【爆撒英雄サトルのガイア建国記】

池上 雅

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*** 84 俺の身バレとシスティたち登場 ***

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 新たに作った塩の交易所では、ドワーフの交易長が真剣な口調で俺に話しかけていた。

「でもみんな、もちろん女性や子供たちを死なせたくないから、兄貴の意見に同調したい連中も多いんだ。
 でも平原のどこに隠れたらいいのかわからなくって……
 塩の交易長をしている俺に、交易しながら女子供3000人が隠れて住める場所を探して来てくれって言うんだよ。
 もしいい場所が見つかったら、たとえ一族から分離してでもみんなで今の洞窟から逃げたいからって……」

「なるほどよくわかった。
 あの街ならそれぐらいの人数はなんでもないぞ。
 もうすでに15万人ぐらい住民を受け入れて来てるから」

「そ、そんなに……」

「それに向こうに行けば必要なものはなんでも使徒さまが下さるから、移住もすぐに出来るぞ。まあ大事なものだけ持っていけばいいだろう。
 忘れ物があってもまたすぐに帰って来られるし」

「そうか…… それにしてもすごいお方さまだな……」

「よし! 明日あんたの兄貴がいる砦に行こう。
 そうしてその兄貴に直接街を見て貰おうじゃないか」

「で、でも、ここからドワーフの洞窟までは5日もかかるんだ。
 さらにそこから最前線の第3砦までも5日かかるし……
 それに兄貴は今砦の増築工事を指揮しているところだから、そんなに長いこと砦を留守には出来ないし……」

「ああ、なんの問題も無いぞ。
 明日俺と一緒にその砦に『転移』しよう。
 そうしてそこから直接街に『転移』すればいい」

「そ、そんなことまで出来るのか……」

(アダム、それらしき砦の場所はわかるか?)

(はい、山間の道沿いに3つの砦がありますので、間違いなくその最もヒト族寄りの場所がそうかと……)

(それじゃあ地図を出してくれ)

(畏まりました)

「なあ、その第3砦って、ここのことか?」

「こっ、これは! な、なんだこの精密な地図は!
 我らの守りが一目瞭然ではないか!」

「もしここが第3砦だったら、明日行こうぜ。
 それであんたにも、あんたの兄貴にも街を見学してもらおうか」

「す、すまない……」

「いや、ぜんぜんかまわんさ。
 それこそシスティフィーナさまやその使徒のサトルさまがお喜びになる仕事だからな」


 いつの間にか他の種族の連中も俺たちの周りに集まって来ていた。

「なあ、ゴブリンさん。ドワーフさんの案内が終わったら、俺たちもその『街』っていうところに連れて行ってくれないか。
 これだけ平原のマナが薄れると、ドワーフさんの危機も他人事じゃあ無いんだ。
 そのうち必ずヒト族がこの辺りにも侵攻して来るようになるだろう」

「そうか、それじゃあ明後日はみんなの見学会にしよう。
 そうしてみんなが納得してくれたら、10日後の見学会に族長たちも来てもらえるように連絡してくれるか?」

「いや、もう若い者に、10日後までに必ずここに来てくれという族長への伝言を持たせてある。
 俺自身が早くその街を見てみたいだけなんだ」

「はは、それじゃあ明後日、みんなで見に行くか」


「なあゴブリンさん。
 俺自身はあんたに猛烈に感謝しているんだ。
 こんな旨いものを喰わせてくれたり、貴重な塩までくれて、さらに安全な地への移住の勧誘までしてくれたんだからな」

「それが俺の仕事だぞ」

「そんなあんたに実に申し訳ないんだが……
 ちょっとあんたに失礼なマネをさせてもらってもいいだろうか……」

「ん? 失礼なマネ? 別にかまわんが……」

「それじゃあ…… 御免っ!」

 そう言うと、そのリザードマンは、そのぶっといしっぽを俺に叩きつけて来たんだよ。
 まあそんなもん、加護のネックレスも勲章も身につけてる俺には何ほどのことも無いんだが。
 俺は奴のしっぽ攻撃をこともなげに手で押さえた。

「無礼なマネをして本当に済まなかった。
 だが、やはりあんた相当な強者だな。俺の見た通りだ……
 たぶん俺よりも遥かに強いんだろう」

 俺はそのリザードマンのステータスを見てみたんだ。
 そういえばコイツ、副族長だったな……
 総合レベルは63、E階梯は5.0…… 
 なるほどな、このぐらいのレベルだと、俺の力もなんとなくわかるんだろう。


「だがひとつおかしなことがあるんだよ。
 ゴブリンという種族は、強くなればなるほど階級が上がって、その見た目も変わっていくはずなんだ。
 あんたほどの強さだったら、間違いなくゴブリン・ソルジャー、いやゴブリン・ジェネラルになっているはずなんだ。
 なのにあんたの姿はどう見ても普通のゴブリンなんだよ。
 なんでなんだ?」

 まいったな、うっかりしてたぞ。

(なあシスティ、精霊たちを大勢連れてここに来る準備をしておいてくれないか)

(はーい♪ いつでも大丈夫よ)


