52 / 170
冒険者編
第32話 壁外地区の教会 B
しおりを挟む当面の資金は、引き出せた。
次は、身分証だ。
身分証は魔道具の球体部分に手を触れると、自動的に生み出された。
その時に神父が神に祈りを捧げていたが、たぶんそれが無くても発行されていたと思う。
手に取ってみると、自分の名前が書かれているだけの白色のカードだった。
こんなものが身分証になるのかと不思議に思っていると、神父が説明してくれた。
「このカードの名前の書かれている面が表で、平民や自由民の者は白、王族は黒。身分が上がるにしたがって徐々に色は黒に近づいていきます。そして裏面の色は、善行を積んだ者は白、悪行を重ねた者は赤に染まっていくのです。」
「ああ、それで身分証になるのか──」
神父の説明では、人を助けたりモンスターを倒すなどの善行を積むと得られる『聖科ポイント』と、物を盗んだり、人を殺したりして課される『罪科ポイント』を差し引きして、マイナスになるとカードが徐々に赤く染まっていくのだそうだ。
人の行動の善悪の評価は、女神メルドリアスが行っている。
何が罪になり罪科ポイントが溜まるのかは、この世界で生きるうえでかなり重要なため、教会を筆頭に権力者は情報を蓄積している。
例えば、人殺しは基本は悪とされる。
かなりの罪科ポイントが加算されるが、双方が合意した決闘の結果であったり、盗賊に襲われて返り討ちにした、などの場合であれば罪に問われなかったりする。
それらのケースでも決闘の条件が公平か否かや、パンを盗まれたからといって相手を殺したりすれば、罪に問われることになるそうだ。
俺の場合は、ヤバそうなときは危険感知が知らせてくれる。
発行された身分証の色も白だ。
なのでそこまで気にしなくてもいい、とは思うもののやはり気にはなるので自己鑑定で、罪科と聖科を確認してみる。
*************************
名前 ユージ 身分 自由民
聖科ポイント 006219
罪科ポイント 000390
*************************
鑑定で確認してみたところ、俺の身分は自由民らしい、労働奴隷を辞めて定住していないので、そう分類されているのだろう。
今までの二年間でかなりの魔物を討伐してきたこともあり、聖科ポイントは結構溜まっている。
これを罪科ポイントが越えると、徐々に犯罪者扱いされるようになり、ポイントの多さによって懸賞金が付き、賞金稼ぎに狙われるようになるらしい。
まだまだ余裕はあるが、気を付けておくに越したことはない。
俺は情報収集も兼ねて、神父に話しかける。
教会には他にもなにか、お役立ち機能はあるかな──
「これから冒険者としてやっていくうえで、身につけておいた方がいい事とかはありますか」
「余裕があるようでしたら、ぜひスキルを獲得することをお勧めします」
ああ、そうだ。
教会でスキルを取得できるんだったな。
教会に金貨一枚を寄付すれば、聖職者がスキルの習得を女神メルドリアスに打診してくれるらしい。
対象者がこれまで積んだ経験や、今後の方向性を踏まえて、スキル習得に必要な魔石を用意すれば、女神から新たにスキルを授けられる。
例えば料理人であれば、包丁の切れ味を上げることが出来るスキルや、レシピを記憶できるスキル、食材の鑑定スキル、味を正確に分析できるスキル、などを授けられるという。
お布施と魔石を支払う必要があるが、やってみる価値はある。
「実はこう見えて俺、結構魔石を沢山持ってるんですよ。神父様、おすすめのスキルってありますか?」
「残念ですが、スキルというものは女神様が授けて下さるもので、こちらから選ぶということは出来ないのですよ」
複数の選択肢の中から、選べるわけではないようだ。
──こちらで、スキルの選択は出来ない。
当然、ハズレスキルを与えられる可能性もある。
当たりハズレのあるスキルガチャを、一万円と魔石で引けるようなものだ。
魔石の料金って、いくらくらいなんだ?
神父は値踏みするように俺を見ながら、アドバイスをしてくれた。
「魔石はモンスターを倒せば手に入りますし、魔石屋に行けば売っています。相場は変動しますが、売る場合はおおよそ、魔石値1につき銅貨10枚、買う場合はその十倍位になります」
魔石の魔石値は、鑑定屋で調べて貰うのが一般的らしい。
例えば魔石値二十の『スライムの魔石』を店に売る場合は二百円、買う場合は二千円かかる。
買う場合は十倍の値段になるというのは、ぼったくりのような気もするが、それがこの世界の相場なので従うしかない。
俺の場合は、モンスターを倒して手に入れるので、あまり関係ないか──
しかし魔石を『買う』場合を考えると、魔石値1につき約百円──
とすると、魔石値1000で十万円、魔石値10000で百万円必要になる。
スキルを一つ授けて貰うのに必要な魔石値は、平均で10000は必要らしい。
魔石を買う場合で考えれば、スキルひとつ百万だ。
スキルは本当に『余裕があれば』取得を検討するもののようだ。
「今日はありがとうございました。では魔石を用意してからまた伺います」
俺は神父にお礼を言ってから、教会を後にした。
「身分証も手に入れたし、やっと町の中に入るれるわね」
「服とか買えるかな? あっ、それよりも先に体を洗いたい」
「今までは気にならなかったけど、町を見ると色々したいこと出てくるわね。おいしいものも食べたいわ」
アカネルとモミジリが楽しそうに話をしている。
水を差すようで悪いが──
「二人とも金はどうするんだ? まずはしっかり稼げるようにならないとな」
「あんた、さっきお金を下ろしていたじゃない?」
「いや、金はあるけどさ──ちゃんと稼ぐ手段を確保して、収入に応じて使い方を決めるべきだろ」
「あー、まあ……」
「そう、よね……」
二人ともしょんぼりしてしまったが、最初から甘やかすのは良くない。
とりあえずは──
俺たちはこの壁外地区で、宿を取ることにした。
まずは活動拠点の確保である。
28
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる