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捕獲されまして。<大谷視点>
11.捕獲されまして。
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古いがまあまあシッカリした作りの鉄骨三階建てアパートの最上階。広さはユニットバス付き1Kの約四畳。だけど一畳大の押入れ収納が付いていて其処に必要なものを収めているから、独り暮らしならそんなに不自由はない。何より山手線池袋駅に徒歩五分の立地。中野にある会社に三十分以内で通える交通の便の良さ。家賃も手頃だし、いつかは正社員を目指したいと思っているけれども、派遣の内はここで十分満足だなぁ……なんて思っている。
「ど、どうぞ」
男の人を家に入れた事が無かったから、緊張してしまう。
ああ、今日私……もしかして、とうとう一線を越えてしまうのだろうか? いやいやまさか、初日から其処までは……! でももし万が一そんな事があっても……構わないってくらいには絆されてしまっている自分がいる。
お酒の所為でよく働かない頭で、ボンヤリとそう考えた。
先ほど最寄り駅で待ち伏せを受け、情熱的な壁ドンで告白を受けた私は―――あっさり亀田課長を独り暮らしのアパートに招き入れてしまったのだ。
元カレと別れて以来、うータンに癒されれる楽しい日々をこの部屋で過ごして来た。
でもね、やっぱり女として生まれて来たからには―――愛するばかりじゃなくて、愛されてもみたい。そんな欲求がある事に―――今日気が付かされたのだ。
亀田課長が思い詰めるほどに私に夢中だったなんて。
じゃあ、最近のくらーい雰囲気は私の所為?いや、それは違うだろう……じゃあ、辛い事があって愛する私に癒されたいと……そんな切羽詰まった欲求が爆発してしまったのだろうか。
ペコリと頭を下げて靴を脱ぎ、大きな男が入って来た。
やっぱデカい。私の部屋……せっま!
普段それほど狭く感じないのに、彼がいるだけでスッゴく狭い空間に感じてしまう。一気に人口密度、二倍だもんね。そりゃ狭く感じるかぁ。
でも何だかそんな事も、ちょっと嬉しく感じてしまう。
私ってチョロい。チョロ過ぎるな……。とニヤニヤしながらそんな事を考えた。
「ここ、座ってください。麦茶入れますね」
「ああ、有難う」
私が小さい丸テーブルの横に座布団を置くと、彼は素直にそこに腰を下ろした。
キチンと正座をしてキョロキョロと物珍し気に部屋の中に視線を走らせている。
緊張しているのかな?
そう思うと普段正確無比な機械みたいに思っている課長の、人間味のある部分を見たような気がして可笑しくなった。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
ペットボトルのお茶をコップに入れて、一応お菓子を皿に出して一緒に出す。
亀田課長の向かいに腰を下ろし―――顔を上げる。妙にソワソワしているのを見て、笑ってしまった。一気に私の体に残っていた緊張が解れる音がした。
「あの……もしかして緊張してるんですか」
「あ、ああ」
「狭いし片付いていないんで、あんまり見ないでいただけると嬉しいんですが」
「……」
するとピタリと彼の視線が私の方向で固定された。
精悍な視線にドキリと心臓が跳ねる。
やっぱこの人、顔整っているわ~。
黙っていればカッコイイのになぁ……。
ポーッと見返していると、その視線が私の目線と合っていない事に気が付いた。
「ん?」
彼の視線を辿ってみる。
僅かに私の横を通り過ぎて……後ろの方を見ている。
先ほど帰って来た時に布で覆った大きなケージ。
視線を辿って其処に行き付き、またその視線を辿り返して亀田課長の整った相貌に辿り着いた。彼の視線は……其処にジッと釘付けになっている。
「……課長?」
「……」
「課長?」
「え?」
「どうしました?何か気に掛かる事でも?」
ひょっとして見慣れない大きな物が気にかかるのだろうか?
「その……」
亀田課長は一瞬躊躇って視線を逸らし、それから真剣な表情で私を見つめた。
「後ろの……物は……?」
「はい?」
「やはり……飼っているのだろう?」
喘ぐように呟く亀田課長の様子が変だ。
ひょっとして……あっ! もしかしてアレルギー持ち、とか?
ウサギの毛が駄目だとか、そう言う人がいるって聞いた事がある。掃除はマメにしているつもりだけど……そう言う体質の人は同じ部屋にいるだけでも辛いのかもしれない。
「スイマセン、飼ってます! もしかして、アレルギーですか?」
「いや……アレルギーでは。その……良かったら見せてくれないか? その……」
ゆっくりと腕を持ち上げて、ケージを指さす亀田課長。
その指先が心無しか震えている。ひょっとして動物が苦手なの?
でもウサギ苦手って人は、少なそう。何かもっと違う動物だと思っているのかな?
「あ、はい。その、大丈夫ですよ、噛んだりするような動物じゃなくて、ウサギですから」
「……!」
亀田課長の目が大きく見開かれた。
何だろう……そんなに驚く事だろうか?
