捕獲されました。

ねがえり太郎

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続々・うさぎ小話

うさぎの好きなところ

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大谷視点のうさぎ小話。別のうさぎ話を考えていて思いついたので投稿します。山もオチも無い、ごく短いおまけ話です。


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うーたんと私、とうとう仙台の新居にやって来ました。

引っ越し作業が終了し二週間ほどが経過したと言うのにうータンはなかなかケージの外へ踏み出そうとしない。けれどもそろそろ気持ちが落ち着いて来たような気がする。穏やかな雰囲気が彼女の周りに漂い始めたような気がするんだ。
今日こそ『へやんぽ』させようとケージを解放。それでも暫くの間慣れない場所を警戒するようにケージから出て来なかったうータンだけど、やがてゆっくりと天岩戸から這い出て来る神様ようにケージの外に踏み出して来た。

「出て来たな」

やった!と声が出そうになったが、叫び声を上げて彼女を驚かせたくないから心の中で呟くにとどめた。

あまり注目しているとうータンの負担になるかもしれない、と私と丈さんはソファで読書をする振りを装っていた。丈さんは仕事関連の本、私は仙台市のガイドブックで美味しいお店を物色中。やっぱり、まずは牛タン専門店かなぁ?……なんて呟きながらもしっかり意識は白いうさぎに集中している。うータンは鼻をヒクヒクさせて、この新しく映ったお城に敵になる物がいないか、危ない物は無いか慎重に調査しているようだ。スクッと後足で立ち上がり、鼻先を上げてヒクヒク。かと思うと姿勢を低くし長い耳をピン!と立てて、レーダーのようにあちらこちらからの音を集音すべく耳を澄ませている。

「最初はあんなに用心深いのに、慣れると油断し過ぎってくらいダランとするところが良いよな」

丈さんがポツリと呟くのを聞いて、私はコクリと同意を示して頷いた。

「ギャップにやられるよね。ギャップと言えば……うさぎの尻尾って見た目は丸いのに中身が細長い所が良いよね」
「確かに。あれはいつ触っても不思議な気持ちになるな」

丈さんも同意見らしい。ソファの隣で頷く気配を感じる。相変わらず私達は目線を本に落としている素振りを続けている。元来草食動物のうさぎは臆病な性質だ。うータンに余計な負担を掛けたくない。まるで調査対象を監視する探偵みたいに知らない素振りを装いつつうータンを横目で観察し、彼女を驚かせないよう低い声で会話を交わす。

「尻尾を触れる時って、うータンが最高に油断している時だよね。頭から背中までずーっと触って最後に尻尾まで辿り着いてから、こう、尻尾の細長い感触をコリコリっと指で触るのが好きなんだよね……うータンがこのマンションに慣れるまでそっとしておこうって思っているから、最近触れてないなぁ……あー早く触りた~い!」

私は思わずコリコリ尻尾を触る仕草をしながら、うっとりと妄想を垂れ流してしまう。
するとその様子をうっかり目に映してしまった丈さんは、耐えきれなくなったように噴き出した。



途端にその笑い声に驚いたうータンが、猛ダッシュでケージに戻ってしまった!突然大きな音が響いて吃驚してしまったらしい。



私達はお互い目を見交わした。唇に人差し指をあて沈黙の合図を送ると、丈さんは神妙な表情でコクリと頷きを返して来る。―――それから私達はまた、風景に同化するべく大人しく読書に勤しんだのであった。


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仙台での同居後のお話です。
お読みいただき、有難うございました。
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