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新妻・卯月の仙台暮らし
25.誘いました。
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地震の影響で使えなかったPCが復活したので、事前に手を付けていたお話を追加します。
あとは節電に気を付けつつ環境が落ち着いたらもう少し落ち着いたらちゃんと作業を再開したいと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「と、言う訳なんですよ。さすがに最近うータンと二人飯だけじゃ寂しくって」
「確かに寂しいですね」
ここは『うさぎひろば』の運動場だ。伊都さんと初めて出会った頃は単なるうさぎの飼育場兼作業場だったのだけれど、ちょっとしたラビットランに模様替えされている。もともと店舗のケージに展示されている子や、売約済みで待機中の子うさぎ達のためのものなのだけれど、うータンにも特別に利用させて貰っていた。本日で三度目の利用になる。
伊都さん達は『うさぎひろばフレンド』と言う会員優待サービスを検討しているらしい。
その会員になると無料で運動場を使用出来たりメールマガジンを送って貰えたり、ペレットや牧草を年間契約する事で少し割り引いて貰えたり……なんて言うサービスが受けられるようになるそうだ。スマホで簡単に会員登録できるシステムも作成中なんだとか。
そのサービスを立案したのが何を隠そう、この目の前の伊都さん!なの!
引っ込み思案の権化みたいな彼女からは想像も出来ない積極性!これはうさぎに関することだから、と言う説明だけでは収まり切れない。何故ならそのシステムを外注するのではなく伊都さんが自ら手掛けているからだ。もともとそう言うお仕事を以前していたんだって。詳しく聞こうとすると視線を泳がせて「……いえ、その……まぁ」と言葉を濁すので深くは突っ込まなかった。ひょっとするとあまり良い想い出じゃなかったのかもしれない。これは、ただの想像なのだけれど。
そこで我らがうータンの出番。その会員優待サービスに先立ってモニターのような役割を担う事になったのだ。まずはラビットランを使わせて貰って、不具合は無いかとかこうしたほうが使い易いとか、お客さま目線で確認しているところだ。私もうータンも暇を持て余しているしね、願ったりかなったり。そう言えば、丈さんの部下の戸次さんと初めて出会ったのもここだった。
「伊都さんはいつも夕飯はどうしているの?」
と、尋ねたのは下心があったから。もし予定が無かったら仕事終わりに一緒に外食でもどうかなぁ?と考えたのだ。丈さんはかろうじて朝御飯は一緒に食べられるけれど、伊都さんに漏らした通り忙しくて夕飯はもう十日以上共にしていない。うータンとは触れ合えるけど、さすがに誰かとおしゃべりしながら食べることが恋しくなって来た。
この土地で唯一親しく話が出来る女の人、伊都さんと是非是非!ご飯をご一緒したい……!
伊都さんは即答した。
「私はジンさんと一緒に食べてます」
「『ジンさん』って店長のこと?」
「はい……あっ」
普段はそう呼んでいるんだね。以前電話でもそう言い掛けて『店長』と言い直していた。伊都さんはうっかり素になってしまった事を悔いるように眉を下げた。
「店では公私混同しないようにって店長が……」
「大丈夫だよ。私とうさぎ達しかいないし」
私と伊都さんは休憩用の椅子に座って、伊都さんが入れてくれたお茶を飲んでいた。お茶菓子は私が持参した『きなこサンド』だ。アーモンドを練り込んでカリっと焼き上げたメレンゲに、きなこクリームを挟んだもの。サクサクしっとり甘さ控えめで紅茶にもピッタリ。きなこサンドをパクリと平らげ香りの良い紅茶を一口飲んでから、両手でカップを持つ伊都さんに思い切って申し出ることにした。
「伊都さん、もし良かったら今日、お仕事終わりに何処かでご飯食べませんか?」
「えっ……ええ?わ、私と……ですか?!」
伊都さんは目をまん丸くして、当たり前のことを聞き返す。
その過剰な反応に今度は私が眉を下げる。
あれ?ひょっとして仲良くなれたと思ったのは私だけなのかな?伊都さんにとっては私はしょせんただの客で、食事を一緒にするような仲とは認識していなかったかもしれない。
彼女が徐々に無防備に素を晒してくれるようになって、気安く話せるようになって嬉しかった。気持ちが近づいたようで。
オドオドと挙動不審に視線を揺らす伊都さんを前に、私は肩を落として溜息を吐いた。
「やっぱり『公私混同』はダメですかね?店長に怒られちゃいます?」
「え……」
伊都さんは戸惑ったように言葉を失う。
あっ……これって、ちょっと嫌味っぽかったかな?!
