしかったし、口もききたくないって思った。こんなに女子に対して腹が立ったのは……小学校の時、女ボスの川喜多に苛められて以来の事だった。
そして真実腹立たしいのは―――俺自身だ。
鴻池は俺に対して執着していただけで、ねーちゃんは元々何も悪い事をしていないんだ。俺の所為でねーちゃんに辛い想いや不快な体験を背負わせてしまったと言う事が―――いっとう腹立たしかった。
「……謝る相手は、俺じゃないだろ」
「……あ……」
「俺は……姉貴に対して鴻池がした失礼な態度絶対に許せない。例え彼女が許しても」
ねーちゃんはおそらく鴻池に対して、許すも許さないも考えていないだろう。
だけど、だからこそ俺はそう思うのだ。
「……うん。そうだよね……」
鴻池は小さな声で頷いた。
何なんだ。急にしおらしくなっちまって。
今日の鴻池は今までと違った。ここまで言えば、今までなら怒って言い返してグーパンでもかましてくるところだ。ところが、鴻池は頷いたまま俯いていた。
数秒の沈黙の後カップを持つ手にキュッと力を籠め、意を決したように鴻池が声を発した。
「……あの、私が中2で転校してきたのは、両親の離婚が原因なの」
唐突な話題変換だった。俺は何と言って良いか分からず、相槌も打たずに黙っていた。中学では女子バスケ部に所属していた鴻池をきちんと認識していなかったくらいなので、当然俺は転校の理由なんて、全く知らなかった。
「ウチね。父親が浮気していたのに、母親がそれを知ってもなかなか別れる決心が付かなくて……すっごく揉めたの。毎日母さん、泣いていた。やっと別れたのは私が中2の時。だから中途半端な時期にこっちに越して来たの。私母さんを傍で見ていて『無駄なコトやってるな、毎日泣いてばかりいないですっぱり別れて見切り付ければいいのに。私は絶対男に夢中になんかならないし、振り回されない』って、ずっと思っていたの」
「……」
急に投げ込まれた重い内容に、俺は沈黙を続けるしかなかった。
なんだろう、これ。
もしかして、お悩み相談なのだろうか……。
「でも……森の事、好きになっちゃって……」
一転して自分に話題が戻った事に戸惑う俺の顔を、鴻池はチラリと一瞥すると頬を染めてまたカップの水面に視線を戻した。
「だけどそれを自分で認められなくて。森とお姉さんが仲良くしている事に嫉妬する気持ちを―――自分の感情を見ない振りして『これは自分のためじゃなくて森の為に、バスケ部の為にやっている事なんだ』ってひたすら言い訳し続けて、自分が正しいと思い込もうとして―――で、2人を引き離さなきゃって考えていたの」
「ヒドイな……」
「うん……ゴメン。ヒドイ事したなって事―――漸く最近、理解できたの。……森に振られた後、私の様子が変だって思った母さんが私の話を聞いてくれて―――その時母さんにやっと本音をぶつけられたの。そしたら自分が母親の事を誤解していた事が分かって―――何を考えて離婚を渋っていたのかとか―――自分勝手に解釈して、男に振り回されて弱いだけの人間だって思っていた母親っていう私の認識が本当は間違っていたって分かったり、とにかく自分が今まで思い込んでいた事が見たままと違うって知って―――それでね、やっと自分がいかにバカだったかって、気付いたの。自分の気持ちに見ない振りをして逃げ回って、他人に八つ当たりしていたんだって事にも」
「……」
「駄目な自分を思い出すのって、しんどいけど……振り返ってみると、森のお姉さんはいつも森を見守って、尊重していた―――大事にしていた。私みたいに自分の勝手な希望を好きな相手に押し付けるなんて考えもしないで―――森に寄り添って支えていた。本当は私、それが薄々分かっていたから―――自分がお姉さんに負けてる、敵わないって内心分かっていたから―――『姉弟で付き合うのが正しく無い』とか、『森がお姉さんにべったりなのが部活の為に良くない』とか、建前だけでしか批判出来なかったんだ。そんな自分に―――本当に無神経な自分にやっと気が付いて……」
鴻池はカップから顔を上げて、緊張した面持ちで俺の目をジッと見据えた。
「本当に、ごめんなさい。だけど私、部活は辞めたくないし、ちゃんと皆に頑張って欲しい―――まだ2年もあるから、部内でギクシャクしたくない。だから、ごめんなさい―――許してほしいけど、許せないっていうのもわかるから―――せめて、部活では普通に仲良くして欲しい。お願いします」
そうして頭を下げ、それからまた顔を上げて付け足した。
「地崎君が心配して声を掛けてくれて……謝る機会を作ってくれたの」
「……地崎が?」
それで、今日ここに俺は誘われたのか。
地崎がくっついて来た理留ちゃんを少々厳しく追い払おうとしたのは、鴻池と俺を引き合せる目的があったからなのか?
