捕獲されました。

ねがえり太郎

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新妻・卯月の仙台暮らし

12.浮かれてました。

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 新しい出会いに浮かれるあまり、そこまで気が回らなかった……!

 私が丈さんと仲良くなった切っ掛けは『うさぎ』。それでもって仕事人間の彼と共通の話題と言えば、ほぼ『うさぎ』がメインで―――つまり私が妻でいるのは一重にうさぎのおかげ。

 専業主婦の本分である家事の面ではそれほど役に立っていない。頑張って料理だけは作っているけど、それだってまだ旦那様である丈さんの域に達していない。まあまあ真面目に頑張っていたお仕事は休業中、例え続けていたとしても能力も覚悟も丈さんの足元にも及ばない。見た目だって秀でた処は無い……風邪も滅多にひかない健康体ではあるけれど、スタイルの面でも同じく平凡、と言うか胸の大きさに関しては平均よりやや劣っている……かもしれない。
 容姿に関して言えば、例えば丈さんの部下で彼に密かに思いを寄せていた三好さんと比べたら月とすっぽんだ!それに彼女なら仕事でタッグを組む事も出来るし、見た目だけじゃ無くて人柄も素敵なんだもん。うっ……もう結婚したんだし、三好さんに失礼だからこんな風にウジウジ自分を卑下しないで頑張るって決めたから、それは今更だ。卑下してるって言うわけじゃなくて、つまり何が言いたいのかと言うと―――事実!そう、丈さんが私と付き合うメリットって、つまり『うさぎ話』が出来ること!これが大きいと思うの、たぶん!

 だから思う。伊都さんって―――ひょっとして丈さんの、まさに好みど真ん中の女性なのでは?!って。だって伊都さんはうさぎが大好きで詳しい。見た目だって前髪はちょっと長いけど、よくよく見ればかなりの美女(と言うか印象としては美少女?)。

 いやいやマテマテ!私には素晴らしいオプションが付いている!そう我らがうータン、こと白魔女姫!彼女がいるから丈さんは私達・・から離れたりしないはず!それだけは絶対間違いない。うん、私の方が『うータンのおまけ』だってことは否定しないよ?うータンにはそれだけの魅力があるんだし。私も白いトゥルットゥルッの肌ざわりの毛皮、マイペースな素っ気ない所も急に強引な甘えんぼになる所も―――彼女の全部にメロメロだから、それは断言できる。だって最初の出会いからしてそうだし……あれ?あれれ?

 『うさぎひろば』にはあのネザー君がいる。ミミそっくりの黒うさぎ……伊都さんの傍にはあの子がいる。

 丈さんはミミをとーっても愛していて、ミミを失った飢餓感でヘロヘロになった所に表れたうータンに嵌ってしまった。そんでもっていろいろあって今では私と結婚することで、白魔女姫にずっと仕えることのできる幸せな執事となったワケだけれども。

 ミミそっくりの彼がいれば、もっと幸せなんじゃない?
 しかも私よりずーっとうさぎに詳しい伊都さんと話せるなら、もっと嬉しいんじゃない?

 そして何より彼女はうさぎっぽい!仕草とか見た目とか!更に何となくだけど―――結婚もしていないし、店長とも単なるイトコって雰囲気だし―――つまり、彼女はフリーだと思う。付き合っている人もいないんじゃないかなって思うの。

 ううう、どうして私は余計な事をしてしまったのだろう。新しい出会いに浮かれて、ミミそっくりの子うさぎを見つけてこれは丈さんに会わせないと!なんて一人で盛り上がって。

 伊都さんと丈さん、もしかすると運命の相手かもしれない二人を引き合わせてしまったのだとしたら―――どうしよう。伊都さんの方もなぁ……最初彼のこと怖がってたけど、うさぎ好きだって分かってから割とすぐに気負い無く話せるようになったし……。



「……卯月?」
「ん?」



 気が付くと丈さんが大きな背を屈めるようにして、私の顔を覗き込んでいた。

 はっ……自分の脳内にダイブして、深ぁく沈み込んでしまっていた!丈さんが何か言っていたような気がするけど、全然聞いていなかったよ。わ~せっかくの久し振りのデートなのに!なんてこったい!

