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捕獲しました。<亀田視点>
14.笑いません。
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当り障りの無い範囲で、三好と目黒、それぞれの誤解が解けるよう個別に説明を行った。
三好には企画課で受けたセクハラの件を人事課にある窓口に相談するか否かも確認した。
彼女は、今回相談はしないが、ただもし誰か他の女性社員が企画課長からセクハラを受けて問題になった場合は加勢の意味で相談するかもしれない、と述べるにとどまった。
三好には申し訳ないが、正直そう言ってくれてとても助かった。
セクハラ相談窓口と言っても、人事課長と人事課の女性の主任が一応そう言う役職に任命されているだけで、現在ほとんど機能していないのが現状だろう。もし三好が窓口に相談したとする。すると事情聴取や事実確認を行う事になると思うが―――その後営業課と企画課とギクシャクして揉めるかもしれない。一番年下の若造課長の俺の発言権なんて社内では無いに等しい。そういう問題では無いのは重々承知しているが、年上の幹部達は古い体質の男社会にどっぷり浸かった人間が多い。女性の部下を抑えられず、他の課の内情に口を出す若造……とますます軽んじられるかもしれない。結果営業課自体の発言権が弱くなって課内の人間にしわ寄せが行く未来が容易に想像できる。あまり人付き合いの上手じゃない俺は人脈が乏しい。人脈の乏しい俺は業績を上げる事でしかそう言う風当りに対抗できない。しかし大規模な人事異動後漸く課内が回り出した所だ。まだまだ現状維持が手一杯なのだ。
情けないなぁ、と思う。
課長と言っても実際はリーダーと言うより、課の社員達に助けられて何とかやっているだけの存在だと、改めて痛感している。平社員の時は、俺は結構仕事が出来る奴だった。頑張れば頑張るだけ成果を出せた。それが一旦役職を持つ立場になってしまうと、自分で仕事に直接手を出すわけにいかなくなる。何を頑張れば良いのか、部下それぞれにどんなアドバイスをするべきか、今手探りしている状態だ。俺の今までのやり方をそのまま教えたとして、それが ソイツに合うとは限らないから厄介だ。
その上、俺の方針や予想が―――外れる事もある。
だけど自信なさげに指示する課長の言う事なんて誰もききたくないだろう。だから七割の確信、三割の不安を持つ展望でも、自信あり気に言い切らなければならないと思う。……しかしこういう時に大事なのはさじ加減なのだろうな、とも思う。そういう強気な言い方をしなくても許されるキャラクターの人格者もいるのだろう。俺には全く出来る気はしないが。だけどもし……俺が「ちょっと自信ないかも、エヘへ」なんて言って頭を掻いたら、皆逆上するかもしれないな。キレてボコボコにされる気がする。それか気持ち悪がられるか。
そんな気弱な妄想が一瞬、頭をよぎる。
だから三好が「私はあの親父に仕事で! 仕返ししてやります!」と言って拳を固めたのを目にして、感動してしまった。
「お前……根性あるなぁ」
思わず口から本音がつるりと出てしまった。女性の部下なんて持ちたく無かった……なんてかつて思ったものだが、コイツはその辺の男より漢らしいかもしれない。
打合せテーブルの向かいで、三好が凛々しい表情で胸を張った。
「貧乏育ちですから、ちょっとやそっとじゃへこたれません! 学校も奨学金とってバイト掛け持ちして通いましたし! せっかく希望の職種の会社に就職して、最近やっと仕事ができる実感を持てるようになったばかりなんですから―――トコトンしがみつきますよ! まあ、この間は泣いたり怒ったりしちゃいましたが……」
そこで何故か三好のトーンが落ちる。
視線を打合せテーブルに落とし、気まずげに呟いた。
「あの……私、徐々に酔っぱらった時の記憶が戻って来まして……断片的なんですが。その~~亀田課長、すいませんでした。私愚痴ばっかり言って絡んで……完全な酔っ払いでしたよね」
何と三好はあの時の所業を思い出し始めていたらしい。
ショボンと肩を落とす様子と、先ほどまでの勇ましい雄々しさとの対比に思わず笑みが漏れた。
「ハハっ……お前、すっげえ怖かったぞ」
俺が声を出して笑うのが余程珍しかったのか、顔を上げた三好が固まった。
ポカンと大口を開けて動かなくなったので、俺は心配になって三好の顔を覗き込んだ。
「……大丈夫か? 三好」
「あっ……え、えと……は、はい!」
三好はワタワタと挙動不審な様子で手で顔を触ったり体をパタパタ撫でたりして―――やがてピタリと所定の位置、膝の上に両手を収め頷いた。
やはり俺には笑顔は似合わないらしい。俺は表情を引き締めた。会社ではなるべく浮ついた様子は見せない方が良いかもしれない。
眉間に力を込め―――俺は三好を睨みつけた。
「三好、じゃあ明日からまた遠慮なくビシバシしごくからな! ついて来いよ!」