彼女はお客さんの誰かと懇意にしたら行けないと店長さんに言われているか、若しくはそう考えているだけなのかもしれない。それなのに愚痴っぽく縋ったらいけないよね……!あーもう、最近人との会話に飢えているから優しそうな伊都さんに甘えてしまった……!
「ゴメンなさい!」
伊都さんはパチパチと大きな瞳を瞬かせた。
「甘えすぎですね!私調子に乗って……その、伊都さんと仲良くなれたと思って一緒にご飯食べたいな、おしゃべりしながら……なんて思い付いただけなんです」
「……」
「それにずっと丈さんと夕ご飯食べていないし寂しくって……ここで年の近い知合いって伊都さんしかいないから、出来たらって思っただけなんです。気にしないで下さい!」
パチパチと忙しなく瞬きを繰り返し、彼女は再び口を開いた。
「……あの、あの……う……れしい、です」
それは蚊の鳴くような小さな声。今度は私がパチパチと瞬きを繰り返した。じっと見つめると伊都さんは真っ赤になって視線を俯かせて、再び口を開いた。
「あのっ……私、聞いて来ます!」
「え……?」
「ジンさんに!外食しても良いか、聞いて来ます!」
「え!良いんですか?」
コクコクと頷いてから、伊都さんは立ち上がった。しかし慌てて言い直す。
「あのっ……もう夕食の準備が終わってたら、駄目かもしれないですけどっ……だから、ジンさんに聞いて来ます!」
あれ?これってご飯仕度は店長さんがやっているってことなのかな?てっきり伊都さんが作っているのかと思っていたけど。
付いて行こうと立ち上がり掛けた所で、伊都さんは両手で私を押しとどめた。私の空いたカップに紅茶を注ぎ「ここで!待っていてください!お茶でも飲んで……!」と、焦ったように言い継いだ。必死な表情に、私もコクリと言葉も無く頷く。すると満足したようにもう一度神妙に頷きを返して、伊都さんは運動場の入口から飛び出して行ったのだった。
怒涛の勢いに気圧された私は、取りあえず追加で注がれた紅茶に口を付けた。それから広い運動場でのんびりするうータンを構ったり、ケージに入っている子うさぎ達に話し掛けたりしていると、伊都さんが割と直ぐに戻って来て満面の笑みを返してくれた。
「大丈夫です!OK貰いました!」
「やった!」
わーい、今日は伊都さんと外食だ!
何食べようかな?
それに女の人とお食事!久し振りだー。
ワクワクがせり上がって来て、思わずニンマリしてしまう。
ああ、楽しみだなぁ!!
あとは節電に気を付けつつ環境が落ち着いたらもう少し落ち着いたらちゃんと作業を再開したいと思います。
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「と、言う訳なんですよ。さすがに最近うータンと二人飯だけじゃ寂しくって」
「確かに寂しいですね」
ここは『うさぎひろば』の運動場だ。伊都さんと初めて出会った頃は単なるうさぎの飼育場兼作業場だったのだけれど、ちょっとしたラビットランに模様替えされている。もともと店舗のケージに展示されている子や、売約済みで待機中の子うさぎ達のためのものなのだけれど、うータンにも特別に利用させて貰っていた。本日で三度目の利用になる。
伊都さん達は『うさぎひろばフレンド』と言う会員優待サービスを検討しているらしい。
その会員になると無料で運動場を使用出来たりメールマガジンを送って貰えたり、ペレットや牧草を年間契約する事で少し割り引いて貰えたり……なんて言うサービスが受けられるようになるそうだ。スマホで簡単に会員登録できるシステムも作成中なんだとか。
そのサービスを立案したのが何を隠そう、この目の前の伊都さん!なの!
引っ込み思案の権化みたいな彼女からは想像も出来ない積極性!これはうさぎに関することだから、と言う説明だけでは収まり切れない。何故ならそのシステムを外注するのではなく伊都さんが自ら手掛けているからだ。もともとそう言うお仕事を以前していたんだって。詳しく聞こうとすると視線を泳がせて「……いえ、その……まぁ」と言葉を濁すので深くは突っ込まなかった。ひょっとするとあまり良い想い出じゃなかったのかもしれない。これは、ただの想像なのだけれど。
そこで我らがうータンの出番。その会員優待サービスに先立ってモニターのような役割を担う事になったのだ。まずはラビットランを使わせて貰って、不具合は無いかとかこうしたほうが使い易いとか、お客さま目線で確認しているところだ。私もうータンも暇を持て余しているしね、願ったりかなったり。そう言えば、丈さんの部下の戸次さんと初めて出会ったのもここだった。
「伊都さんはいつも夕飯はどうしているの?」
と、尋ねたのは下心があったから。もし予定が無かったら仕事終わりに一緒に外食でもどうかなぁ?と考えたのだ。丈さんはかろうじて朝御飯は一緒に食べられるけれど、伊都さんに漏らした通り忙しくて夕飯はもう十日以上共にしていない。うータンとは触れ合えるけど、さすがに誰かとおしゃべりしながら食べることが恋しくなって来た。
この土地で唯一親しく話が出来る女の人、伊都さんと是非是非!ご飯をご一緒したい……!
