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第十話:完成する鳥籠
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俺が「君主を退位する」と告げてから。帝国の空気は急速に変わり始めた。
それは決して俺が望んだ「解放」ではなく、重苦しく、逃れようのない圧迫感に満ちたものだった。
公務は徐々に減らされた。
本来なら、それこそが自由への第一歩であるはずだった。
しかし、実際には違った。
公務から解放されるたび、貴族たちは俺に近づくことを躊躇し、代わりにライオネルとアシュレイの顔色を窺うようになった。
その視線は畏敬と、明白な恐れで満ちている。
俺は、公務の場からすら孤立させられ、誰も近づかなくなっていくのを、肌で感じていた。
アシュレイは知略を駆使し、宮廷のあらゆる場所に「退位は帝国のため」と浸透させた。
「セレスティン様の心身の疲弊は、もはや帝国の未来を危うくするほど深刻。
陛下ご自身が、より若く健全な者に道を譲ることを望まれている」
表面上は、帝国と俺自身を案じた理性的な言葉に見える。
だが、その裏には、俺の退位を既成事実化し、反対意見を封じるための狡猾な意図が隠されている。
アシュレイの論理と知略は、俺への執着をあたかも崇高な忠誠に変えてしまう。
「陛下は、ご自身でこの決断を下された。
我々臣下は、陛下の御心を尊重すべきでございます」
彼の言葉によって、貴族たちは口を閉ざさざるを得なかった。反対する隙など、微塵も与えられない。
一方、ライオネルは違った形で動いた。
騎士団長として彼は宮廷内外を掌握し、不穏な動きを厳しく監視した。
退位に反対する貴族が現れれば、即座にその発言力を奪い、時には物理的な威圧をも厭わなかった。
深紅の騎士服に包まれた彼の姿と、揺るがぬ青い瞳は、宮廷に常に重い圧力をかけ、誰も口を開けず従うしかなかった。
貴族たちは知っている。
この二人の側近には、君主である俺に対する歪んだ執着があることを。
俺の退位は、彼らにとって単なる建前の変化に過ぎず、むしろ俺をより自由に囲い込む好機でしかないことも、薄々感じていた。
反抗すれば自らの地位が危うくなることは、火を見るより明らかだった。
だからこそ、彼らは沈黙し、二人の意向に従う形で俺の退位を受け入れたのだ。
俺はずっと、公務からの解放こそが唯一の逃げ道だと思っていた。
しかし、日々目にする「退位の準備」は、真の自由ではなく、恐ろしいまでに精巧な鳥籠の設計図にほかならなかった。
俺はずっと、公務からの解放こそが唯一の逃げ道だと思っていた。
しかし、日々目にする「退位の準備」は、真の自由ではなく、恐ろしいほど精巧に作り込まれた鳥籠の設計図にほかならなかった。
(……ああ、俺って本当にバカだな。
“君主だから”っていう建前で、ギリギリ保ってた距離感だったのに。
それが外れたら、あいつら――もっと自由に、俺のこと……好き勝手できるじゃん……)
想像しただけで、夜毎の行為がさらに露骨で、容赦のないものになる未来が、背筋を這い上がってくる。
もはや逃げ道なんてない――そう理解した瞬間、胸の奥で絶望の淵が静かに口を開けた。
俺は、知らぬ間に、自分からその鳥籠に足を踏み入れていたのだ。
この帝国は今、二人の手によって――俺を閉じ込めるための新たな檻へと変貌しつつあった。
それは決して俺が望んだ「解放」ではなく、重苦しく、逃れようのない圧迫感に満ちたものだった。
公務は徐々に減らされた。
本来なら、それこそが自由への第一歩であるはずだった。
しかし、実際には違った。
公務から解放されるたび、貴族たちは俺に近づくことを躊躇し、代わりにライオネルとアシュレイの顔色を窺うようになった。
その視線は畏敬と、明白な恐れで満ちている。
俺は、公務の場からすら孤立させられ、誰も近づかなくなっていくのを、肌で感じていた。
アシュレイは知略を駆使し、宮廷のあらゆる場所に「退位は帝国のため」と浸透させた。
「セレスティン様の心身の疲弊は、もはや帝国の未来を危うくするほど深刻。
陛下ご自身が、より若く健全な者に道を譲ることを望まれている」
表面上は、帝国と俺自身を案じた理性的な言葉に見える。
だが、その裏には、俺の退位を既成事実化し、反対意見を封じるための狡猾な意図が隠されている。
アシュレイの論理と知略は、俺への執着をあたかも崇高な忠誠に変えてしまう。
「陛下は、ご自身でこの決断を下された。
我々臣下は、陛下の御心を尊重すべきでございます」
彼の言葉によって、貴族たちは口を閉ざさざるを得なかった。反対する隙など、微塵も与えられない。
一方、ライオネルは違った形で動いた。
騎士団長として彼は宮廷内外を掌握し、不穏な動きを厳しく監視した。
退位に反対する貴族が現れれば、即座にその発言力を奪い、時には物理的な威圧をも厭わなかった。
深紅の騎士服に包まれた彼の姿と、揺るがぬ青い瞳は、宮廷に常に重い圧力をかけ、誰も口を開けず従うしかなかった。
貴族たちは知っている。
この二人の側近には、君主である俺に対する歪んだ執着があることを。
俺の退位は、彼らにとって単なる建前の変化に過ぎず、むしろ俺をより自由に囲い込む好機でしかないことも、薄々感じていた。
反抗すれば自らの地位が危うくなることは、火を見るより明らかだった。
だからこそ、彼らは沈黙し、二人の意向に従う形で俺の退位を受け入れたのだ。
俺はずっと、公務からの解放こそが唯一の逃げ道だと思っていた。
しかし、日々目にする「退位の準備」は、真の自由ではなく、恐ろしいまでに精巧な鳥籠の設計図にほかならなかった。
俺はずっと、公務からの解放こそが唯一の逃げ道だと思っていた。
しかし、日々目にする「退位の準備」は、真の自由ではなく、恐ろしいほど精巧に作り込まれた鳥籠の設計図にほかならなかった。
(……ああ、俺って本当にバカだな。
“君主だから”っていう建前で、ギリギリ保ってた距離感だったのに。
それが外れたら、あいつら――もっと自由に、俺のこと……好き勝手できるじゃん……)
想像しただけで、夜毎の行為がさらに露骨で、容赦のないものになる未来が、背筋を這い上がってくる。
もはや逃げ道なんてない――そう理解した瞬間、胸の奥で絶望の淵が静かに口を開けた。
俺は、知らぬ間に、自分からその鳥籠に足を踏み入れていたのだ。
この帝国は今、二人の手によって――俺を閉じ込めるための新たな檻へと変貌しつつあった。
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