私は訝しく思いながら、彼の要求通りにケージに掛けた布を取り払った。
「うータン、ゴメンね?寝てたかな?」
そう囁いて、顔を上げてヒクヒク鼻をうごめかせる、白い毛糸球に目を細めた。
「ね? 怖くないですよ……」
と振り向いた私の顔に影が掛かった。
立ち上がった亀田課長が、部屋の灯りを背に立ち竦んでいたからだ。
音もなく一気に距離を詰められた私は―――驚きの余り声も出せずに固まったのだった。
「ど、どうぞ」
男の人を家に入れた事が無かったから、緊張してしまう。
ああ、今日私……もしかして、とうとう一線を越えてしまうのだろうか? いやいやまさか、初日から其処までは……! でももし万が一そんな事があっても……構わないってくらいには絆されてしまっている自分がいる。
お酒の所為でよく働かない頭で、ボンヤリとそう考えた。
先ほど最寄り駅で待ち伏せを受け、情熱的な壁ドンで告白を受けた私は―――あっさり亀田課長を独り暮らしのアパートに招き入れてしまったのだ。
元カレと別れて以来、うータンに癒されれる楽しい日々をこの部屋で過ごして来た。
でもね、やっぱり女として生まれて来たからには―――愛するばかりじゃなくて、愛されてもみたい。そんな欲求がある事に―――今日気が付かされたのだ。
亀田課長が思い詰めるほどに私に夢中だったなんて。
じゃあ、最近のくらーい雰囲気は私の所為?いや、それは違うだろう……じゃあ、辛い事があって愛する私に癒されたいと……そんな切羽詰まった欲求が爆発してしまったのだろうか。
ペコリと頭を下げて靴を脱ぎ、大きな男が入って来た。
やっぱデカい。私の部屋……せっま!
普段それほど狭く感じないのに、彼がいるだけでスッゴく狭い空間に感じてしまう。一気に人口密度、二倍だもんね。そりゃ狭く感じるかぁ。
でも何だかそんな事も、ちょっと嬉しく感じてしまう。
私ってチョロい。チョロ過ぎるな……。とニヤニヤしながらそんな事を考えた。
「ここ、座ってください。麦茶入れますね」
「ああ、有難う」
私が小さい丸テーブルの横に座布団を置くと、彼は素直にそこに腰を下ろした。
キチンと正座をしてキョロキョロと物珍し気に部屋の中に視線を走らせている。
緊張しているのかな?
そう思うと普段正確無比な機械みたいに思っている課長の、人間味のある部分を見たような気がして可笑しくなった。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
ペットボトルのお茶をコップに入れて、一応お菓子を皿に出して一緒に出す。
亀田課長の向かいに腰を下ろし―――顔を上げる。妙にソワソワしているのを見て、笑ってしまった。一気に私の体に残っていた緊張が解れる音がした。
「あの……もしかして緊張してるんですか」
「あ、ああ」
「狭いし片付いていないんで、あんまり見ないでいただけると嬉しいんですが」
「……」
するとピタリと彼の視線が私の方向で固定された。
精悍な視線にドキリと心臓が跳ねる。
やっぱこの人、顔整っているわ~。
黙っていればカッコイイのになぁ……。
ポーッと見返していると、その視線が私の目線と合っていない事に気が付いた。
「ん?」
彼の視線を辿ってみる。
僅かに私の横を通り過ぎて……後ろの方を見ている。
先ほど帰って来た時に布で覆った大きなケージ。
視線を辿って其処に行き付き、またその視線を辿り返して亀田課長の整った相貌に辿り着いた。彼の視線は……其処にジッと釘付けになっている。
「……課長?」
「……」
「課長?」
「え?」
「どうしました?何か気に掛かる事でも?」
ひょっとして見慣れない大きな物が気にかかるのだろうか?
「その……」
亀田課長は一瞬躊躇って視線を逸らし、それから真剣な表情で私を見つめた。
「後ろの……物は……?」
「はい?」
「やはり……飼っているのだろう?」
喘ぐように呟く亀田課長の様子が変だ。
ひょっとして……あっ! もしかしてアレルギー持ち、とか?
ウサギの毛が駄目だとか、そう言う人がいるって聞いた事がある。掃除はマメにしているつもりだけど……そう言う体質の人は同じ部屋にいるだけでも辛いのかもしれない。
「スイマセン、飼ってます! もしかして、アレルギーですか?」
「いや……アレルギーでは。その……良かったら見せてくれないか? その……」
ゆっくりと腕を持ち上げて、ケージを指さす亀田課長。
その指先が心無しか震えている。ひょっとして動物が苦手なの?
でもウサギ苦手って人は、少なそう。何かもっと違う動物だと思っているのかな?
「あ、はい。その、大丈夫ですよ、噛んだりするような動物じゃなくて、ウサギですから」
「……!」
亀田課長の目が大きく見開かれた。
何だろう……そんなに驚く事だろうか?
私は訝しく思いながら、彼の要求通りにケージに掛けた布を取り払った。
「うータン、ゴメンね?寝てたかな?」
そう囁いて、顔を上げてヒクヒク鼻をうごめかせる、白い毛糸球に目を細めた。
「ね? 怖くないですよ……」
と振り向いた私の顔に影が掛かった。
立ち上がった亀田課長が、部屋の灯りを背に立ち竦んでいたからだ。
音もなく一気に距離を詰められた私は―――驚きの余り声も出せずに固まったのだった。
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