伊都さんは即答した。
「私はジンさんと一緒に食べてます」
「『ジンさん』って店長のこと?」
「はい……あっ」
普段はそう呼んでいるんだね。以前電話でもそう言い掛けて『店長』と言い直していた。伊都さんはうっかり素になってしまった事を悔いるように眉を下げた。
「店では公私混同しないようにって店長が……」
「大丈夫だよ。私とうさぎ達しかいないし」
私と伊都さんは休憩用の椅子に座って、伊都さんが入れてくれたお茶を飲んでいた。お茶菓子は私が持参した『きなこサンド』だ。アーモンドを練り込んでカリっと焼き上げたメレンゲに、きなこクリームを挟んだもの。サクサクしっとり甘さ控えめで紅茶にもピッタリ。きなこサンドをパクリと平らげ香りの良い紅茶を一口飲んでから、両手でカップを持つ伊都さんに思い切って申し出ることにした。
「伊都さん、もし良かったら今日、お仕事終わりに何処かでご飯食べませんか?」
「えっ……ええ?わ、私と……ですか?!」
伊都さんは目をまん丸くして、当たり前のことを聞き返す。
その過剰な反応に今度は私が眉を下げる。
あれ?ひょっとして仲良くなれたと思ったのは私だけなのかな?伊都さんにとっては私はしょせんただの客で、食事を一緒にするような仲とは認識していなかったかもしれない。
彼女が徐々に無防備に素を晒してくれるようになって、気安く話せるようになって嬉しかった。気持ちが近づいたようで。
オドオドと挙動不審に視線を揺らす伊都さんを前に、私は肩を落として溜息を吐いた。
「やっぱり『公私混同』はダメですかね?店長に怒られちゃいます?」
「え……」
伊都さんは戸惑ったように言葉を失う。
あっ……これって、ちょっと嫌味っぽかったかな?!
彼女はお客さんの誰かと懇意にしたら行けないと店長さんに言われているか、若しくはそう考えているだけなのかもしれない。それなのに愚痴っぽく縋ったらいけないよね……!あーもう、最近人との会話に飢えているから優しそうな伊都さんに甘えてしまった……!
「ゴメンなさい!」
伊都さんはパチパチと大きな瞳を瞬かせた。
「甘えすぎですね!私調子に乗って……その、伊都さんと仲良くなれたと思って一緒にご飯食べたいな、おしゃべりしながら……なんて思い付いただけなんです」
「……」
「それにずっと丈さんと夕ご飯食べていないし寂しくって……ここで年の近い知合いって伊都さんしかいないから、出来たらって思っただけなんです。気にしないで下さい!」
パチパチと忙しなく瞬きを繰り返し、彼女は再び口を開いた。
「……あの、あの……う……れしい、です」
それは蚊の鳴くような小さな声。今度は私がパチパチと瞬きを繰り返した。じっと見つめると伊都さんは真っ赤になって視線を俯かせて、再び口を開いた。
「あのっ……私、聞いて来ます!」
「え……?」
「ジンさんに!外食しても良いか、聞いて来ます!」
「え!良いんですか?」
コクコクと頷いてから、伊都さんは立ち上がった。しかし慌てて言い直す。
「あのっ……もう夕食の準備が終わってたら、駄目かもしれないですけどっ……だから、ジンさんに聞いて来ます!」
あれ?これってご飯仕度は店長さんがやっているってことなのかな?てっきり伊都さんが作っているのかと思っていたけど。
付いて行こうと立ち上がり掛けた所で、伊都さんは両手で私を押しとどめた。私の空いたカップに紅茶を注ぎ「ここで!待っていてください!お茶でも飲んで……!」と、焦ったように言い継いだ。必死な表情に、私もコクリと言葉も無く頷く。すると満足したようにもう一度神妙に頷きを返して、伊都さんは運動場の入口から飛び出して行ったのだった。
怒涛の勢いに気圧された私は、取りあえず追加で注がれた紅茶に口を付けた。それから広い運動場でのんびりするうータンを構ったり、ケージに入っている子うさぎ達に話し掛けたりしていると、伊都さんが割と直ぐに戻って来て満面の笑みを返してくれた。
「大丈夫です!OK貰いました!」
「やった!」
わーい、今日は伊都さんと外食だ!
何食べようかな?
それに女の人とお食事!久し振りだー。
ワクワクがせり上がって来て、思わずニンマリしてしまう。
ああ、楽しみだなぁ!!
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