ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

109. うっさカルい機関銃

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トレネークは今、アミネットと共に祖父母の離宮に行っているので、宝物庫にフェジンが付いてこようとしたけど断った。

僕の宝物庫見学の時間が終わるまで何もせずに待機してもらうのは時間も労力も勿体無いので、ツルレンジャーたちが居るから大丈夫と僕一人で行くことにした。

昔、ソルーゼンたちの授業に行ってたときもトーモスが迎えにきてってやってたんだし、その頃より僕はもう随分大きいしさ。

こういう時に兄上みたいな側近がいたら、扉の外で待っていてもらえるんだろうな。



「ぁ、あの、宝物庫と言いましても、魔道具でもないような益体もない物が押し込められているような倉庫のような場所でして。
埃で薄汚れた場所をご案内する訳にもいきませんで……」


総点検の総ざらえ。

王子をお迎えするのだ。
何かあっては大変と危ないものが無いか見直して、掃除して片付けをしなおして、やっと僕を迎える準備が整ったといった感じ?恐らく。

魔道具でも無いなんの役にも立たないどう使うかもわからないような道具たち。
そのような物を押し込めて置いてあるような所なんてさ、宝物庫というよりも実態は物置きに近かったのだろうな。
あのよくある捨てるにはちょっとな物を溜めておく場所、みたいな。




平身低頭なポジョルに案内され到着した、宝物庫の扉の前に一人の男性が立っていた。


「こちら、本日の宝物庫内の説明を担ってもらうウサカルという者です。ウサカル、シュアクーン様にご挨拶を」

「ん?あ、はい。よろしくお願い致します、シュアクーン様。ボクはウサカル。財務省宝物庫管理課召喚物品部の人間だ。気になったことは何でも質問して欲しい。一応なんでも答えられるようにとボクが今日呼ばれたんだから」

何というか。このウサカル。特徴のない抑揚も少ない、耳を素通りする音程と声質をしているんだ。
ほら、お昼食べた後の日の当たる席での社会科か古典の授業のような、さ。わかるだろ?


ポジョルが恭しく大きな鍵を取り出す。
鍵を開けて入った部屋。
どっかの博物館のガラスケースや
高級店のショーケースが並んだところを想像していた僕はかなり拍子抜けした。


「この部屋ではそこまで重要では無いと思われている物品が保管されております」

どこまでも生真面目にポジョルが案内をしてくれる室内には、低めのテーブルの上に箱がいくつも積まれている。
説明から察するに、一応、同類っぽい物で分けられてはいるようだ。




「こちらは勇者や聖女が必ずと言って良いほど召喚時にお持ちになっていた品とされている物です」

箱からゆっくりと取り出した物を白手袋をしたポジョルが丁寧に扱い広げて見せてくれる。…四角い布。それはどこからどう見てもハンカチ。


「……うん、普通の布、しかも経年で色もよくわからないボロ切れに近いモノと化していますね」

ハンカチを持ち上げようとして、もしも破損したら?と思い直して部屋に入ってすぐに着けるようにと渡された白手袋のその手を引っ込めるシュアクーン。


「ほんとぉそーなんですよぉ、ボクもねー、こんなの要らないと思う訳なんですけどねぇ……。
あ、因みにそれは“ハンカチ”って言う手を拭く用途のヤツですね。
ほらこれなんか聖女様が必ず持ってるとされている小さな四角い布切れなんですけどね?なんか、薄い布のとタオルみたいなのがあってですねぇ────」

ッタタタタララタタラタタタと乾いた軽い音をさせて連続で発射される機関銃のように言葉が耳を通り過ぎる。
軽いタッチで飛んでくる言葉は理解する前に頭を素通りしていってしまうという感じだ。