「うん。地崎君の彼女がいたのは想定外だったけど……本当は3人で話しようって、彼がとりなしてくれるって言ってくれてたの」
鴻池はカップをギュッと掴んで口元へ持って行くと、夏場に水かなんかを飲み下す要領で、ゴックゴックと一気に飲み干した。
そして、プハァ―ッと、肩で息を吐く。
「今日の目標、達成した」
鴻池の顔が幾分綻んで、2人の間にあった妙な緊張感がパッと散った。
思えば鴻池は―――俺にねーちゃんの事に絡むようになってから始終苛々として挑戦的で、俺たちの間には妙な緊張感が漂っていた。
それ以前は決して、居心地の悪い相手では無かったのに。
「じゃあ、帰るね。とりあえず謝りたかったの。今は許してくれなくても良い。私のした事、許せなくても当たり前だし。それは覚悟していたの。だから今日の目標は、謝罪を伝えるって事だけ―――もちろん、お姉さんにも謝りたいけど―――私の顔も見たくないかもしれないし、まず森に許して貰って、森から許可が出ない限り近づかないつもり」
鴻池はトレイを手に、立ち上がった。
「じゃあ、行くね」
その切なそうに細めた目と苦しそうに寄せられた眉を見て。
―――俺は即決した。
「許す」
「え?」
鴻池は俺の発言に、ポカンと口を開けた。
「俺は許すことに決めた―――それに、姉貴は多分―――全く怒ってない。そういう人なんだ。だから謝らなくても大丈夫だし―――どうしても謝りたいなら、話を聞きたいかどうか、俺がに姉に確認する。でももし彼女が断ったら、諦めて」
トレイを持って立ったまま、鴻池は呆けていた。
俺が直ぐに『許す』と言うなんて、思ってもみなかったようだ。
でも、俺だって部活の雰囲気を悪くしていた最近の事とか、地崎に心配かけていた事実とか―――そう言う事がずっと気になっていたんだ。
それに元々鴻池がねーちゃんに絡まないと言うなら、俺が何と言われようと、ただ鬱陶しいってだけだった。
「森……いいの」
「うん。俺も、部活でギクシャクするのは嫌だ。先も長いし、練習にも試合にも集中したいから。……鴻池がマネージャーの仕事頑張っているのもわかっている。たぶん地崎も同じ考えだ。だから、」
俺は息を吸い込んで、できるだけ落ち着いた声で言った。
「だから、部活では普通に戻ろう」
「あ……ありがと……森」
鴻池は涙目になったが、両手がトレイで塞がっていた。俺は、未だ使っていない紙ナプキンを鴻池に押し付け、トレイを奪って自分のものと重ね、纏めて片付けた。
妙にしおらしくなった鴻池が、涙をそっと拭ってから、俺の後に続いた。
何だか妙な気持ちだ。
鴻池が謝るなんて……天変地異が起こったみたいに現実感が無い。
でも、本当は。地崎がいつか俺達の仲を取り成そうとするのではないかと、俺も心の隅で予測していた。部活内のゴタゴタはそのまま試合に直結する。できるだけ円満に、揉め事は解決するべきなんだ。
けれども例えば、ねーちゃんが鴻池の事を許せないって考えるような人間なら、俺はこんなにすんなり地崎の描いた図の中に溶け込もうとは考えなかっただろう。
だけどねーちゃんは例え一時本気で腹を立てたとしても―――ずっとその怒りを維持できる人では無い。だから俺が代わりに怒っても、それは全く意味の無い行動なんだ。
だけど。鴻池とのわだかまりが無くなったところで―――根本的な問題はまだ解決していない。
ねーちゃんと鴻池が和解したとして、それが一体何になるのだろう?
