聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

文字の大きさ
5 / 126
聖女を追放した国の物語

第5話 婚約

しおりを挟む
 ――聖女の力の検証をしてみましょう。

 という俺の提案を聞いたダルフォルネが、顔を真っ青にした――


 そして……
 本物の聖女ローゼリアの養父、ゾポンドートも様子がおかしい。
 わなわなと震え出したかと思うと、真剣な表情で必死に何かを考えている。

 どうしたんだ、あいつ?


 俺が不思議がっていると、突然ゾポンドートが大声で話し始める。


「も、申し訳ありませんでした。本物の聖女様がいらっしゃるとは露知らず、このような小娘の虚言に騙されてしまいました。しかし、私も詐欺師に騙された被害者です。どうか、寛大なご処置を!!」


 なんと本物の聖女を連れているゾポンドートが謝り出した。

 どうやらあいつは、自分の連れてきたローゼリアが本物であると確信が持てずに、ここで切り捨てにかかったようだ。
 


 ダルフォルネは誠実で有能な政治家だ。
 対してゾポンドートは評判のよろしくない。

 悪徳貴族――そのことを自分でも自覚しているのだろう。
 加えて国王夫妻もダルフォルネ寄りだ。


 自分の主張に自信が持てずに、ローゼリアを疑い……自分に責が及ばないように、ダメージコントロールに走ったわけだ。


 聖女がどちらか分からないうちは、自分の連れている娘こそが真の聖女であると主張していてもいい。
 たとえ偽物であったとしても、自分の養女を王子の嫁に出せる。
 どちらが本物か分からなければ、両方を嫁に取るしかない。

 しかし検証されて真偽がはっきりすれば、偽物を連れてきた方は重罪になる。
 リスクが発生したことで、ゾポンドートは賭けから降りたようだ。


 
 そこからはダルフォルネが主導する形で、『偽聖女ローゼリア』の国外追放が正式に決まった。どうも『本物の聖女を追放する』という小説の根幹は、ちょっとやそっとでは揺るがないらしい。




 だとすると、俺とこの国が破滅する運命も揺るがないことになる。
 この先、何をやっても無駄なのではないか?
 そんな暗澹たる思いに包まれる。

 いや……まだ諦めるのは早いだろう。
 俺はメアド神から転生特典を貰っている。
 運命を変えられず『嫌われ役王子』の人生を歩むだけなら、わざわざ俺に特別な力を与える必要は無い。

 きっとなにか狙いがあるはずなんだ。
 恐らくは、だが……。


 俺はふと聖女偽証の刑罰が、禁固刑や死刑でないことに疑問を感じた。
 なんで『国外追放』なんだろうか?


 試しに『見せしめとして、死刑にした方がいいのではないか?』と聞いてみたが、それにはダルフォルネが慌てて『国外追放』を押し通した。

 このような不届き者を、この国に留め置いたり処刑したりすれば、地母神ガイア様の不興を買うことになってしまうかもしれない。
 というのが国外追放の理由だった。


 理由としては少し弱いように思う。
 それにあの慌てぶりは、何かおかしいと感じた。

 だが――
 なぜか、急速に気力が減少していく。


 もともと聖女の追放は織り込み済みで、予定通りだ。
 もういいじゃないか。

 国王や有力貴族の居並ぶこの場では、王子に出来ることなどたかが知れている。

 受け入れよう。

 


 『偽聖女』とされたローゼリアは衛兵によって拘束され、パーティー会場から摘まみ出された。


 少し意外だったのは、衛兵に拘束される際に手荒に扱われたローゼリアが、ヒステリックに暴れて叫び出したことだ。 

 罪人が拘束されるのは当然だろうに、『話が違う』といって怒っていた。
 丁寧にエスコートされるとでも思っていたのだろうか?


 偽聖女と疑われても、涼しい顔をして反論一つしなかったのに。
 ……やはりあの女は、どこか妙な感じがする。
 
 追放されない様に自分の能力をアピールするとか、もっと……
 まあもう、どうでもいいか――

 今日は疲れた。

 

 その後――
 ローゼリアとの婚約破棄が成立した。
 そして俺は『聖女』ソフィと、正式に婚約することになった。


 俺たちはお互いに定型文で、無難に挨拶を交わし合う。

 ソフィは地味な見た目で、跳ねたくせっ毛以外はこれといった特徴のない少女だった。彼女の立ち居振る舞いは、俺に気に入られようと言い寄ってくる女たちと大差なく、特に興味を引かれることはなかった。
 
 俺の女好きは貴族社会で知れ渡っているらしく、こういう手合いは結構来るのだ。


 一方、罪人として拘束されたローゼリアは、リーズラグド王国の南の国境を任されているダルフォルネの領地に移送され、その後で隣国ピレンゾルへと追放された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...