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イレギュラー

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「旦那様、カイラ様只今より魔力測定並びに初召喚を開始してもよろしいですかな?」

「よろしく頼む」

父は返事をし、俺は首を縦に振った。

俺と父は魔力を測定するために王都の教会へ来ていた。

「それではカイラ様、この水晶に手を当ててください」

俺の目の前に占いで使うくらいの水晶玉が置かれた。

「水晶の色が赤なら魔力大、青なら一般、黄色なら小でございます」

恐る恐る俺は手を当て水晶の反応を待った。

「どのくらいで反応するのです?」

「10秒ほどで光るはずですよ」

10秒後水晶が一瞬紫に光ったように見えたが、すぐに透明に戻った。

「おい、いくらなんでも遅すぎではないか?もしかして壊れてるんじゃ?」

「今まで水晶が壊れたなど聞いた事がありません」

「じゃあなんで光らないんだ?」

「もしかして」

父からの問いに悩んでいた神父が何かに気がついたようだ。

「旦那様、私がカイラ様の魔力量を見てもよろしいでしょうか?」

魔力量は個人情報のような物、それを見られるのは自分の情報が見られるのと同じだ。

「仕方あるまい、見てくれ」

「かしこまりました、カイラ様失礼します」

神父は精霊のよう生き物を召喚し、俺の魔力を測定し始めた。

「やはり、でもこの結果は」

魔力測定を終えた神父は驚きを隠せていなかった。

「どうした何を驚いている?カイラの魔力は?」

「それが、カイラ様の魔力量はほとんどありません....」

俺の魔力がほとんど無い!?

「そんなはずないだろ!アース達の魔力は膨大だったのだぞ!?」

父は怒鳴った。

「申し上げにくいのですが、突然変異かと」

神父が言うには、強力な2つの力が干渉し魔力のほとんどが消滅したとのことだった。そして、この魔力量では召喚など到底出来ないと。

「まだだ、まだ使い魔を召喚出来ないと決まったわけじゃ無い。今すぐ召喚させろ!」

「ですが、魔力がほとんどない人間が召喚した記録はございません、カイラ様の身がどうなるか分かりませんよ!」

「いいからやれ!カイラ!召喚をしなさい!」

神父は召喚のやり方を俺に教え後ろに下がった。

手を地面に向けて叫ぶんだったな。
『サモン』!!

砂埃が舞い、小さな狐が召喚された。

「信じられません、召喚できるなど。しかもこれは動物?精霊とかではなく?」

召喚に驚いた後、神父はすぐさま俺の魔力量を測定した。

「やはり、旦那様無理に召喚をしたせいでカイラ様の魔力は消滅いたしました」

この結果を聞いた父は崩れ落ちブツブツと呟いている。

「私の計画が....全て無駄に....一体なぜ」

すると、父の俺に対する態度が一変した。

「お前のようなイレギュラーなどいらぬ!実の息子だから家には置いておいてやるが、外には出さぬからな!この恥晒しめ!」

「と、父様?」

突然の豹変に教会にいた人たちは驚いた。

「さっさと帰る支度をしろ、神父、このことは内密にしろよ」

「分かっております。ですが....」

「だまれ!それ以上何も言うな!」

その後、俺は父に引っ張られるように帰宅した。

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