―――ねーちゃんは、俺に言った。『姉弟に戻ろう』って。
ねーちゃんの提案を受け入れるつもりは―――毛頭無い。
だけど彼女が東京に行ってしまったら、物理的な距離が離れてしまったら―――幾ら俺が「絶対別れない」ってここで叫んでも、負け犬の遠吠えみたいなものだ。
俺ももう、中学生のガキじゃない。
怒りのままに気持ちを爆発させて暴走しても、本当に欲しい物は得られないって、今では理解している。
でも、どうしたら良い……?
このまま手をこまねいていて、それこそ修復の効かない関係になったら、自分が馬鹿な行動に踏み出さないかどうか、自信が無い。
受験票を捨てる?
申込書をどうにかして、こっそり書き直す?
泣いて縋って、説得すればいいのか?
それとも―――受験日に、家から出さないようにしたら?
もう、ねーちゃんに対して自分勝手な強引な真似はすまい、と心に決めた。
でも、本当にどうしたら良いんだ……?
何もできずに鬱屈を溜めこんで―――俺はまたねーちゃんにヒドイ事をしてしまわないだろうか?ねーちゃんを失う事を恐れるあまりギリギリで暴走してしまう自分が容易に想像できる。その結果、一番失いたくない、ねーちゃんの愛情を失ってしまうかもしれないと考えると……怖い。
このままじゃ、遅かれ早かれ4月には離れ離れだ。
ねーちゃんの夢を邪魔したくない。でも俺は……どうしても彼女と離れたく無いんだ……。
「いろいろ……ごめんね」
「……」
『いろいろごめん』と言われても。
本当に色々としつこく絡まれて―――しかも俺だけならまだしも、ねーちゃんに対する鴻池の態度は最悪だった。腹立たしかったし、口もききたくないって思った。こんなに女子に対して腹が立ったのは……小学校の時、女ボスの川喜多に苛められて以来の事だった。
そして真実腹立たしいのは―――俺自身だ。
鴻池は俺に対して執着していただけで、ねーちゃんは元々何も悪い事をしていないんだ。俺の所為でねーちゃんに辛い想いや不快な体験を背負わせてしまったと言う事が―――いっとう腹立たしかった。
「……謝る相手は、俺じゃないだろ」
「……あ……」
「俺は……姉貴に対して鴻池がした失礼な態度絶対に許せない。例え彼女が許しても」
ねーちゃんはおそらく鴻池に対して、許すも許さないも考えていないだろう。
だけど、だからこそ俺はそう思うのだ。
「……うん。そうだよね……」
鴻池は小さな声で頷いた。
何なんだ。急にしおらしくなっちまって。
今日の鴻池は今までと違った。ここまで言えば、今までなら怒って言い返してグーパンでもかましてくるところだ。ところが、鴻池は頷いたまま俯いていた。
数秒の沈黙の後カップを持つ手にキュッと力を籠め、意を決したように鴻池が声を発した。
「……あの、私が中2で転校してきたのは、両親の離婚が原因なの」
唐突な話題変換だった。俺は何と言って良いか分からず、相槌も打たずに黙っていた。中学では女子バスケ部に所属していた鴻池をきちんと認識していなかったくらいなので、当然俺は転校の理由なんて、全く知らなかった。
