【ラスト・パラダイス】 一人ぼっちのダンジョン攻略 少年は命がけのゲームを、孤独に戦いぬく

猫野 にくきゅう

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レイゼイの町

第75話 上書きしてやったぜ B

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 それから彼女は、ペンダントを身に付けて眠るようになる。

 夢の中で、美味しい料理を食べて、綺麗な服を着て、メイドさんに世話をされて過ごす。それだけで、お金が貰えた。

 たまに町の外に出て、レベルを上げる為にモンスターと戦わなければいけなかったが……、それだって護衛の兵士に守られながら、魔法を使い、遠くからモンスターを倒すだけの、簡単な作業だった。

 美味しい料理を食べて、寝ているだけで、お金が貰える。

 危ないことは、何もない……。



 だが、それは、長くは続かなかった。

 ある日、ゲーム世界での父親役『レイゼイ侯爵』から、力を示した勇者と共に、冒険の旅に出なければいけない、という話を聞かされる。

 レイゼイ侯爵は、魔法の才能に恵まれた娘と、勇者を結婚させる気でいたのだ。


 ────ゲームの世界とはいえ、見知らぬ男と結婚させられる……。

 そんなのは、嫌だった。



 悲嘆に暮れる彼女に、ゲームの運営からメッセージが届く──
 怜悧のクラスメイトから、『一人だけ、プレイヤーを勧誘出来る』という内容だった。


 彼女が結婚しなければいけないのは、一番最初に城に辿り着いたプレイヤーだ。

 クラスメイトに来てもらえば、見知らぬ誰かと結婚しないで済む……。
 知り合いに頼んで、偽装結婚して貰おうと、彼女は考えた。


 最初は女友達を誘おうとしたが、このゲームは魔物と戦わなければいけない冒険RPGだ。

 勧誘するのは、ゲームの得意そうな男子にすることにした。

 クラスメイトの『ステータス』は、運営から提供されている。


 その中から、『ステータスの高い男子』を誘うことに決め、僕が選ばれた。

 異常に魔力の高い僕なら、最速でゲームを攻略してくれるだろう、と思ったそうだ。

 …………。

 ……。


 こうして彼女の話を聞いてみると、やはり、このゲームの運営は謎が多い……。

 下手に逆らわない方が良さそうだな……、と僕は思った。






「それで、……心愛さんとの秘密って、何かな……ジロー?」

 彼女は一通り、事情を話し終えてから、僕を尋問してきた。
 ────長い話の後なのに、忘れて無かった様だ。


「いや、僕にもよく分からなくって、秘密ってなんですか? ココアさん」

 僕は手拍子で、悪手を打ってしまった。


 秘密とやらを守る為に、あんなことまでしたのに──
 自分から怜悧の前で、聞いてしまった。

「ああ、それね。ウチとジローちゃんが、ゲームの中でチューしたって話だよ」

 心愛さんが、ウインクをしながら秘密を暴露した。


 えっと、ああ────
 そういえば、テントで寝る前に、ほっぺにキスして貰ったことがあったっけ……。

 それを聞いた後……、怜悧の機嫌が、また悪くなってしまった。



 オフ会がお開きとなり、僕は女の子二人を送っていくことにした。

 隣町に住んでいる心愛さんは、僕と怜悧の家の途中にある駅から、電車に乗って帰って行った。



 僕は怜悧と二人で、町を歩く────

「ここまでで、いいのに……」

 彼女はまだ、若干怒っているようだ。

「────いや、家の前まで、ちゃんと送るよ」

 僕は引き下がらずに、そう答える。



「ふ~ん……。私の家が、見たいんだ────? ジローのエッチ!」 

「────えっ? どういう事……」

 訳が分からずに、聞き返す。

 何故、家まで送ると、エッチなんだ────?



 彼女は、僕の疑問に答えずに『ねえ、ココアさんと、キスしたんだよね?』と確認してきた。


 ────確かに、キスした。

 彼女の問いに対して、僕は黙って頷く……。



「婚約者がいるのに、浮気なんて、……これは『けじめ』が必要だと思わない?」


 婚約者と言っても、ゲームの中の話なのだが……、ここで、それを言ってはいけない気がした。

 僕は黙って頷き、肯定する。

「じゃあ、目を瞑って……」

「────わかった」


 僕は言われた通りに、目を閉じた。
 
 『けじめ』ということは、殴られるのだろうか?


 それで彼女の機嫌が直るのであれば、まあいいか……。僕がそんな風に思っていると、唇に柔らかく、温かい『なにか』が、ぎゅっと押し付けられる。

 ……。

 …………。


 暫くしてから、それは離れた。



 目を開けると怜悧が満面の笑顔で、僕を見つめている。そして────

「上書きしてやったぜ」


 『フフン』といった感じで、得意げに、そう言った。




 心愛さんがキスしたのは、『頬っぺた』だったんだけどな……。
 
 ────だが、それは、言わない方が良いだろう。


 怜悧は、ドヤ顔を赤く染めている。
 自信満々な彼女でも、男子にキスするのは気恥しいようだ。

 その赤くなった顔を隠す様に、慌ててマンションの中に入っていった。


 僕の顔も、きっと真っ赤になっているだろうな。

 そう思いながら、夕日に染まった町の中を歩いて帰った。
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