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番外編・うさぎのきもち
66.花井さん3
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「は……花井さん?」
わけが分からな過ぎて、頭が真っ白になってしまう。
「花井さんとお前が何処で……?」
みのりは俺をジロリと睨み、それからフッと視線をずらすと溜息を吐いた。
「『戸次さんが好きなんです。いつも私の話を親身に聞いてくれる、大事な人なんです』って」
「なっ……」
「あ、『絶対諦めません』とも言ってたわ」
「……」
あまりの事に一瞬言葉を失う。
「俺は花井さんとは何も……」
「……邪魔者がいなくなったんだから、好きにしてるかと思った」
「……!……」
俺は思わず腰を浮かせた。
風間と偶然駅前で会ったと言うあの時、みのりは俺と花井さんがカフェで話していた所、それから花井さんに引き留められていた場面を目撃していたという。それを誤解しているなら、何としてもそれを解かなければと思ったのだ。
「……冗談よ」
みのりはチラリと立ち上がりかけた俺を一瞥してフッと苦笑を零した。俺は複雑な気分のまま腰を下ろす。
「広斗は私とのケリがつかないまま、次に手を付けるような事はしないでしょ?」
誤解されていなかったのだと分かって安堵が胸に拡がった。てっきり風間の語り口から、みのりは俺が花井さんとどうにかなっていると勘違いしたものと思い込んでいたのだ。信じて貰えていた、と言うことに軽く感動してしまう。
「みのり……」
「それに彼女、広斗の好みじゃないと思ったし。『うっかり一晩』ならあっても、付き合うとかはないでしょ」
「ぐっ……」
鳩尾にズシンと来る指摘に思わず呻いてしまう。
まるで心の中を読まれているみたいだ。花井さんの押せ押せアピールにグラリと来た俺の心の中まで、隣で見ていたかのような台詞にギクリとする。いや、あれは男の本能を刺激されてしまっただけで……それを押しとどめる事が出来た事をこそ、評価して貰いたいと言うか……無駄な言い訳を心の中で呟きつつ、俺はみのりに疑問をぶつけた。
「何で言ってくれなかったんだ?黙ってないで言ってくれれば……」
花井さんが裏でそんな真似をしているなんて知らなかった。知っていたら、今まで受けていた下らない相談や世間話も相手にしなかったのに。幾らなんでも俺に断りも無く、俺の彼女にそんな事を告げる相手と無駄話をしたいとは思わない。
「言い辛かったのよ」
みのりはフッとお茶に視線を落として、声を落とした。
「広斗がお風呂に入っている間に掛かって来た電話に出たの。『今シャワー中だから後で掛けさせる』って伝えようとして……そしたら彼女に、そう宣言されちゃって」
「つまり俺の電話に勝手に出たのが気まずかったってことか?でもそう言う理由なら、その時言ってくれれば別に……」
後ろ暗い所が無いから、勿論ロックなんか掛けていない。花井さんから来るSNSだって……今思うと結局アプローチの一環だったんだろうが、俺にとっては大した話題じゃ無かったんだ。確かにちょっと気まずいから自分から見せようとは思わないが。職場の若い女の子から懐かれてしている下らない遣り取りを、わざわざ自分の彼女に見せたいなんて思わない。だけど実際何もないんだから、見られたから困るってほどのものではない。
みのりは独り言のように、こう呟いた。その憂い顔を目にして、俺の胸はじわりと痛んだ。
「後から考えると……私、きっと気になっていたんだと思う。近頃よく広斗がスマホ弄っている相手のこと。きっとその子だと思って電話に出たから。無意識に……牽制したいって気持ちがあったのよ、たぶん」
みのりが、花井さんからの連絡を気にしているなんて思っていなかった。彼女はそう言う些細な事を気にするような女じゃないと思っていたし、気にしているなら率直に尋ねる性格だと思っていたからだ。
実際みのりはそう言うタイプだ。それに、彼女も自分は気にしていないと思っていたのだろう。