「ウチね。父親が浮気していたのに、母親がそれを知ってもなかなか別れる決心が付かなくて……すっごく揉めたの。毎日母さん、泣いていた。やっと別れたのは私が中2の時。だから中途半端な時期にこっちに越して来たの。私母さんを傍で見ていて『無駄なコトやってるな、毎日泣いてばかりいないですっぱり別れて見切り付ければいいのに。私は絶対男に夢中になんかならないし、振り回されない』って、ずっと思っていたの」
「……」
急に投げ込まれた重い内容に、俺は沈黙を続けるしかなかった。
なんだろう、これ。
もしかして、お悩み相談なのだろうか……。
「でも……森の事、好きになっちゃって……」
一転して自分に話題が戻った事に戸惑う俺の顔を、鴻池はチラリと一瞥すると頬を染めてまたカップの水面に視線を戻した。
「だけどそれを自分で認められなくて。森とお姉さんが仲良くしている事に嫉妬する気持ちを―――自分の感情を見ない振りして『これは自分のためじゃなくて森の為に、バスケ部の為にやっている事なんだ』ってひたすら言い訳し続けて、自分が正しいと思い込もうとして―――で、2人を引き離さなきゃって考えていたの」
「ヒドイな……」
「うん……ゴメン。ヒドイ事したなって事―――漸く最近、理解できたの。……森に振られた後、私の様子が変だって思った母さんが私の話を聞いてくれて―――その時母さんにやっと本音をぶつけられたの。そしたら自分が母親の事を誤解していた事が分かって―――何を考えて離婚を渋っていたのかとか―――自分勝手に解釈して、男に振り回されて弱いだけの人間だって思っていた母親っていう私の認識が本当は間違っていたって分かったり、とにかく自分が今まで思い込んでいた事が見たままと違うって知って―――それでね、やっと自分がいかにバカだったかって、気付いたの。自分の気持ちに見ない振りをして逃げ回って、他人に八つ当たりしていたんだって事にも」
「……」
「駄目な自分を思い出すのって、しんどいけど……振り返ってみると、森のお姉さんはいつも森を見守って、尊重していた―――大事にしていた。私みたいに自分の勝手な希望を好きな相手に押し付けるなんて考えもしないで―――森に寄り添って支えていた。本当は私、それが薄々分かっていたから―――自分がお姉さんに負けてる、敵わないって内心分かっていたから―――『姉弟で付き合うのが正しく無い』とか、『森がお姉さんにべったりなのが部活の為に良くない』とか、建前だけでしか批判出来なかったんだ。そんな自分に―――本当に無神経な自分にやっと気が付いて……」
鴻池はカップから顔を上げて、緊張した面持ちで俺の目をジッと見据えた。
「本当に、ごめんなさい。だけど私、部活は辞めたくないし、ちゃんと皆に頑張って欲しい―――まだ2年もあるから、部内でギクシャクしたくない。だから、ごめんなさい―――許してほしいけど、許せないっていうのもわかるから―――せめて、部活では普通に仲良くして欲しい。お願いします」
そうして頭を下げ、それからまた顔を上げて付け足した。
「地崎君が心配して声を掛けてくれて……謝る機会を作ってくれたの」
「……地崎が?」
それで、今日ここに俺は誘われたのか。
地崎がくっついて来た理留ちゃんを少々厳しく追い払おうとしたのは、鴻池と俺を引き合せる目的があったからなのか?