「はい! 頑張ります!!」
こうして俺は、再び遠慮なく三好や目黒にビシビシ厳しく、ネチネチ細かく指導するようになったのであった。
三好には企画課で受けたセクハラの件を人事課にある窓口に相談するか否かも確認した。
彼女は、今回相談はしないが、ただもし誰か他の女性社員が企画課長からセクハラを受けて問題になった場合は加勢の意味で相談するかもしれない、と述べるにとどまった。
三好には申し訳ないが、正直そう言ってくれてとても助かった。
セクハラ相談窓口と言っても、人事課長と人事課の女性の主任が一応そう言う役職に任命されているだけで、現在ほとんど機能していないのが現状だろう。もし三好が窓口に相談したとする。すると事情聴取や事実確認を行う事になると思うが―――その後営業課と企画課とギクシャクして揉めるかもしれない。一番年下の若造課長の俺の発言権なんて社内では無いに等しい。そういう問題では無いのは重々承知しているが、年上の幹部達は古い体質の男社会にどっぷり浸かった人間が多い。女性の部下を抑えられず、他の課の内情に口を出す若造……とますます軽んじられるかもしれない。結果営業課自体の発言権が弱くなって課内の人間にしわ寄せが行く未来が容易に想像できる。あまり人付き合いの上手じゃない俺は人脈が乏しい。人脈の乏しい俺は業績を上げる事でしかそう言う風当りに対抗できない。しかし大規模な人事異動後漸く課内が回り出した所だ。まだまだ現状維持が手一杯なのだ。
情けないなぁ、と思う。
課長と言っても実際はリーダーと言うより、課の社員達に助けられて何とかやっているだけの存在だと、改めて痛感している。平社員の時は、俺は結構仕事が出来る奴だった。頑張れば頑張るだけ成果を出せた。それが一旦役職を持つ立場になってしまうと、自分で仕事に直接手を出すわけにいかなくなる。何を頑張れば良いのか、部下それぞれにどんなアドバイスをするべきか、今手探りしている状態だ。俺の今までのやり方をそのまま教えたとして、それが ソイツに合うとは限らないから厄介だ。
その上、俺の方針や予想が―――外れる事もある。
だけど自信なさげに指示する課長の言う事なんて誰もききたくないだろう。だから七割の確信、三割の不安を持つ展望でも、自信あり気に言い切らなければならないと思う。……しかしこういう時に大事なのはさじ加減なのだろうな、とも思う。そういう強気な言い方をしなくても許されるキャラクターの人格者もいるのだろう。俺には全く出来る気はしないが。だけどもし……俺が「ちょっと自信ないかも、エヘへ」なんて言って頭を掻いたら、皆逆上するかもしれないな。キレてボコボコにされる気がする。それか気持ち悪がられるか。
そんな気弱な妄想が一瞬、頭をよぎる。
だから三好が「私はあの親父に仕事で! 仕返ししてやります!」と言って拳を固めたのを目にして、感動してしまった。
「お前……根性あるなぁ」
思わず口から本音がつるりと出てしまった。女性の部下なんて持ちたく無かった……なんてかつて思ったものだが、コイツはその辺の男より漢らしいかもしれない。
打合せテーブルの向かいで、三好が凛々しい表情で胸を張った。
「貧乏育ちですから、ちょっとやそっとじゃへこたれません! 学校も奨学金とってバイト掛け持ちして通いましたし! せっかく希望の職種の会社に就職して、最近やっと仕事ができる実感を持てるようになったばかりなんですから―――トコトンしがみつきますよ! まあ、この間は泣いたり怒ったりしちゃいましたが……」
そこで何故か三好のトーンが落ちる。
視線を打合せテーブルに落とし、気まずげに呟いた。
「あの……私、徐々に酔っぱらった時の記憶が戻って来まして……断片的なんですが。その~~亀田課長、すいませんでした。私愚痴ばっかり言って絡んで……完全な酔っ払いでしたよね」
何と三好はあの時の所業を思い出し始めていたらしい。
ショボンと肩を落とす様子と、先ほどまでの勇ましい雄々しさとの対比に思わず笑みが漏れた。
「ハハっ……お前、すっげえ怖かったぞ」
俺が声を出して笑うのが余程珍しかったのか、顔を上げた三好が固まった。
ポカンと大口を開けて動かなくなったので、俺は心配になって三好の顔を覗き込んだ。
「……大丈夫か? 三好」
「あっ……え、えと……は、はい!」
三好はワタワタと挙動不審な様子で手で顔を触ったり体をパタパタ撫でたりして―――やがてピタリと所定の位置、膝の上に両手を収め頷いた。
やはり俺には笑顔は似合わないらしい。俺は表情を引き締めた。会社ではなるべく浮ついた様子は見せない方が良いかもしれない。
眉間に力を込め―――俺は三好を睨みつけた。
「三好、じゃあ明日からまた遠慮なくビシバシしごくからな! ついて来いよ!」
「はい! 頑張ります!!」
こうして俺は、再び遠慮なく三好や目黒にビシビシ厳しく、ネチネチ細かく指導するようになったのであった。
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