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捕獲しました。<亀田視点>
20.当社比1.5倍です。
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一応病院で処方されたパパイヤ酵素を与えてはみたものの、相変わらずミミはペレットに興味は無いようだ。後ろ髪を引かれつつ午後、会社へ出勤する。心なしか糞が小さくなっているような気がするし、相変わらずペレットは食べないし……何だか食欲も落ちて来ている気がする。
病院では特に何も言われなかったものの気持ちはあまりスッキリせず、通勤途中の電車の中で急に不安になっていつの間にかスマホでウサギに詳しそうな病院を探してしまっていた。
今日掛かった病院も、ネットの口コミでは評判は良かったしウサギや小動物の診察もやっていると書いてあった。が、やはりいまいち診察結果に納得が行かないのだ。物凄く悪い、という訳では無いのだが、しっくり来ないと言うか……ただ相性が悪いだけなのかもしれない、考え過ぎなのかもしれないが。
実際行ってみると比較的大きな病院で、待合室には沢山の診察を待つペットと飼い主がひしめいていたのだが―――何となく対応に違和感があって掛かった傍から落ち着かない気持ちになってしまったのだ。
人気はあるようなので、やはり完全に相性の問題なのかもしれない。だけどもし、あの病院がウサギにはそれほど詳しく無いけれど一応看板にウサギも対象と掲示しているだけだとしたら?
あと一件だけ、金曜日我慢して様子を見て―――もう少し小さな病院に行っても良いのではないか。ウサギだって人間と同じように診察に納得が行かなければ、セカンドオピニオンに掛かっても良いのではないかと、俺は考え始めていた。
休んでしまった分、仕事は山積みになっていてミミの事を心配している暇が無いほど忙しく働いた。
俺は契約社員にはそれほど厳しく接しないよう自分を律しているつもりなのだが、正社員に対する態度を見るだけで彼等はビビりまくってしまうらしい。
少し張り詰め過ぎたと気が付いて自販機にコーヒーを買いに行こうとした途中、給湯室の中から営業課に所属している派遣の女子社員のこんな話し声が聞こえて来たのだ。
「今日の課長、スッゴく怖く無い?」
「うん、当社比1.5倍くらいコワモテ度アップしてるわ~」
「あれは無いよね、三好さんに対する態度。もっと優しく言えないのかなぁ」
「正社員だと女も男も関係ないんじゃない? あれ見たら課長、私達にはまだ優しくしてるんだって思ったもの」
「ホントにね!私契約社員で良かったと初めて思ったよ~。仕事ばっかりしてないで、やっぱ結婚相手探さないと……!」
「じゃあ……課長独身だから、狙っちゃえば?」
「無理!ビジュアルが良くてもあれは無いわ~。ちょっと女性の扱い方、学んだ方が良いんじゃない?」
「確かに……!」
キャハハ……! と笑い声が響いた。
それにしても女性の会話の応酬のスピードが半端無い。課内で話す時はおっとり大人しい彼女達の口が、給湯室では五倍速くらいの速さで回っている。立ち去ろうとした瞬間に、もうこれだけの遣り取りが一瞬で終わってしまった。……お陰で聞きたくない結論まで耳に入ってしまったではないか。
確かに今日は仕事に没頭するあまり、いつもより鬼気迫る雰囲気が出てしまったかもしれない。そう言えば応対する部下達の態度にも、若干いつもより緊張が漲っていた気がする。
昔ならこんな場面でグッサリと傷ついていた所だが―――今はあまり気にならない。コワモテ度が何倍になろうと、仕事はザクザク片付けないと行けないからだ。それにもう俺はミミに出会って、女性と上手くやって行けない事についてアレコレ悩まなくなった。一生独身だろうがどうでも良い。ミミさえ健康でいてくれたならそれでいいんだ。
病院では特に何も言われなかったものの気持ちはあまりスッキリせず、通勤途中の電車の中で急に不安になっていつの間にかスマホでウサギに詳しそうな病院を探してしまっていた。
今日掛かった病院も、ネットの口コミでは評判は良かったしウサギや小動物の診察もやっていると書いてあった。が、やはりいまいち診察結果に納得が行かないのだ。物凄く悪い、という訳では無いのだが、しっくり来ないと言うか……ただ相性が悪いだけなのかもしれない、考え過ぎなのかもしれないが。
実際行ってみると比較的大きな病院で、待合室には沢山の診察を待つペットと飼い主がひしめいていたのだが―――何となく対応に違和感があって掛かった傍から落ち着かない気持ちになってしまったのだ。
人気はあるようなので、やはり完全に相性の問題なのかもしれない。だけどもし、あの病院がウサギにはそれほど詳しく無いけれど一応看板にウサギも対象と掲示しているだけだとしたら?
あと一件だけ、金曜日我慢して様子を見て―――もう少し小さな病院に行っても良いのではないか。ウサギだって人間と同じように診察に納得が行かなければ、セカンドオピニオンに掛かっても良いのではないかと、俺は考え始めていた。
休んでしまった分、仕事は山積みになっていてミミの事を心配している暇が無いほど忙しく働いた。
俺は契約社員にはそれほど厳しく接しないよう自分を律しているつもりなのだが、正社員に対する態度を見るだけで彼等はビビりまくってしまうらしい。
少し張り詰め過ぎたと気が付いて自販機にコーヒーを買いに行こうとした途中、給湯室の中から営業課に所属している派遣の女子社員のこんな話し声が聞こえて来たのだ。
「今日の課長、スッゴく怖く無い?」
「うん、当社比1.5倍くらいコワモテ度アップしてるわ~」
「あれは無いよね、三好さんに対する態度。もっと優しく言えないのかなぁ」
「正社員だと女も男も関係ないんじゃない? あれ見たら課長、私達にはまだ優しくしてるんだって思ったもの」
「ホントにね!私契約社員で良かったと初めて思ったよ~。仕事ばっかりしてないで、やっぱ結婚相手探さないと……!」
「じゃあ……課長独身だから、狙っちゃえば?」
「無理!ビジュアルが良くてもあれは無いわ~。ちょっと女性の扱い方、学んだ方が良いんじゃない?」
「確かに……!」
キャハハ……! と笑い声が響いた。
それにしても女性の会話の応酬のスピードが半端無い。課内で話す時はおっとり大人しい彼女達の口が、給湯室では五倍速くらいの速さで回っている。立ち去ろうとした瞬間に、もうこれだけの遣り取りが一瞬で終わってしまった。……お陰で聞きたくない結論まで耳に入ってしまったではないか。
確かに今日は仕事に没頭するあまり、いつもより鬼気迫る雰囲気が出てしまったかもしれない。そう言えば応対する部下達の態度にも、若干いつもより緊張が漲っていた気がする。
昔ならこんな場面でグッサリと傷ついていた所だが―――今はあまり気にならない。コワモテ度が何倍になろうと、仕事はザクザク片付けないと行けないからだ。それにもう俺はミミに出会って、女性と上手くやって行けない事についてアレコレ悩まなくなった。一生独身だろうがどうでも良い。ミミさえ健康でいてくれたならそれでいいんだ。
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