「うん。地崎君の彼女がいたのは想定外だったけど……本当は3人で話しようって、彼がとりなしてくれるって言ってくれてたの」
鴻池はカップをギュッと掴んで口元へ持って行くと、夏場に水かなんかを飲み下す要領で、ゴックゴックと一気に飲み干した。
そして、プハァ―ッと、肩で息を吐く。
「今日の目標、達成した」
鴻池の顔が幾分綻んで、2人の間にあった妙な緊張感がパッと散った。
思えば鴻池は―――俺にねーちゃんの事に絡むようになってから始終苛々として挑戦的で、俺たちの間には妙な緊張感が漂っていた。
それ以前は決して、居心地の悪い相手では無かったのに。
「じゃあ、帰るね。とりあえず謝りたかったの。今は許してくれなくても良い。私のした事、許せなくても当たり前だし。それは覚悟していたの。だから今日の目標は、謝罪を伝えるって事だけ―――もちろん、お姉さんにも謝りたいけど―――私の顔も見たくないかもしれないし、まず森に許して貰って、森から許可が出ない限り近づかないつもり」
鴻池はトレイを手に、立ち上がった。
「じゃあ、行くね」
その切なそうに細めた目と苦しそうに寄せられた眉を見て。
―――俺は即決した。
「許す」
「え?」
鴻池は俺の発言に、ポカンと口を開けた。
「俺は許すことに決めた―――それに、姉貴は多分―――全く怒ってない。そういう人なんだ。だから謝らなくても大丈夫だし―――どうしても謝りたいなら、話を聞きたいかどうか、俺がに姉に確認する。でももし彼女が断ったら、諦めて」
トレイを持って立ったまま、鴻池は呆けていた。
俺が直ぐに『許す』と言うなんて、思ってもみなかったようだ。
でも、俺だって部活の雰囲気を悪くしていた最近の事とか、地崎に心配かけていた事実とか―――そう言う事がずっと気になっていたんだ。
それに元々鴻池がねーちゃんに絡まないと言うなら、俺が何と言われようと、ただ鬱陶しいってだけだった。
「森……いいの」
「うん。俺も、部活でギクシャクするのは嫌だ。先も長いし、練習にも試合にも集中したいから。……鴻池がマネージャーの仕事頑張っているのもわかっている。たぶん地崎も同じ考えだ。だから、」
俺は息を吸い込んで、できるだけ落ち着いた声で言った。
「だから、部活では普通に戻ろう」
「あ……ありがと……森」
鴻池は涙目になったが、両手がトレイで塞がっていた。俺は、未だ使っていない紙ナプキンを鴻池に押し付け、トレイを奪って自分のものと重ね、纏めて片付けた。
妙にしおらしくなった鴻池が、涙をそっと拭ってから、俺の後に続いた。
何だか妙な気持ちだ。
鴻池が謝るなんて……天変地異が起こったみたいに現実感が無い。
でも、本当は。地崎がいつか俺達の仲を取り成そうとするのではないかと、俺も心の隅で予測していた。部活内のゴタゴタはそのまま試合に直結する。できるだけ円満に、揉め事は解決するべきなんだ。
けれども例えば、ねーちゃんが鴻池の事を許せないって考えるような人間なら、俺はこんなにすんなり地崎の描いた図の中に溶け込もうとは考えなかっただろう。
だけどねーちゃんは例え一時本気で腹を立てたとしても―――ずっとその怒りを維持できる人では無い。だから俺が代わりに怒っても、それは全く意味の無い行動なんだ。
だけど。鴻池とのわだかまりが無くなったところで―――根本的な問題はまだ解決していない。
ねーちゃんと鴻池が和解したとして、それが一体何になるのだろう?
―――ねーちゃんは、俺に言った。『姉弟に戻ろう』って。
ねーちゃんの提案を受け入れるつもりは―――毛頭無い。
だけど彼女が東京に行ってしまったら、物理的な距離が離れてしまったら―――幾ら俺が「絶対別れない」ってここで叫んでも、負け犬の遠吠えみたいなものだ。
俺ももう、中学生のガキじゃない。
怒りのままに気持ちを爆発させて暴走しても、本当に欲しい物は得られないって、今では理解している。
でも、どうしたら良い……?
このまま手をこまねいていて、それこそ修復の効かない関係になったら、自分が馬鹿な行動に踏み出さないかどうか、自信が無い。
受験票を捨てる?
申込書をどうにかして、こっそり書き直す?
泣いて縋って、説得すればいいのか?
それとも―――受験日に、家から出さないようにしたら?
もう、ねーちゃんに対して自分勝手な強引な真似はすまい、と心に決めた。
でも、本当にどうしたら良いんだ……?
何もできずに鬱屈を溜めこんで―――俺はまたねーちゃんにヒドイ事をしてしまわないだろうか?ねーちゃんを失う事を恐れるあまりギリギリで暴走してしまう自分が容易に想像できる。その結果、一番失いたくない、ねーちゃんの愛情を失ってしまうかもしれないと考えると……怖い。
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