でも結局みのりがそう感じたのは正しかったのかもしれない。花井さんに告白されるまで理解していなかったが彼女は確かに俺に明確な興味を持って近づいていたのだから。
わけが分からな過ぎて、頭が真っ白になってしまう。
「花井さんとお前が何処で……?」
みのりは俺をジロリと睨み、それからフッと視線をずらすと溜息を吐いた。
「『戸次さんが好きなんです。いつも私の話を親身に聞いてくれる、大事な人なんです』って」
「なっ……」
「あ、『絶対諦めません』とも言ってたわ」
「……」
あまりの事に一瞬言葉を失う。
「俺は花井さんとは何も……」
「……邪魔者がいなくなったんだから、好きにしてるかと思った」
「……!……」
俺は思わず腰を浮かせた。
風間と偶然駅前で会ったと言うあの時、みのりは俺と花井さんがカフェで話していた所、それから花井さんに引き留められていた場面を目撃していたという。それを誤解しているなら、何としてもそれを解かなければと思ったのだ。
「……冗談よ」
みのりはチラリと立ち上がりかけた俺を一瞥してフッと苦笑を零した。俺は複雑な気分のまま腰を下ろす。
「広斗は私とのケリがつかないまま、次に手を付けるような事はしないでしょ?」
誤解されていなかったのだと分かって安堵が胸に拡がった。てっきり風間の語り口から、みのりは俺が花井さんとどうにかなっていると勘違いしたものと思い込んでいたのだ。信じて貰えていた、と言うことに軽く感動してしまう。
「みのり……」
「それに彼女、広斗の好みじゃないと思ったし。『うっかり一晩』ならあっても、付き合うとかはないでしょ」
「ぐっ……」
鳩尾にズシンと来る指摘に思わず呻いてしまう。
まるで心の中を読まれているみたいだ。花井さんの押せ押せアピールにグラリと来た俺の心の中まで、隣で見ていたかのような台詞にギクリとする。いや、あれは男の本能を刺激されてしまっただけで……それを押しとどめる事が出来た事をこそ、評価して貰いたいと言うか……無駄な言い訳を心の中で呟きつつ、俺はみのりに疑問をぶつけた。
「何で言ってくれなかったんだ?黙ってないで言ってくれれば……」
花井さんが裏でそんな真似をしているなんて知らなかった。知っていたら、今まで受けていた下らない相談や世間話も相手にしなかったのに。幾らなんでも俺に断りも無く、俺の彼女にそんな事を告げる相手と無駄話をしたいとは思わない。
「言い辛かったのよ」
みのりはフッとお茶に視線を落として、声を落とした。
「広斗がお風呂に入っている間に掛かって来た電話に出たの。『今シャワー中だから後で掛けさせる』って伝えようとして……そしたら彼女に、そう宣言されちゃって」
「つまり俺の電話に勝手に出たのが気まずかったってことか?でもそう言う理由なら、その時言ってくれれば別に……」
後ろ暗い所が無いから、勿論ロックなんか掛けていない。花井さんから来るSNSだって……今思うと結局アプローチの一環だったんだろうが、俺にとっては大した話題じゃ無かったんだ。確かにちょっと気まずいから自分から見せようとは思わないが。職場の若い女の子から懐かれてしている下らない遣り取りを、わざわざ自分の彼女に見せたいなんて思わない。だけど実際何もないんだから、見られたから困るってほどのものではない。
みのりは独り言のように、こう呟いた。その憂い顔を目にして、俺の胸はじわりと痛んだ。
「後から考えると……私、きっと気になっていたんだと思う。近頃よく広斗がスマホ弄っている相手のこと。きっとその子だと思って電話に出たから。無意識に……牽制したいって気持ちがあったのよ、たぶん」
みのりが、花井さんからの連絡を気にしているなんて思っていなかった。彼女はそう言う些細な事を気にするような女じゃないと思っていたし、気にしているなら率直に尋ねる性格だと思っていたからだ。
実際みのりはそう言うタイプだ。それに、彼女も自分は気にしていないと思っていたのだろう。
でも結局みのりがそう感じたのは正しかったのかもしれない。花井さんに告白されるまで理解していなかったが彼女は確かに俺に明確な興味を持って近づいていたのだから。
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