捕獲されました。

ねがえり太郎

文字の大きさ
201 / 375
番外編・うさぎのきもち

4.何とかして

しおりを挟む
 結局アレコレ考えて、手を入れずに餌を追加する事を思いついた。厚紙を細長く切りV字型に折り曲げ、それをケージの中に差し込み滑り台のようにして餌を流し込むと言うもの。思いついた時には『なんて名案だ!』と浮かれたものが、実際やってみるとなかなか難しい。滑り込ませる途中で脱落した餌の粒がザラザラと床に落ち、何度か滑り台を作り直して漸く餌入れを満杯にする事が出来た。

 しかしケージの中にかなりうさぎの餌が散らばってしまった。

「うーん……まあ、仕方が無いか」

 こうやって世話をするうちにヨツバが俺を『餌をやる人』と認識するようになるかもしれない。そうすればいつかケージの中に手を入れて餌入れを取り出しても攻撃を受けずに済むようになるかもしれない。問題は―――それがいつ可能になるか、と言う事だが。

 俺に背を向けてガツガツと餌に齧り付くヨツバを暫くボンヤリと眺める。
まるでオッサンだな、と思う。さっきまで凶暴な側面は見えたものの、見た目だけなら可愛い小動物って印象に変化は無かった。だけど背を丸めてガッついている後ろ姿はまるで場末の食堂でチャーハンを掻っ込むオッサンみたいに見える。

 溜息を吐いて俺はスマホを手に取った。着信もSNSもメールも、連絡と名の付くものは何一つ届いていない。念のためメール問い合わせもしてみたが、お問合せセンターにも新しいメールは保管されていないようだった。

 ……ヨツバの写真を送ってみるか?

 もしかすると、みのりはヨツバの事を気にしているかもしれない。
 俺に背を向けてガツガツと餌を貪るオッサンのような背中を、スマホをかざして写真に収めた。撮ったばかりの写真を選択し『送信』を押そうとして……指を止める。

 ヤメダヤメダ、何だって俺がそんな事してやらなきゃならないんだ。
 気になるならあちらから連絡してくるのがスジってもんだ。何で俺の方がアイツのご機嫌を伺うみたいな真似、しなきゃならないって言うんだ……!

 ヨツバの世話はする。同じ部屋で息をしている生き物がぐったりしたり、万が一息絶えたりでもしたら目覚めが悪いからだ。だからそれは、仕方が無いんだ。今ヨツバの写真を撮ったのも、そうだ。みのりに連絡する為じゃない。もしアイツが連絡して来た時、俺がちゃんとヨツバの世話をしていたって証明するために撮ったんだ。
 そう、変に慌てて下手に出たら相手の思うつぼだ。みのりは俺を混乱させて優位に立とうとしているのかもしれない。じゃなきゃ、ちゃんと説明する筈だ。何も言わずに消えるなんて―――馬鹿な真似をするのは、たぶんそう言う理由に違いない。

 最初が肝心、と言うじゃないか。ここで俺が狼狽えて下手を打てば、結婚後の力関係が決まってしまう。だから―――どんなに気になっても、こっちから追っちゃ駄目だ。手紙にも書いてあるじゃないか『落ち着いたら』『戻ります』って。それにこれは、みのりに対する思い遣りでもある。独りになって考えたいって言うアイツの意志を尊重すべきだ。そうなんだ、それが一番良い選択肢の筈なんだ。

 込み上げる不安を抑えつけるように自分にそう言い聞かせた俺は、ふとケージに目を戻した。するとさっきまでガツガツと、それこそ男らしく餌を貪っていたヨツバが、餌入れから距離を取ってケージの端で丸くなっていた。まるで別人(兎)のように、大人しく置物化している。

「ヨツバ、もう満足したのか?」

 尋ねてみるが、当然応えは無い。片耳が僅かに持ち上がったように見えるが、これはひょっとして俺の声に耳を澄ませているのだろうか?それともこういう状態が普通なのか?……うーん、分からない。何せこれまで動物を飼った事も、飼おうと思った事すら無い。

 取りあえずスマホで検索してみるか。差し当たってはそう……『餌を残した時 うさぎ 対応』とか。

「……」

 チクタク、チクタク、チクタク……チーン!検索の結果出た答えはこうだ。



『うさぎが餌を残した場合―――次の餌やりの時まで残っていたら、古い分は取り除いてあげましょう』



 俺は手にしていたスマホをぼふっ!とソファに投げ捨てた……!

「結局、ケージに手を入れなきゃならねーんじゃねーかっ!」

 どうやら流血沙汰は避けられないらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


注!)上記検索結果は、主人公が短い時間検索した結果たまたま見つけた答え、と言う設定です。
 うさぎの飼い方、取り扱い方には日進月歩、諸説あります。そのうさぎの性格や体質、飼い主さんの暮らし向き、性格、お互いの関係性にも寄ります。
 また主人公・戸次はウサギ飼いとして今のところ初心者以前と言う設定ですので、これまでのお話の間うさぎに対してしてはいけない行動をとっており、無意識に地雷を幾つか踏んでいます。うさぎを扱う際は、決して戸次の真似をしないようお願い致します<(_ _)>

※お気づきかもしれませんが、念のため追記します。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。  後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。  香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。  一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。  しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...