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捕まりました。<亀田視点>
1.気付きました。
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大谷視点『捕獲されまして』の裏側、亀田視点となります。
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うさぎ天国と言っても良いくらい、うさぎだらけのペットショップに長居をした後、大谷のじーさんから指令が下った。いわく『商店街に寄って注文済みのメンチカツを引き取って来るように』とのこと。何でもこの辺りではちょっと有名で、大谷もそのメンチカツが大好きなのだと言う。
暫くすると停車した車に、じーさん指定の品が入った紙袋を手にした大谷が飛び込んで来た。すると如何にも美味しそうな香ばしい匂いが、フワンと車内に拡がる。車を再び走らせると、助手席の大谷が楽しそうに鼻歌を歌い始めた。
聞き覚えがある旋律に、思わず思考が停止する。
これ……ひょっとして『笑天』のオープニングじゃないか?
噴き出しそうになったが、本人が鼻歌を歌っている事に気付いていないような気がして……指摘しようかどうか迷う。迷っている内に自然に鼻歌が止んだ。
思わず口が笑ってしまう。コイツは本当に何でこんなに面白いんだろう?こんな奴だなんて、仕事場での真面目で賢明な様子を見る限り―――全く分からなかった。俺ってやっぱ女を見る目が無いのだろうか?女性の本性を見抜く力が弱すぎるのかもしれない。改めてそう思った。
大きな道に出て暫く進んだ頃、徐に大谷が口を開いた。
「あのですね、課長?さっきのお店で……気に入った仔、いましたか?」
『気に入った仔』ねぇ……やっぱり子ウサギは天使以外の何モノでもないよな。フワフワで柔らかくて……瞳はプリプリのウルウル。ネザーランドドワーフをあんなにたくさん目にしたのは初めてだが、やはり詰まった鼻と丸い頭、短い耳はぬいぐるみそのもので……
「え?そうだな、しいて言えば……どの仔も皆、可愛かったな」
「新しい仔……飼いたくなりませんか?」
大谷の言葉に思わず息を飲んでしまった。
『新しい仔』?
どういう意図で大谷はそう言ったのだろう。
いや、分かっている。ミミとの別離にいつまでも捕らわれるのは止めて、新しいうさぎを迎えた方が良い……そう、大谷は提案しているのだ。
実際うータンに癒された日々で、辛く悲しい感情しか呼び起こさなかったミミとの別れの記憶はすこしづつ形を変えつつあり、悲しみで塗りつぶされていたそれ以前の―――ミミとの楽しい日々を思い起こせるようになって来た。
俺の心の傷を癒すためには、新しいうさぎを迎えるのが一番効果的なのだろう。
そう、今のままでは大谷にも迷惑を掛けっ放しだ。
大谷だって予定があるだろう。休みに押し掛けたり、平日の夜に部屋に上がり込んだりするのは明らかに迷惑行為なのだと……気持ちが落ち着いた今なら、容易に判断できる。
現に大谷は全く後ろ暗い所も無いのに、三好に絡まれてしまった。これが迷惑でなくてなんなのだろうか。本当はその時点で、俺は大谷とうータンから手を引いた方が良かったのだ。だけど何となく離れがたくて―――大谷に誘われて、彼女のじーさんの家までホイホイ付いて来てしまった。
―――大谷が、ズバズバ明け透けに気持ちをぶつけてくれるから、何だか遠慮されるよりずっと……彼女が許容してくれている、そんな気分になってしまうのだ。気の置けない関係になったような。
実際はと言えば。大谷にとって、この関係は望んで結んだ物では無い。なのに、彼女が受け入れてくれ、そしてこの関係を心底楽しんでくれるのだと……考えたがる自分がいる。
初めて出会ったうさぎ好き仲間、大谷との会話は本当に楽しい。
分かり合える仲間がいるってこんなに心が満たされるものなのか、と―――目から鱗が落ちるような気持ちになる事が何度もあった。
大谷の家でうさぎ成分を補充し楽しい時間を過ごした後の帰り道は、スキップでもしたくなるくらい心が軽い。本心では……帰りたくないくらい、後ろ髪を引かれてしまっている。そしてついつい長居をしてしまう事もあった。他人の家でこんなに寛いで、しかも帰りたくないなんて気持ちになったのは―――俺にとって初めての経験だ。
それに大谷は―――本当に楽しくて面白い奴なのだ。
考えている事が時々透けて見えるかと思うくらい顔に出ている時がある。仕事場では真面目な顔と落ち着いた態度を貫いていて、実際の年より大人びた印象を受けるくらいなのに。自室で寛ぎつつ無防備にうさぎの話をする素の大谷は、表情が豊かで口が悪くて―――いい加減で、それでいて人情に厚くて人を断れない優しい所もあって……。
新しい仔を家に迎えたら―――そんな大谷に会う口実が無くなってしまう。
俺は自分の思考に打ちのめされた。
何と言う事だ―――いつの間にか、俺の目的はうータンだけでは無くなっていたのだ。
実は薄々気が付いては、いた。
けれどもその時ハッキリと……俺はそう、自覚してしまったのだった。
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うさぎ天国と言っても良いくらい、うさぎだらけのペットショップに長居をした後、大谷のじーさんから指令が下った。いわく『商店街に寄って注文済みのメンチカツを引き取って来るように』とのこと。何でもこの辺りではちょっと有名で、大谷もそのメンチカツが大好きなのだと言う。
暫くすると停車した車に、じーさん指定の品が入った紙袋を手にした大谷が飛び込んで来た。すると如何にも美味しそうな香ばしい匂いが、フワンと車内に拡がる。車を再び走らせると、助手席の大谷が楽しそうに鼻歌を歌い始めた。
聞き覚えがある旋律に、思わず思考が停止する。
これ……ひょっとして『笑天』のオープニングじゃないか?