 その場の全員が俺に注目していた。

「済まなかったな正体を隠していて。ああついでに実力も『隠蔽』してたんだが……
 実は俺の正体は、見た目にちょっと問題があるんだ。
 それに『隠蔽』しないといろいろまずいこともあるんでさ。
 だが、俺は本当にシスティフィーナ天使のために働いている者なんだよ。
 それだけは信じてもらいたいんだが、一度正体を隠してしまっていた以上、口だけでは信じて貰えないだろう。
 そこで今からここにシスティフィーナさまに来ていただこうと思う」

「「「「「 な、ななななな、なんだと! 」」」」」

「それじゃあシスティ、精霊たちと一緒にここに来てくれるかな」

(はぁーい♪)

 途端にその場に強い光が満ちたかと思うと、システィたちが現れた。


「ああーっ! サトルさんがゴブリンさんの姿になってるぅーーーっ!!!」
「「「「「「「「 プゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ 」」」」」」」」
「「「「「「「「 ひぃ~っ、く、苦しいっ! 」」」」」」」」
「「「「「「「「 ぎゃははははははははははははーっ! 」」」」」」」」

(精霊さんたち…… ほんっと容赦ないわ……
 ま、まあ楽しいことだったらなんでもダイスキ精霊だもんな……
 う、うわっ、みんな俺を触りに来ちゃったよ!)

 俺はもう数百人の精霊たちに抱きつかれてもみくちゃよ。
 完全に精霊団子状態だ。


「あ…… ああ…… し、システィフィーナさまだ……」
「創造天使さま……」
「システィフィーナさま……」
「そ、それに精霊さまたちもこんなにたくさん……」

 あー、みんな泣いちゃってる……

「みなさんはじめまして。天使システィフィーナです。
 これからもよろしくね♪」

「わはははははは! サトルよ! ゴブリンになっても男前だのう!」

 え、エルダさままで来とる! ということは……

「す、素晴らしい…… 素晴らしいぞサトル殿!
 なんという素晴らしいゴブリンっぷりだ!
 かくなる上は、サトル殿にゴブリン名を進呈させてくれ!
 そうだな…… 『ゴブトル』で如何かな?」

「「「「「「「「 ブゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ 」」」」」」」」「「「「「「「「 ゴブトルだってー♪ 」」」」」」」」


「さ、サトルさんっ! 
 ご、ゴブリンになれるっていうことは、フ、フェンリルにもなれるの!?」

「あ、ああ、フェミーナ…… たぶんなれるぞ……」

「なってなってなって! お願いっ! フェンリルになって!」

 それで俺フェンリルになったんだけどさ……
 この『変化』って、大きさはあんまり変わらないんだよ。
 だから俺がフェンリルになっても体長は180センチぐらいだったんだ……

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!
 かっ、可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~っ!」

 それで俺、体長5メートル弱のフェミーナに押し倒されちゃって、もう全身舐められまくりでべとべとよ……

「うむ、それではサトルにフェンリル名を授けてやるとするか。
 そうだな、『サトリル』と名付けよう…… 
 可愛らしくてよい名前だろう」

「「「「「「「「 ドゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ 」」」」」」」」
「「「「「「「「 サトリル♪サトリル♪サトリル♪サトリル♪ 」」」」」」」」

 ちくしょうフェンリー、覚えてろよ……

 それからも俺はオークにさせられて『サトローク』という名を与えられ、オーガにさせられて『サトローガ』と名付けられちゃったんだ……
 ついでにベギラルムにまで頼まれて悪魔族にもなったし。
 俺の悪魔族名は、『サトルベ』だってさ。
なんだよそのセンスの無い名前!
 しかもその一部始終をローゼさまに撮影されちゃってたし……


「な、なあ、あれあんなに大きいっていうことは、フェンリル族の族長殿なのでは……」
「それにあの方は間違いなくゴブリン・キング……」
「オーク・キングもいる……」
「オーガ・キングまでいる……」
「そ、それにシスティフィーナさま以外にも天使さまが2人も……」
「しかもなんなんだこの膨大な数の精霊さまたちは……」
「ああっ! 大精霊さままでいらっしゃる!」


「ということで、実は俺がシスティフィーナ天使の使徒、サトルなんだ。
 それじゃあ俺の本当の姿を見せるけど、あんまり驚かないでくれよな」

「うおっ! あ、あんたヒト族だったのか!」

「いや実は俺は他の世界からやって来たヒト族なんだよ」

「ほ、他の世界だと……」

「ああ、こことは全然違う平和な世界なんだけど、システィに呼ばれてこの世界に来たんだ。ここを平和な世界にするためにな」

「お、おいら聞いたことがある……
 この世界のヒト族に今は黒目黒髪の者はいないって……
 昔、小国の王さまとシスティフィーナ教団を創った初代教祖が黒目黒髪だったらしいけど、今はもう誰もいないそうだ」

「そうか……」
(間違いなくそれ、最初の使徒たちだろうな……)

「それじゃあみなさん。
 もっとお料理を出ししますんで、みんなで食べましょうか♪」

「おいサトル、酒は無いのか?
 キング殿たちと一緒に飲みたいのだが……」

「ああ、それじゃあ酒も出そうか……」


 それでまあ宴会が始まっちゃったんだよ。
 俺はついでにビールやジュースも出して振舞ったんだ。
 酒に弱そうな種族もいたからな……


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