神の創造し魔法世界

アネモイ

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2柱の神が創造する魔法世界

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 前世における別世界にて、かつてのイブリースの魂を引き継いだガルドとの因縁を終わらせることができたアネモイとフィルス。

 2人はその直後、アネモイにとっては現世の、フィルスにとっては前世の故郷である天界へ帰還した。
 そこでフィルスは、前世の生みの神であるアストライオスとの再会を果たし、前世の行いや懺悔をアストライオスに直接打ち明けたことで、無事に心を覆っていた闇が晴れたようだ。

 そして今度はアネモイの番とばかりに、アストライオスがアネモイに問いかける。

 「さて、次はあなたですね。あなたも私に何か用があってきたのではないですか?」

 するとアネモイは、静かに目を閉じると、そのまま頭を下げた。そしてアストライオスに放ったのはたった一言のみ。

 「ありがとうございました」

 そんなアネモイの姿にフィルスは驚く一方、アストライオスはフィルスと同じような暖かい目をアネモイに向けていた。

 「それだけですか?」
 「ええ。これが今の私のすべてです」
 「そうですか。あなたも成長できたようで何よりです」

 たった一言同士の会話ではあるが、その一言の中にどれだけの想いが込められているのか、それは通じ合う本人たちにしかわからない。だが、傍らでその会話期効いていたフィルスにとって、アネモイの“ありがとう”の一言に込められた想いは、痛いほど共感できるものであり、同時に羨ましく思うものでもあった。

 「では、私たちはこれで。またいつか、今度は良き報告ができればと思います」
 「ええ。私もその時が来るのを楽しみにしています」

 アネモイがアストライオスの空間から去ろうとする。しかしフィルスは、まだ何かを伝え足りないのか、体をモジモジとさせながら、その場から離れずにいる。
 そんなフィルスの様子にアストライオスは思わずクスリと笑みをこぼす。
 
 「その時が来れば、あなたもまたいらっしゃい。今度は里帰りとして、親子の再会を果たしましょう」
 「は、はい!」

 フィルスは、求めていた答えが返ってきて余程嬉しかったのか、満面の笑みをアストライオスに見せ、深々と頭を下げた。そして、すぐさまアネモイの背中を追いかける。

 自身の空間の扉が閉じ終わるまで、2人の背中を見届けたアストライオス。そんなアストライオスに、どこからともなく現れた天使が話しかける。

 「お帰りになられましたか。無事にお伝えすることができてよかったですね」
 「あら、いたの?“アムラ”」
 「またまた。何でもお見通しの癖に」

 アムラは、天界に住まう天使の一族。天使たち一族もアネモイたち同様に神の子供として天界に誕生し、生まれながら神の身の回りの世話を命じられる。
 アムラは、アストライオスの子供として生まれた天使の1体で、アストライオス専属のお世話係をしている。

 「それにしても意外でしたね。アネモイ様は、あなた様に控えめの愚痴でも漏らしに来たと思っていましたのに。かつてこの天界にて、世界を創造していたアネモイ様とは比べ物にならないほどの変わりっぷりです」
 「ええ。あの時のように、直接文句でも言われた方が、親である私としてはどれだけ楽だったでしょうか」

 アストライオスは少しだけ寂しそうな表情をアムラに見せつける。

 「2柱の神が創造する世界ですか。この前代未聞とも思われる事象。まさかこれを狙っておられたのですか?」
 「まさか。私としても予想外なこともあります。ですが嬉しい誤算であることは事実です。これからは特別観察対象として見守っていきましょう」

 するとアムラは、何かを思い出したかのようにアストライオスに問いかける。

 「そういえば、あの事を彼女に伝えなくて良かったのですか?」
 「ええ。賢いあの子でしたら、自分でそのことに気付けるでしょう。まったく、命令以上の悪戯は控えるように伝えておいたはずなのに、余計なことをして」
 「彼女に起こったあの現象、アストライオス様が仕組んだことではなかったのですか?」
 「当たり前です。私は親として、そこまでの試練を彼女に与えるつもりはありませんでした。その証拠に、これからその神に説教してまいります」
 「・・・行ってらっしゃいませ」

 こうして、天界は天界で慌ただしい日常を送っていた。

 無事に自分の世界に戻ってきたアネモイとフィルス。2人が降り立ったのは、森の中にあるあの大樹の根元だった。
 2人とも、心にあった憑き物が取れたかのような清々しい表情をしている。

 「よかったー。きちんと話ができて。覚えててくれたのもそうだし、理解までしてくれるとは思わなかった。これでようやく、フィルスとしての人生を再開できるよ!」
 「世界の住民の姿で天界に降り立ったのもそうだが、前世での神の行いを親の元で懺悔するなど、恐らくお前が最初で最後だろうな」
 
