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大敗

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「ローレンよ明日の指揮と策は貴様に任せる、策は万全か?」
「お言葉ですが皇帝陛下、我が帝国がカーン王国相手に苦戦するとは思えませぬ」
「万が一のことも考えておけ、敵は連合を組む可能性がある。油断せずに取り掛れ。」
ライネス皇帝陛下は釘を刺してきた。
「おまかせを、必ずや帝国に勝利をもたらして見せましょう」
連合?奴らにそのような動きはない。
そう思い私は余裕で勝てると思っていた。
情報によるとカーン王国の軍勢は3000、対する我帝国は6,000負ける訳がない。
「陛下の心配性にも困った物です。三千の兵力など数で押し潰して仕舞えばいいものの」
などと呟きつつ策を少し考え眠りについた。

開戦から数時間戦況が変わり始めた。
初めは物量で王国軍を圧倒していたが勢いが落ちてきたのである。
「何故だ?何故責めきれぬ!」
疑問に思っている時、知らせが届いた。
「申し上げます!!我が帝国軍の後方より敵の伏兵その数二千!」
「やはり伏兵を伏せていたか...待機していた味方に合図を出せ!奴らの伏兵と交戦させろ!」
ここまでは読み通り、これで勝利は確実に我らのものだな。
そう油断していた矢先最悪の知らせが入る。
「再び申し上げます!今度は左右より増援あり!鎧から推測するにマギア王国、アイリン共和国のものと思われます!」
「増援だと!?奴ら目いつの間に連合軍なんかに...前線の軍を撤退させろ一度引き体制を立て直す!」
撤退命令が出てから1時間後、撤退に成功したのはたったの1500人だけだった。
1500人では戦況を立て直すこともできず
命からがら帝国まで戻ることにした。
敗戦したことを皇帝陛下に伝えた。
「何故負けたのだ?それも普通の負けではなく、かなりの犠牲を出しての敗走」
「答えよローレン!此度の大敗の理由はなんだ!!!」
「今回カーン王国はマギア王国、アイリン共和国と手を組み連合軍で迎え撃たれたのが敗因かと...」
私は力無く言った。
その言葉を聞いて皇帝陛下はさらに怒った。
「我が帝国は4大国の中でも随一の軍事力を持つ、我々に勝つには連合を組むのが必然であろう!!」
「我は昨日言ったはずだぞ油断するなと、しかし貴様は何と言った?任せろと言ったのだぞ!」
「言葉もございません」
「もうよい、ローレン貴様はこの大敗の責任故処刑とする」
私は泣きながら謝ることしかできなかった。

数日後に私の処刑が実行されることになった。
処刑日になり、処刑台に立った私が見た光景は、怒り涙する国民と兵士それと感情のこもっていない目をした皇帝陛下だった。
それもそのはず、大敗したせいで我が国の精鋭はほぼ全滅ゆっくりと滅亡に向かうだけなのだから。
「あぁ...あの時私が油断などしていなければ...敵の行動を把握し最善策を立てていれば...」
後悔と自分の馬鹿さ加減に涙が止まらない。
そんなことばかり考えているうちに、私の処刑話実行されたのであった。
最後まであの日に戻れたらなと思いながら私の生涯は幕を閉じた。

私が処刑されて数ヶ月で帝国は滅んでしまった。
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