【完】二度と後悔したくないので、軍師の本気お見せします

困惑と理解

あたりに銃声が鳴り響いた、銃から放たれた弾丸は私の眉間を貫き息絶えたはずだった。
「はっ...!?」
目が覚めた、その目に映るのは見慣れた天井だった。
私は周りを見渡した。そしてありえない光景が飛び込んできた。
「ここは...自宅？」
「お目覚めですか？ずいぶんうなされていたようですが」
隣に妻がいた。

「何故...生きて...私のせいで処刑されたはずでは...」

理解が追いつかない。
あの戦の後全責任を取る形で私と家族は処刑されたはずだった。

「寝ぼけているんですか？何故私が処刑されなければならないのです？」
妻は呆れた声で言った。

あれは夢？そうだったのならリアルすぎる。

困惑している私に追い打ちをかけるように妻は言った。

「明日はガンマ皇帝陛下の結婚式なんだからしっかりしてください。子供からの友達だからといって無礼のないようにね」

結婚式？結婚式は2年前に終わってるはず。
未来の記憶をもちながら、2年前に戻ってきたのか？
考えがまとまらない中１つだけはハッキリしていることがある、それは妻が生きていること。
その事実をはっきりと認識した途端涙が止まらなくなった。

「生きてるんだよな...よかった本当に良かった...」
「よほど怖い夢を見たのですね、安心してください私は生きておりますよ。」
妻は柔らかい表情でハグをした。

ハグをしたまま５分くらい立った頃だろうか私は冷静さを取り戻した。

「すまない、少し取り乱した。」

そう言い妻をどかそうとしたが、寝てしまっていたみたいだ。
そっと妻を布団に寝かし、私は情報の整理を始めた。

「そもそも何故ガンマのやつはカーン王国に戦なんて仕掛けた？しかも同盟国であるマギア王国、アイリーン共和国がカーン王国側の増援として現れたのも謎だ。」

考えれば考えるほどおかしな点がいくつも出てきた。

あの時の情報によると、王国軍は3000の兵力だった、にも関わらず伏兵に2000人も使っていた。
「2000人も伏兵に使えばあの時、前線で交戦していた敵の数は1000人になる...私は伏兵を見越して2000人を待機させ、伏兵に対応した。」
この時点で前線では王国1000人に対し帝国4000人で交戦していたことになる。
数的有利があったはずなのに苦戦していたのはなぜだ？
そして伏兵が交戦し始めた時にマギア、アイリーンが現れたのもタイミングが良すぎる...
「密告者かスパイがいる...」
その考えが頭をよぎった瞬間ある人物が思い浮かぶ。
「エーデル・ライネス元皇帝...」
私は呟いた。

エーデルは皇帝でありながらも禁術とされている精神乗っ取りの魔法を研究していた。
研究が明らかになり帝国から追放されたエーデルは行方をくらました。そしてガンマ・ライネスが現皇帝となった。

そんなガンマの行動はある時を境におかしくなっていった。
そもそも私、騎士団長のマチルダと3人でいる時はいつも昔みたいに上下関係なく話していたはずなのに突然関係をはっきりさせてきたのだ。さらに戦前の会議で同盟国が裏切ることがわかっていたかの言いようだった。

「同盟国とは良好な仲を築いていたはず、なのに何故あの戦で裏切るこを見越していた？」
「その時は乗っ取り魔術が不完全だったためガンマが教えようとしてくれていたのか？」

何にせよ一連の黒幕が魔術を完成させた元皇帝の追放に対する復讐劇なら色々と辻褄があう。

この仮説が正しいのなら近々ガンマの行動がおかしくなるはず、そうなる前にこちらで手を打つしかない。
「もう二度とあんな悲劇を繰り返さないため、この2年最大限に有効活用してやる。」
私は最善の手を常に考えながら行動を開始した。