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レイゼイの町
第75話 上書きしてやったぜ A
しおりを挟む「ジローちゃん、これ食べる? おいしいよ。────はい、あ~ん❤」
心愛さんがそう言って、僕の口元にお菓子を差し出してきた。
「あの、自分で食べれますから……」
僕がやんわりと、お断りすると────
「食べてくれないと、ジローちゃんの秘密を、レイリちゃんに喋っちゃうぞ」
心愛さんは、悪辣な脅しをかけて来た。
えっと……、秘密ってなんだ?
何か、あったっけ────??
……う~ん。
怜悧にバラされて困るような秘密など、僕にはない。
心当たりは、まったくない。
……ないのだが、『喋っちゃうぞ』などと言われては、秘密が無くても不安になるというものだ。
────仕方ない。
ここは、脅しに屈するとしよう。
「あ、あ~ん」
僕は要求に応じて、口を開ける。
「はい、良く出来ました」
僕は年上のお姉さんに、また揶揄われてしまった。
僕は心愛さんに、手玉に取られている。
それは、いつもの事だ。
まあ、心愛さんは僕を蔑んでいる訳ではないので、揶揄われるのは嫌ではない。
むしろ、心愛さんが積極的に、こうしてコミュニケーションを取ってくれるのは、コミュ障の僕にとって有り難い事だといえる。
……。
有難いことではあるのだが、今は不味い……。
何故なら、僕たちの近くに、怜悧がいるからだ。
「ねえ、ジロー……、婚約者の前でココアさんとイチャついて、楽しい?」
怜悧がジト目で、問いかけて来た。
彼女は可愛らしく『むぅ~~』と唸りながら、不機嫌さを隠そうともしない。
「そんな、怒んないでよ。レイリちゃん────レイリちゃんも、おやつ上げればいいじゃん。……ほら、一緒に!」
そんな提案をされた怜悧は、お菓子を手に取り『ジロー、あ~ん』と言いながら、僕にそれを差し出してきた。
コミュ障の、僕でも解る。
────これは食べなきゃ、ダメな奴だ。
僕は怜悧から、お菓子を食べさせて貰った。
まるで、餌付けされているペットの様だが、彼女を宥める為だ。
────仕方ない。
さて、僕が彼女から餌付けされているのは、現実世界の自宅のリビングだ。
数日前、僕はようやく怜悧と、ゲーム世界で出会うことが出来た。
それから、心愛さんも交えて、現実世界で集まって親睦を深めつつ情報交換しよう、という話になった。
というわけで、パーティメンバーの二人が僕の家に集まって、いわゆる『オフ会』というものを開催している。
先ずは、これまで謎だった『怜悧の事情』を心愛さんと聞いた。
僕達がゲーム世界で仲間になったことで、事情を話せるようになったのだ。
数か月前────
怜悧は中学生でも出来る、アルバイトを探していた。
どうしても仕事がしたかった訳ではないが、将来への不安もあり、今のうちから、お金を稼げるようになりたかったそうだ。
────アイドルに、モデルに、子役……。
彼女の容姿と能力ならば、どれも出来そうではあるが、そういう業界の悪い噂も聞こえてくるので、踏ん切りがつかなかった。
動画配信者という手もあるが、個人で顔出しをするのは抵抗があったし、ある程度まとまったお金が貰えるのは、一握りの配信者だけだと知り、断念した。
他にも探してみたが、いわゆる『闇バイト』の募集ような、怪しげな条件のものもあり、危なそうなので手は出さなかった。
そうして、色々と調べていくうちに、彼女は、とあるサイトを見つける。
────ゲームのテストプレイヤー募集、寝ているだけで、お金が稼げる。
そんな、募集があった。
寝ている間にお金が稼げるというのは、良いなと思ったが、そんな旨い話があるのかな? とも思い、応募はしなかった。
彼女は、そのサイトを『見た』だけだ。
その日の夜、彼女は夢を見る。
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夢の中で怜悧は、お城に住んでいるお嬢様だった。
彼女は、綺麗な洋服を着て、美味しい料理を食べて過ごす。
朝起きると、付けた覚えのないペンダントを身に付けていた。
いつの間にか、ゲームのテストプレイヤーとして登録されていて、ゲームにログインするだけで、お金が貰えるようになっていた。
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