お喋りが止まらない。
まるで別方向のソルーゼンだ。


「これなんて謎で面白いですよぉ」

ツカツカと歩み寄り、チェストの取っ手を躊躇いもなく引き抜くウサカル。本当にこの部屋のどこに何が在るのかを熟知しているようだ。

彼の持ってきた小さな引き出しの中には無線イヤホンが綺麗に敷き詰められている。てか、これ左右まともに揃えられんだろ。

他の引き出しも見せてもらうと鉛筆、シャーペン、赤ペン青ペン蛍光ペンに消しゴム、20㎝物差などの文房具がドッサリ。
なんか落とし物コーナーみたいだな。


「こちらには不思議な容器が入っています。どうやら何かを納めるための入れ物のようなのですが」

ポジョルが恭しく丁寧な仕草で持ってきて、パカリと開けた箱の中には確かに布みたいにペラペラな癖に柔らかくも丈夫な……………空のポケットティッシュ。

箱の中には。
ポケットティッシュの中身無しなビニール部分のみがぎっしりと収められていた。


「まったくもぅ。せめて何に使われていたものかくらいは記して後世に伝えて欲しいものですよねぇ、何なのかわからなければ捨てるにも捨てられないじゃあないですか」

あ、何となく不用品だという認識ではいるんだ。だけど、それを説明出来ない限りは国の物なので何とも出来ないということですね。

僕が興味が無いとみて広げてあった各種デザインのビニールを手早く片付け出すウサカル。しかしその口は止まることを知らない。


そんなふうに。
ウサカルが言の葉を口から吐き出している間にポジョルが別の箱を携えてきた。


「こちらのものは用途は判明しています。お金を入れて使うものですね」


────財布だ。
いろんな形状や色の財布?だと思われるモノが木箱の中に収められていた。

古ぼけて触ったら崩れそうなものや表面が剥げている物、状態が良さそうでも変色していて触ったらどうなるか怖くて手が出ない。

(ん?これは?)

革?か合皮なのか大抵が劣化してボロボロになっている中、やたら丈夫なナイロン製のバリバリ財布が生き残っている。


「おお。すげ~な。……コホンこれは?」

「コレらは中にアチラのお金を入れておくものだったモノだと伝えられています。全部がコレのようにちゃんと用途やら何やらを伝えておいて欲しいものですよね。ここには紙のお金が入るようですよ?紙のお金ってどんな物だったんでしょうねぇ。使っているうちに千切れてしまわないモノでしょうか?紙なんてすぐに切れてしまいそうですがねぇそれに…………」


手に取って開いて説明してくれるウサカル。バリバリ財布はパリパリに生きていた。…スゲェ。


他の箱も見せてもらったけれど、中にはお弁当包みらしい大版の四角い布や巾着、小型のお弁当バッグが入っていたり。
でも、肝心の中身の弁当箱は見当たらなかった。

僕が召喚された時は、学校の行き帰りに召喚された訳じゃないからな。
でも、お弁当包みやお弁当バック、欲しいって言われたらやっぱりあげちゃうかもな。
僕なら、お弁当箱もあげるけど。


保管されている箱には他にも続々と色々な物が。

大小各素材、デザインのポーチ。
コームやブラシタイプ様々な櫛。
コンパクトや手鏡の類。
リップクリーム、ハンドクリーム、整髪料などの残骸。中身はね、当然ね、…ガワだけが残ってる感じ。てか入ってても使える訳ない。
キーホルダーや大小のぬいぐるみ。

ヘアゴムと輪ゴムが一つ所にごっちゃになっているのって、……ま、仲間っちゃ仲間か。


どれも懐かしさを漂わせてはいるが、どちらにせよ。
僕の望んでいる品では無い。



「先程“この部屋ではそこまで重要では無いと思われる品が保管されている”とおっしゃいましたよね?ここ以外にも保管部屋があるのですか?」

欲しい物がこの部屋には無さそうと、見せられた物を見て判断したシュアクーンはポジョルに問いかけた。



「ええ。この先に。そろそろそちらをご覧になられますでしょうか?そちらはここの品よりは整理されて陳列しておりますし、」

「あっちの部屋は確かにそうですよ?でもですねぇ、見てくださいこんな山積みの箱だらけじゃあ中身取り出していちいち清浄魔法かけるにしても限界があるじゃないですかぁ。この部屋、本当にもうなんとか整理して貰いたいですよぉ」

次の部屋に移動しようとした僕らにウサカルが横から口を挟んでくる。
王子権限でなんとかなりませんかねぇ、と言われましても。僕も困る訳で。


「そもそも王様に立ち入りの許可をもらってこうして来ているわけですからね?僕にはどうしようも出来ないです」

「そうですかぁ残念です。じゃあシュアクーン様が王様になったら何とかしてくれませんかね?」


全然残念そうでもない軽い調子で言い放つウサカル。
そんな。何を言い出すのかコイツ。

ここで「そうですね、考えておきます」なんて答えた日には僕は王位を狙っていると捉えられかねない。軽い調子の話し方で僕を引っ掛けようとしているのでは?とつい疑ってしまうが、さっきからずっとこの調子なので、多分彼にそんな気など無いのだ。

兎に角豚の羽。
思った事と思いついた事と思い出した事を全部口に出しているだけの人。それがウサカルという人物なのだろう。…こんな奴危なくて文官仕事なんてさせられないな。

なんでここに配属されたのかを推察しつつも、記憶力は大層よろしく聞けば何でも答えられ説明までしてくれる、その一点では優秀だと認めざるを得ない。


出した物を片付けながらウサカルがまだ何か言ってるけれど、僕とポジョルは次の部屋に向かってもう歩き出していた。






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