噴き出しそうになったが、本人が鼻歌を歌っている事に気付いていないような気がして……指摘しようかどうか迷う。迷っている内に自然に鼻歌が止んだ。
思わず口が笑ってしまう。コイツは本当に何でこんなに面白いんだろう?こんな奴だなんて、仕事場での真面目で賢明な様子を見る限り―――全く分からなかった。俺ってやっぱ女を見る目が無いのだろうか?女性の本性を見抜く力が弱すぎるのかもしれない。改めてそう思った。
大きな道に出て暫く進んだ頃、徐に大谷が口を開いた。
「あのですね、課長?さっきのお店で……気に入った仔、いましたか?」
『気に入った仔』ねぇ……やっぱり子ウサギは天使以外の何モノでもないよな。フワフワで柔らかくて……瞳はプリプリのウルウル。ネザーランドドワーフをあんなにたくさん目にしたのは初めてだが、やはり詰まった鼻と丸い頭、短い耳はぬいぐるみそのもので……
「え?そうだな、しいて言えば……どの仔も皆、可愛かったな」
「新しい仔……飼いたくなりませんか?」
大谷の言葉に思わず息を飲んでしまった。
『新しい仔』?
どういう意図で大谷はそう言ったのだろう。
いや、分かっている。ミミとの別離にいつまでも捕らわれるのは止めて、新しいうさぎを迎えた方が良い……そう、大谷は提案しているのだ。
実際うータンに癒された日々で、辛く悲しい感情しか呼び起こさなかったミミとの別れの記憶はすこしづつ形を変えつつあり、悲しみで塗りつぶされていたそれ以前の―――ミミとの楽しい日々を思い起こせるようになって来た。
俺の心の傷を癒すためには、新しいうさぎを迎えるのが一番効果的なのだろう。
そう、今のままでは大谷にも迷惑を掛けっ放しだ。
大谷だって予定があるだろう。休みに押し掛けたり、平日の夜に部屋に上がり込んだりするのは明らかに迷惑行為なのだと……気持ちが落ち着いた今なら、容易に判断できる。
現に大谷は全く後ろ暗い所も無いのに、三好に絡まれてしまった。これが迷惑でなくてなんなのだろうか。本当はその時点で、俺は大谷とうータンから手を引いた方が良かったのだ。だけど何となく離れがたくて―――大谷に誘われて、彼女のじーさんの家までホイホイ付いて来てしまった。
―――大谷が、ズバズバ明け透けに気持ちをぶつけてくれるから、何だか遠慮されるよりずっと……彼女が許容してくれている、そんな気分になってしまうのだ。気の置けない関係になったような。
実際はと言えば。大谷にとって、この関係は望んで結んだ物では無い。なのに、彼女が受け入れてくれ、そしてこの関係を心底楽しんでくれるのだと……考えたがる自分がいる。
初めて出会ったうさぎ好き仲間、大谷との会話は本当に楽しい。
分かり合える仲間がいるってこんなに心が満たされるものなのか、と―――目から鱗が落ちるような気持ちになる事が何度もあった。
大谷の家でうさぎ成分を補充し楽しい時間を過ごした後の帰り道は、スキップでもしたくなるくらい心が軽い。本心では……帰りたくないくらい、後ろ髪を引かれてしまっている。そしてついつい長居をしてしまう事もあった。他人の家でこんなに寛いで、しかも帰りたくないなんて気持ちになったのは―――俺にとって初めての経験だ。
それに大谷は―――本当に楽しくて面白い奴なのだ。
考えている事が時々透けて見えるかと思うくらい顔に出ている時がある。仕事場では真面目な顔と落ち着いた態度を貫いていて、実際の年より大人びた印象を受けるくらいなのに。自室で寛ぎつつ無防備にうさぎの話をする素の大谷は、表情が豊かで口が悪くて―――いい加減で、それでいて人情に厚くて人を断れない優しい所もあって……。
新しい仔を家に迎えたら―――そんな大谷に会う口実が無くなってしまう。
俺は自分の思考に打ちのめされた。
何と言う事だ―――いつの間にか、俺の目的はうータンだけでは無くなっていたのだ。
実は薄々気が付いては、いた。
けれどもその時ハッキリと……俺はそう、自覚してしまったのだった。
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