捕獲されました。

ねがえり太郎

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捕獲されまして。<大谷視点>

32.助かりました。

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とは言ったものの、亀田課長に悪気が無いのは伝わっていた。
つまり彼が私を三好さんの攻撃から庇って、非難を自分に向けさせようとした事だけは間違いないのだ。

「だけど助かりました。私一人だと三好さんから責められても何も言えずに益々拗れるだけになってしまったかもしれません」

まあ、結局拗れ切っちゃったけどね。
でももう三好さんが私に詰め寄って来る事は無いだろう。ただ嫌われちゃったかもしれないから、彼女が今後どんな態度で接して来るのか予想が付かないけれども。

「亀田課長……ウサギの話を避けたい気持ちも、私を庇おうとしてくれた事も分かったんですが……あそこまで話したら、全部話しちゃっても良かったんじゃないですか……?」

亀田課長はすっかり脱力した様子で、さっきまで三好さんが座っていた私の正面のソファにドッと腰を下ろした。ソファの背面に背中を預けてフーッと溜息を吐く。

「いや、その通りだ。俺も正直に話そうとしたんだ。先ずは大谷への誤解を解いてから打ち明けようと思っていたんだが……やっぱり思い出すのもツラい事だから口が重くなってしまったんだな、話そうとしたんだが……そしたら三好がすっかり怒り心頭で逆上しちゃっただろ?……その、あそこまで怒りを向けられると、今更ウサギの話を出しても益々嘘くさいと言われるかと……」
「うーん、確かに」

確かに三好さんの『幻滅しました』宣言の後に、亀田課長が狼狽えた様子で『ウサギが云々……』などと言い出したら更に逆上しそうな雰囲気ではあった。

「それにウサギがどうのこうの……と言ったって、事実は変わらないんだ。俺が勝手に大谷の家に押し掛けたのも事実だし、大谷が咄嗟にうータンを自分の友達だと言ったのも、俺を庇っての事って言うのは嘘では無いし。その理由がペットだと説明した所で三好の怒りの矛先が収まるとも思えない」
「それはどうか……分かりませんけど……」

三好さんの怒りの理由が女としての嫉妬なら―――怒りは収まるかもしれない。そりゃ親しく家に通っていたと言う事実は許しがたいかもしれないけれども。しかし声を大にして言いたい、三好さんの嫉妬の矛先は私では無く、うータンに向けられるべきだと。……いや大事なうータンを三好さんに差し出したりはしないけどね。
でも三好さんが口で言ったとおり、セクハラに対する怒りや正義感で彼女が亀田課長の行動を責めているのだとしたら―――ウサギがどうしたこうしたと同情を誘ったとしても、怒りの火に油を注ぐだけになってしまった可能性もある。



「―――あ~……ウサギ成分、補充したい……」



亀田が魂が抜けたように、遠い目をして呟いた。
何となく同情心が湧き上がって来たが、チラリと私に伺う視線を送った亀田に向かって―――静かに首を振ってみせる。

「止めときましょ。もし、三好さんにまた見咎められたら、きっと『幻滅』どころじゃ済まなくなりますよ」
「……」

だってあんなに彼女が怒った後でも懲りずに私に迫る上司だと思われたら、仕事の遣り取りにも支障がでるだろうし……もう、手遅れかもしれないけれど。

勿論私はしっかり、うータンに癒して貰うつもりだけどね。飼い主ですから。

「……コーヒー買ってくる。せめてそれ飲み終わるまで付き合ってくれ」

弱々しく呟くから、気の毒になってしまいコクリと頷いた。
すると亀田は疲れた様子でヨロヨロと立ち上がり、注文カウンターへと歩いて行ったのだった。

それから亀田が気を使って買ってくれたチョコレートチャンククッキーをペロリと平らげ、黙りこくったまま二人でドリンクを飲み干して―――大人しくそれぞれ家路を辿ったのだった。別れた後の亀田の背中が煤けて見えたのは気のせいじゃないかもしれない。こんな風に今までの女性ともすれ違って来たのだろうか、とふと考えた。



でも気の毒だけど、私も疲れた。
うータン、今帰るからね!頼む、疲れ切った私を、癒してくれ~~!!!

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