「あっゴメン!ちょっとボーッとしちゃってた」
「疲れたのか?タクシーでも拾うか」

 そう言って神妙な表情で、私の顔をじっと見つめる鋭い瞳。

 丈さんを動物に例えるなら―――鷹?鷲?みたいな猛禽類系かな?若しくはそう……『狼』。うん、狼はピッタリかも。普段はひっそり森の中に紛れて鋭い視線で獲物を狙う。だけど群れの仲間には、特別にとっても優しいんだ。そんな群れのリーダーって感じ。だから彼の仲間達は安心してその後ろに付いて行けるの。

 今も丈さんの瞳は、この上なく優しい。

 私って本当に贅沢だな。こんなに私を気遣ってくれる旦那様を想像の中だとしても疑うなんて。大好きだから、かけがえのない存在だから失いたくない。だから直ぐに丈さんが私じゃない誰かを好きになるんじゃないかって不安の虫が湧き上がって来てしまうのかも。だけどそれは丈さんを信じていないって言うのと、ちょっと違う。丈さんの所為じゃ無くて……ただ私が、私自身に自信を持てないからなんだ。
 丈さんはそんな簡単に浮気しちゃう人じゃない。真面目だもん、真面目過ぎて近寄り難いくらいだもん。―――でも本気だったら?イヤイヤ!それ言い始めたらキリがない!

 私は私の出来る事をやるしかないの。
 幸運にも彼と出会って結婚することが出来たんだから。

 よし!私は私なりに頑張る。まずは良い妻を目指す。うータンの飼い主であること以外の、アピールポイントを作ろう……!

 まずは料理の腕を上げる!そして更にうさぎについても、もっと詳しくなる!そうすれば少なくも下らない嫉妬を伊都さんに向ける事もなくなるはず!だって伊都さんとこれからも仲良くしていきたいモン。嫉妬でギクシャクしちゃうなんてもったいない事はしたくない!

 ムン!と私は鼻息荒く拳を握った。

「全然大丈夫!むしろ元気有り余ってるくらいだよ」
「そうか」

 そしてホッとしたように表情を緩める彼を、決意も新たに見上げる。

「丈さん、今日夕飯何食べたい?」
「え?ああ……特に考えていなかったな。せっかくだから夜も何処か食べに行くか?卯月に何か食べたいものがあれば……」

 唐突な私の問いかけに少し怯んだような口調で、丈さんはそれでも私を気遣ってくれる。く~、こんなに良い旦那様に心配かけて!私ったら!

「ううん、お昼は外だったから夜はおウチで食べよ!私が作るから。だから帰りはスーパーに寄って行こう?」
「そうだな……今日はだいぶん歩き回ったし、家でのんびりするのも良いよな」
「うん、うータンも環境にソロソロ慣れて来たから今日は一緒にのんびりできるかもしれないしね」
「ああ、取れかかった抜け毛も気になるし、ブラッシングもしてやらないとな」
「ねー!私もうータン不足だよ。可愛いうさぎ達を見たら、ますますうータンのビロードの毛並みに触りたくなっちゃった……!」

 なんて、その後は和気あいあいとうータン談義に話を咲かせつつ家路を辿ったのだった。

 その日の夕飯は、見栄えはいまいちだけど結構美味しくできたと思う。そしてうータンも少し落ち着いていて、ブラッシングまでは出来なかったけどツルツル素敵な毛並みを撫でさせて貰うことが出来ました。ふ~満足満足!



 よっし、これからも素敵な嫁を目指して頑張るぞ!



 旦那様の心をつなぎとめる為にまずは料理!そしてうさぎ知識を増やしつつ、うータンのお世話に専念すること!うん、次は頃合いを見てブラッシングと爪切りを完璧にやり遂げるぞ!頑張ろう、お~!


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『素敵な嫁』の基準が亀田家と世間では若干ズレているようです(´▽`)笑
波瀾は起こりそうでやっぱり起こりません。この後も行き当たりばったりでまったり続きます。

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