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冒険者編
第61話 ★転生者ピョウヘイとピュロユキ 3 B
しおりを挟むそして──
俺たちは手はずを整えて、有利な条件でハーレム野郎と決闘することになった。
ゲイスケの指示で、俺たちは遠巻きに奴を囲う。
ゴブリンと戦う時の、必殺の陣形だ。
俺たちは徐々に、奴との距離を縮める。
奴はビビっているのか、動けないでいる。
ゴブリンならここで、誰かに狙いを付けて飛びかかって来るんだが──
奴は動かないな。
俺たちは奴を挑発して、攻撃させようとする。
ゴブリンと同じように動けよ。
手筈通りに戦えないだろうが!!
ビビッて身動きの取れない敵に対して、俺は心の中で悪態をつく。
あいつが狙うのは恐らく、リーダーのゲイスケのはずだ。
奴がゲイスケと戦いだしてから──
俺は素早く奴の後ろに回り込んで、勝負を決める一撃を喰らわせる。
そうすれば、この決闘のMVPは俺だろう。
フジインの俺を見る目も、自ずと変わるはずだ。
今は彼女の心はゲイスケの物だが、真に彼女のことを想っているのはこの俺だ!!
──ザシュッ!!!
……えっ?
俺が考え事をしていると、いつのまにかハーレム野郎が居なくなっている。
あれ?
どこに……?
視線を移すと、タコマサがドスンと倒れている所だった。
いつのまにかピュロユキも、倒れて死んでいる。
なんでタコマサが、倒れているんだ?
やられたのか?
あいつは、このパーティで最強の男だぞ。
どうやって──?
俺の理解が追い付かないうちに、ゲイスケが奴に斬りつけられた。
ゲイスケの腕が、身体から切り離されている。
うそ、だろ……?
あんなに簡単に、人の身体を斬れるわけがない。
──俺がそう思っているうちに、後ろを向いて逃げようとしたデラシタが斬られた。
あっ、という間に俺だけになった。
──あれ?
どうする、どうする、どうする、どうすればいい?
俺の視界にちらりと、フジインが見えた。
そうだ。
この決闘は彼女の為、フジインをハーレム野郎の魔の手から救うための戦いだ。
ここで俺が奴を倒せば、間違いなくフジインは俺に惚れるだろう。
しかも、このパーティは、俺とフジインの二人きりになった。
俺達には、バラ色の未来が待っている!!
問題は、俺が奴に勝てるかだが──
……勝てる!!
奴がたて続けに四人を倒せたのは、恐らく強力なスキルを使ったからだろう。
スキルは金で買えるからな。
奴は強力なスキルを複数、保有している。
──だが、強力なスキルには使用制限がある。
奴がスキルを使い切っていれば、後は純粋な実力勝負になる。
そして実力勝負ならこの二年、冒険者として研鑽を積んだ俺が勝つ。
俺は裂帛の叫びを上げて、奴を威圧する。
これで奴の身を、竦ませることが出来たはずだ。
その隙に──
俺が攻撃に移ろうとする前に、俺の顔に激痛が走った。
──えっ? えっ??
顔を斬られた!!
いつの間に?
攻撃が見えなかったぞ?
顔のどこを斬られ──
──ガッ!!
両手に衝撃と激痛が走ったと思ったら、手首から先が無かった。
「~~~~~~ッッっ!!!!」
俺は激痛で倒れ込み、地面をのた打ち回る。
──だ、だめだ。
このままでは、殺される。
誰か、助けて────
俺は助けを求めて周囲を見渡すが、誰も助けようとはしてくれない。
俺が冒険者になったばかりの頃に出会った、ベテランの五人組もいたが、彼らは慌てて俺から目を逸らす。
ジョリーさんの姿も見えたが、彼女は冒険者ギルドの中へと、逃げるように入っていくところだった。待ってくれジョリーさん!!
──せめて、せめてフジインのことだけでも、助けてくれ!!
このハーレム野郎の魔の手から、フジインだけでも……。
俺が激痛と、手を失った喪失感と、血が流れて止まらない絶望感と、これから死ぬんだという諦めの中で、フジインの身を案じていると──
彼女の叫びが聞こえた。
「ヒィィ、ち、違うのよ。わ、わたしは……そいつらに脅されて、無理やり仲間にされたの!!! 嫌だったけど、仕方なく──そ、そうだわ!! あんた、仲間を募集しているんでしょ。お、女の、私が仲間になってあげるわ!!!」
──あれ?
……フジイン、君は奴に言い寄られて、困っていたんじゃないのか?
まるでそいつと、初めて喋ったような言いぐさじゃないか──
──え?
どういう??
ダメだ、もう頭が回らな──
俺の思考は、ここで途切れた。
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