俺のねーちゃんは人見知りがはげしい

ねがえり太郎

文字の大きさ
131 / 211
・後日談 俺とねーちゃんのその後の話のおまけ1・

後輩を誘って <高坂>

しおりを挟む
高坂蓮が大学4年生、清美が大学2年生の頃のお話。高坂先輩視点です。

※男同士の会話が下世話です。苦手な方は閲覧にご注意願います。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何となく思い付いて、清美を飲みに誘った。

場所は隠れ家っぽいイタリアンのバーの半個室。奴はまだ19歳だから烏龍茶だ、一方で俺は遠慮なくハウスワインをいただく事にした。女の子相手なら気を遣うけれど、清美相手に遠慮する意味も意義も感じられないから、通常運転でやらせていただく。

晶ちゃんとの付き合いについて尋ねると、腹立つ事にデレデレしながら整った顔をグズグズに崩して語り始める。

ふーん……この間、泊まったのか。ハンバーグね、旨かったの?へー良かったな。お前の彼女に俺は惚れてたんだぞ?ちょっとは気を遣う気、無いの?ああ、無いんだ……なるほど、へーえ。

自分から尋ねて置いて聞いている内に不機嫌になってしまった俺は、自棄になって一番聞きたく無い話題について尋ねる事を決断した。そう、そうすればもっと早く……諦めを付けられるかもしれない。
清美が目に入らない最高の環境で、一旦彼女の数少ない友人と言う栄誉ある地位を得てしまったなら……なかなか自分の中にある思慕の残骸を処理しきれない。あの柔らかでちょっと低い声で、無表情を不意に緩めた瞬間を目にしてしまったなら。黒曜石のような円らな瞳を細めた、不思議に魅惑的な微笑みを目にしてしまったら―――つい時を忘れて見入ってしまうのは、どうしようもない。俺は一度嵌るとしつこいタイプで、初恋でその性質はシッカリ証明済みなのだ。それに晶ちゃんを好きになった今でも―――法律上絶対結ばれる事が叶わない初恋の相手に対する思慕も、薄くなっても消えはしない。そんな俺だから、彼女がこのキラッキラした茶髪の、色素の薄い混血モデルみたいなデカい男と両想いになったくらいじゃ、当然気持ちがすっかり掻き消えてしまうなんてある訳無い。

いい加減、俺もそろそろ障害の無い、真面まともな恋愛がしてみたい。

なんて願ってみたって罰は当たらないだろう。だから、ちょっとだけ自虐的になってみるのもアリかもしれない。清美、そろそろ俺にトドメを差してくれ。―――まあ、トドメを差された後、普通に腹立って殴るくらいするかもしれないけれど。



「ふーん……で、あっちの方はどうなの?晶ちゃんの事、満足させてるワケ?」



ピクリ、と奴の笑顔が固まった。
ほー……テクニックには自信なし、ってトコか。そうあて推量で決めつけて、俺は口元に悪い笑みを浮かべた。

「お前って一見フェミニストっぽいけど、実は直情型だからな。自分勝手に気持ち良くなって、晶ちゃんの事置いてきぼりにしそうだと思ってたよ。晶ちゃんだったらそれでも可愛い弟だからって許してくれそうだし。……でもなー、甘え過ぎは減点対象だぞ。女の人は男に対して減点方式だって言うからな、いつの間にか愛情が尽きてましたって事が無いように気を付けろよ」
「……」

俺の盛大な嫌味に、ガックリと肩を落とす清美。

「え、何?図星だった?」

ハハハ、ざまーみろ。
俺はとぼけた台詞を口にしつつ、ニヤリと意地悪に嗤って見せた。



「……せん」



すると顔を俯け、テーブルの上で両手をギュっと握りしめた清美が、ボソッと呟いた。が、何を言っているのか―――全く聞こえない。

「は?」
「まだ……そこまで、行ってません……」

思わず時が止まった。
清美の言っている意味が分からず、俺は純粋に聞き返した。

「え?何言ってんの?」

聞き間違いか?
親元を離れて一年以上だぞ、付き合ってたのはその前からだし。しかもアイツきっと小学校ぐらいから、晶ちゃんの事好きだよな?―――と言うと足掛け10年くらいの計算になる。なのに―――『そこまで行っていない』?どういう事だ?ああ、あれか……清美の技術テクが其処まで上達していないと言う……まさか、何もないなんて事―――あり得ないよな?

「……冗談だよな?」

半笑いで言うと清美が顔を上げ、ふっと昏い目で嗤った。直情素直がウリの奴とは思えない深い闇が、其処にあった。

「……冗談なんかじゃないですよ。親父から結婚するまで『禁止令』出てますから。彼女も彼女でガードが固くなっちゃって……以前はタンクトップとショートパンツで誘ってんのかっって格好でフラフラしてたくせに……今はキッチリ服を着てボタンも一番上まで嵌めてますからね……」

ハハハ……と素直が取柄の奴に似合わない、乾いた笑いを浮かべる。

「だから高校の時よりずううっと綺麗な―――思いっきりプラトニックな……お付き合いさせていただいてます」

と生気のない瞳で話す言葉は、棒読みだった。

「ぷっ……」
「何ですか」
「いい気味……」
「―――」

清美はギッと俺を睨み付けた。

「そうやって嘲笑っていればいいですよっ……今に、今に見ていてください。結婚までの我慢ですから……結婚さえすればっ!我慢……我慢……うっ……!」

そう言ってキラキラした整った顔のモデルみたいな大きな男が、耐えきれないと言うようにテーブルに突っ伏してしまった。

本当に相変わらず残念な男だな……。コイツくらい中身と外側のギャップがある奴を―――俺はこれまで見た事が無い。

可哀想だが、ちょっとの間(いや、数年か……?!)我慢すればいつか彼女を手に入れられるのだ。羨ましいやら面白いやら……俺は欲望を持て余して悶える男に、更に追い討ちをかける事にした。

「他で発散しちゃえよ……秋吉さんに聞いたぜ、飲み会でモテモテだったんだろ?ツマミ食いしたってバレやしないよ。晶ちゃん……そういうの鈍そうだぜ?」

悪魔のように、甘く耳元で囁いてみる。

「……それに練習した方が晶ちゃんの為だぞ。あの子、処女だよな?お前がリードしなくてどうする?……なんなら俺がレクチャーしてやってもいいんだぞ?な、それが彼女の為じゃないか?まだ結婚している訳じゃなし、それに生活に距離のある今、やっとかないとこの先チャンスないかもよ?一生一人しか相手できないなんて、勿体無いくないか?」

ビクッと肩を震わせて、清美はボンヤリと俺の目を見た。そして―――今度は射殺すかと思うくらいに凶悪な視線で睨みつけられてしまった。薄い瞳で、お人形のようなキレーな顔が表情を無くすと―――酷く冷酷に見えるから、凄みが出る。



「どうせ俺が遊んだら遊んだで、直ぐ晶に密告する気でしょ!分かってますよ、高坂先輩の考えそうな事は!けどぜーったい、浮気なんかしませんけどね……!俺は先輩と違ってあちこちつまみ食い出来る器用な性質じゃないんですよ……!!」



おい、序でにヒドイ事言い放ちやがったな。俺は苦笑して体を起こした。

「残念、バレたか」

そう言って笑うと、奴はますます眉を吊り上げて牙をいた。

「当り前です!ここまでやっとの想いで辿り着いたのに、今更諦める訳無いでしょう!」
「おう、頑張った頑張った。だけどそんな無理しなくていいんだぞ、俺はいつでも晶ちゃんを引き受ける用意があるからな」
「無理なんかしてませんっつーの!」

ギャンギャン言い返す清美を見ていたら、自然に口元が緩んでしまう。



あー、おもしろ。



清美を虐めると、やっぱ気持ちがスッとするなぁ……。
よし、これからストレスが溜まったら、コイツを虐めて解消する事にしよう!



この飲み会が切っ掛けとなり―――俺はこの後も、清美をチョクチョク飲み屋に呼び出す様になったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高坂先輩の呼び出されるようになった清美ですが、社会人になっても再びこの関係が継続します。
なお、大人になった後の飲み会の様子は『お兄ちゃんは過保護』の別視点で掲載しております。

お読みいただき、有難うございました。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※特別編9が完結しました!(2026.3.6)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

処理中です...