神の創造し魔法世界

アネモイ

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活気の溢れる町

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 世界が誕生してから現在までの経緯を聞き終えたフィルス。
 世界を造り変えるため、共に旅立ったアネモイに向け、自分がやるべきことが何か模索していたフィルスは、ようやく自分の役目を見つけたようだ。

 「アネモイがいかに自意識過剰で傲慢、そして未来設計の企てがどれだけ甘いのか。要は上に立つ者として、いかにその素質が欠けているのかを理解できた」
 「そこまで言うか?」
 「むしろ配慮も踏まえたうえでの、結論なんだけど」

 フィルスはその場に勢いよく立ち上がり、アネモイをびしっと指を指す。

 「とりあえず、未来設計については後に回すとして。アネモイはこれから何かを起こそうとするとき、まずは私に一言相談すること」
 「いちいちお前に相談しなければならんのか?」
 「一人で勝手に突っ走って誕生したのが、今の腐敗した世界でしょうが。もっと自分が無力であると自覚しなさい」
 「はい・・・」

 フィルスは、そのまますとんと腰を下ろした。

 「とはいえ、私も完璧じゃないからうまく力になれるかわからないけど、できるだけあなたの抑止力になれるよう頑張るよ」
 「抑止力?共に歩むのではないのか?」
 「もちろんあなたがやろうとしていることが賛同できるものだったら、そのやり方を全力で支援するつもり。でももしそれが暴走の類で、とても共感できそうにないものであるなら、私は敵になってでもあなたを止める」
 
 フィルスはいつの間にか真剣な眼差しをアネモイに送っていた。

 「仲間は常に一緒である必要はない。それぞれが意志を持ち、その意志が並ぶ時もあれば、時には反発することもある。互いの意見を交わしながら、最善の道を一緒に見つけてゆく。それが仲間ってもんでしょ?」
 「・・・」

 その時、アネモイの脳裏にある映像がフラッシュバックされた。そこに映るのは、この世界では出会ったことがないはずの1人の女性だった。

 「(ともに切磋琢磨を繰り返し、皆と1つの道を決めなさい。それが仲間というものですよ、○○)」

 「・・・い、おーーーい!」
 「はっ!?」

 アネモイはフィルスの呼びかけに、現実へと帰還した。

 「どうしたの、急にぼーっとして?」
 「い、いや、何でもない」

 アネモイは先ほど目の前に映った女性の映像が気になってしょうがない様子。

 「(さっきのは何だったんだ?この世界に降り立って以来、あんな女性と会ったことはないはず。であれば、この記憶はいったい・・・)」

 「アネモイってば!!!ちゃんと聞いてる?」
 
 再びフィルスの一喝で現実に引き戻される。
 
 「す、すまん。ふと昔のことを思い出してな」
 「このタイミングで!?」
 「ああ。でも大したことではない。すまなかったな」

 アネモイは首を左右に振りながら、頭の中に浮かび上がった映像を懸命に吹き飛ばそうとする。

 「(いかんいかん。今は不鮮明な記憶をたどるより、フィルスと今後について話し合うのが先決だ。しっかりせねば)」

 アネモイは目が覚めるよう、両手で頬を叩いた。その光景にフィルスは何が何だか分からない様子だった。

 「お前のやるべきことは理解した。では私は、お前の想いにどのようにして応えたらいい?」
 「とりあえずはアネモイの好きにしたらいいと思うよ」
 「そこは投げ槍なのか・・・」
 「結局どんな世界観になろうとも、上に立つ人は1人になることだけは変わらないだろうしね。であれば、私のできることといったら補佐程度でしょ?まずはアネモイが理想とする世界に向けて一直線に進むべきだと思う。そのうえで、私が気に入らないと思ったら全力で阻止する。アネモイみたいに傍観者にはなりたくないからね」
 「一言多い」

 フィルスの助言でアネモイ自身にも目先のやることが決まり、今度はアネモイが意を決したように立ち上がる。

 「ともあれ、私は私のやるべきことをやればいいのだな?そのうえで、私が道を誤りそうになったときや、迷いそうになったときは遠慮なく手を貸してもらう。それでいいか?」
 「うんうん。ちゃんと私の話を吸収出来たり、“やりたいこと”じゃなくて“やるべきこと”というあたり成長が感じられるね」
 「いちいち私の神経を逆なでするな」

 アネモイは、行き場のない怒りをぶつけるかのように火を消した。

 「さて、腹ごしらえも済んだ。そろそろ出発するぞ」
 「了解!」

 アネモイたちは荷物をまとめ、その場を後にする。

 そして山を越えること数時間、ようやく麓にある目的の町にたどり着いた。町へと到着したころ、すでに上空は暗闇に包まれていた。

 「はあ、はあ・・・。まさか一日もかけて歩くとは思わなかったよ」
 「まったくだらしないぞ」
 「あんたはいいわよね!神には体力なんて概念ないんだから!そっちのペースに合わせたおかげで、人間である私の体はもうボロボロよ!」
 「わかった、わかった」

 ここでもアネモイはフィルスのセリフの中に気になる文言をみつける。

 「(神には体力という概念はない・・・か。それも一応、世界の住民が知るすべはないはずなのだが。これも前世の記憶の影響か?)」

 とはいえ、これ以上詮索しても答えなど見つかるはずもないため、アネモイはこれ以上気にすることを止めることにした。

 到着して早々、アネモイはこの町の様子が、以前訪れた時とは明らかに違うことに気付く。まず一番の違いは、人口の多さと賑やかさだ。

 「ずいぶん賑わってるね。日が暮れたのに、露店まで出てる」
 「私が以前訪れた時は、他国からの強襲を受け、建物の残骸だけが残されていた。そこにいた住民は殺されるか、領民になるかの2択を迫られる始末。その僅かに生き残った住民で、ここを植民地とし、過酷な労働を虐げているとばかり思っていたんだが」
 「思った以上の賑わいで戸惑っていると」
 「まさか町を復興しただけでなく、人口まで増え、町としての機能を取り戻しているとはさすがに予想外だ。これは一度、作戦を考え直す必要がありそうだ」

 作戦という言葉を耳にしたフィルスは、嫌な予感が頭をよぎる。

 「念のために聞いておくけど、その作戦というのは?」
 「支配する国の急所を狙って領主を討ち取り、この町の信頼を得たうえで、我が国の足掛かりにするつもりだった」

 するとフィルスが何かに感づいたのか、呆れた表情をアネモイに見せてくる。

 「要は正義のヒーローとなってこの町を助け、この町を救う名目で国王になるつもりだったんだ。考え方が幼すぎない?」
 
 アネモイはフィルスからの指摘に、思わず頬を赤らめ、額から冷や汗を垂れ流す。

 「神に向けて幼いとはなんだ!私なりに争いを最小限に抑えて考え抜いた作戦だ」
 「結局争いはするんかい」
 
  アネモイとフィルスはいったん宿を取り、今後の方針を話し合うことにする。
 
  宿で2部屋を借りた2人は、それぞれの部屋で荷物をまとめ、アネモイの部屋に合流した。
 
 「それでどうする?これだけ経済が回っているなら、急所どころか、下手をしたら国民から信頼を得ている領主様かもしれないよ?」
 「もしそうで、この国を乗っ取ろうものなら、信頼どころか反感を買うのは目に見えているな。我が世界においてそういう国がまだ存在していたという事実は喜ばしいことではあるのだが、今は複雑な気分だ」
  「乗っ取りって言わないでよ。まるで私たちがやってることが賊みたいじゃん。てゆうか、この会話大丈夫?隣の部屋に聞かれていたら通報されるんじゃ・・・」
  「安心しろ。神の防音結界で隣に聞こえることはない」
  「安心できるか!事前に盗聴対策しているところとか、やってること完全に賊なんだよ!」
 
  フィルスはこうすん気持ちを抑えつつ、冷静さを取り戻す。
 
  「で、まじめな話、これからどうするの?他の悪徳領主の植民地に変更する?」
  「いや、もうしばらくこの町に居ようと思う」
  「なんで?」
  「この町における経済の潤沢が違和感に覚えて仕方がない」
 
  アネモイはこの宿のオーナーから、この植民地がどこの国によって管理しているのかを予め聞いていた。そしてオーナーへの聞き込みにより、この植民地を管理する国が“スプリブルク王国”ということが判明した。

 「聞いたことがある名前」
 「スプリブルクは、この世界に存在する数多の国の1つで、規模的には中堅国に値する。とはいえ、近年は急激な経済成長で大国に成り上がろうとしているがな」
 「急激って?」
 「ここ数年で突然発展したんだ。私の世界観測記録によると、ある植民地を手に入れてから急激に本国の経済が回り始めたらしい。稲や小麦といった食糧事情も発展し、小規模で運営している他国を取り込みながら国をどんどんと大きくしていっているようだ」
 「その植民地って・・・」
 「ああ。ここだ」
 「なるほど。ていうか、世界の観測って、一応神様らしいこともしていたんだ」
  
  アネモイは思わず咳払いをする。
  
  「スプリブルクは建国からまだ30年足らずと歴史は浅いが、急激な経済成長によって豊富な資金を携えているらしい。この植民地を起点として、本国では軍備強化も進んでいるようだ」
  「確かに、怪しい。もしこれが今まで誰もやったことがないやり方を実践しているのであれば、その平和な日常の裏になにかしらの影があってもおかしくなさそう・・・そっか!そこに注目したんだね。そのやり方が非人道的なものであるなら、当然神様としては見過ごせない。そういうことね!」
  「もちろんそれもあるが・・・」
  「ん?」
  
  フィルスがよく見てみると、アネモイの体はなぜか小刻みに震えていた。
  
  「私の目の届かぬところで、私でさえ知らないやり方を世界に導入しようとしているこの事実・・・そんなイレギュラー、神として許せるはずがなかろうが!」
  
  自分の世界が汚されたと思い込み、怒りに震えるアネモイをフィルスは冷めた目で見ている。
  
  「(あー・・・違うわ、これ。自分が設計した世界の中に異物を持ち込ませた人間に対して怒って・・・いや、嫉妬しているだけだわ。人にプライドどうこう言ってたくせに、自分が捨てきれていないじゃない。感心して損した)」
  
  フィルスはポンと手を叩き、アネモイを現実に引き戻す。

 「まあ、アネモイの醜いプライドはともかく、その違和感の正体を突き止める点に関しては私も賛成。もしかしたら、この植民地の人々も騙されているかもだし」
 「何か貶されたような気もするが、まあいい。そうと決まれば、明日から捜査開始だ」
 「了解」

 こうして2人きりの会議は終わり、フィルスは自室へと戻る。

 到着した途端にベッドへと転がり込むフィルス。1日中山道を歩き回ったせいで、肉体はボロボロだ。段々と瞼が重たくなっていき、眠りにつくのは1分もかからなかった。

 同刻、アネモイたちが訪れた植民地内にある、とある建物。

 「今日だけで新たに6人もの入居者か。計画の方も次の段階に上がりそうだし、順調そのもの。明日も頼んだぞ。もし少しでも反意を見せたのなら、わかってるな?」
 「はい・・・」
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