 「でも私は意外だったな。アネモイはてっきり、アストライオス様に文句でも言いに行ったのかと思っていたのに」
 「お前が罪を認めて、私だけが自分の行いを棚に上げるなどできるはずもなかろう。あの時点ですでに、私の中にはあの出来事を機に、気づかせてくれた恩だけが残った。あれが悪意のあるものなのかはさておき、私が救われたことに変わりはないからな」
 「アストライオス様、やっぱり否定はしなかったね。また似たようなことも起こるのかな?」
 「それはそれで、これからは退屈せずには済みそうで何よりだ」
 「だね!」
 
 アネモイとフィルスが森を抜け、国へ帰ると、リアが領民全員に今回の経緯を懸命に説明していた。

 「そういえば、巨大な生物がいなくなるまで、1箇所に固まって次の命令を待てと伝えておいたんだったな」
 「いろんなことが起こりすぎて、こっちのことすっかり忘れちゃってたね」

 アネモイとフィルスはすぐにリアと合流。リアから引き継いで、森の中に現れた脅威は無くなったと説明した。
 リアが空気を読んで、前世に関することについては話していなかったため、アネモイとフィルス、そしてガルドの前世の因縁を巡る出来事に関しては、当然省略した。
 
 ちなみにガルドに関してだが、アネモイが自身の力で領民たちの記憶からガルドに関する部分をすべてなくした。その方が都合がいいのはもちろんだが、ガルドがこの世界からいなくなることを望むのであれば、最初からいなかったとした方がいいのではないかと、せめてもの報いだった。
 
 その翌日、アネモイはさっそく新たな自分を領民に見せつけるべく、これまで溜め込んでいた力を爆発させるように力を使いまくった。
 
 まずは、これまで自分が住んでいた3階建ての施設を取り壊し、その場に国の管理をすべて請け負いつつ、王として住むに相応しい立派な王宮を一瞬で建築した。
 
 「なんで!?」
 「我が国の存在感を示すためには、王の住む城が立派でなくてはならん。国のシンボルとなる建物が貧相であれば、それだけ他国からの信頼を失ってしまうからな。お前もそうするべきと言ってたであろう?」
 「確かに言ったけども。まさか見栄を張るところからスタートするとは思わなかったよ」
 
 そして次にアネモイが取り掛かったのが、今まで統一感のなかった領民たちの住む家だ。かつて独立国家だったこの地は、人が加わるたびに家を建築していたことから、この地に建つ家の建築方法や構造はバラバラだった。
 
 アネモイは、まずは1つの国として相応しい色に染め上げようと、バラバラの構造だった建造物をいったんすべて破壊。国を更地に戻した。
  
 「だからなんでよ!?」
 
 そして領民1人1人から住まいに関する希望や要望を聴取。その要望を1つ1つの住居に取り入れつつ、住居の外観や雰囲気を1つの色に染め上げながら、建造物を創造していった。
 全ての領民の住まいや商業施設がいざ出来上がれば、規模は小さいものの、全体の見た目は国と呼べる代物となっていた。
 
 ちなみに、アネモイが自国に取り入れた建築技術は、前世における人族が技術を発展する際に身に付けた、自然災害にも耐えられる建築技術を応用している。
 
 このアネモイの行動力や急な変化に領民たちは最初は戸惑っていたが、いざ王であるアネモイがこうして国を形作ると、アネモイが提供した建築物の住み心地がこれまでとは比べ物にならない程快適で、そんなことはもう些細なことと思い始める。そして改めて、アネモイを国王と認める領民も増え始めた。
 
 こうして力を存分に振るい、半日もかからずに出来上がった理想の王国を、アネモイとフィルス、そしてリアは王宮の一番高い位置から見降ろしている。
 
 「本当に呆れるわ。まさか国どころか、国を形作る建造物まで神の力をフル活用するとはね。どこかの世界で見た、シュミレーションゲームという名の玩具を思い出すわ」
 「シュミ・・・なんですか?」
 
 「お前も前世の記憶を取り戻してから、神の頃に得た知識をよく発揮するようになったな」
 
 これまで自身を制御していた部品が取り除かれたことで、アネモイの国造りのスピードは飛躍的に上がった。しかし、今はまだ進展しているとは言い難い現状ではある。
 
 「それで、これからどうするの?国ができたとはいえ、あくまでもそれは外観だけ。中身はほとんど変わってはいないよね?」
 「そうですね。暮らしが多少便利になっただけで、他国との交流が増えたわけではありませんし」
 
 だが、アネモイの中にはすでに次のプランが考えてあった。
 
 「まずは領民を増やす。国を発展させていくうえでも、経済を回すうえでも、ここを解決しないことには始まらない」
 
 「簡単には言うけど、どの国もそれが一番の課題ってなるほど、皆が頭を悩ませている問題だよ。って、今までのアネモイになら言いたいところだけど・・・」
 「今のアネモイ様にとっては、些末な問題ですよね。何せ、誰もが求める力をお持ちで、それを存分にお使いになられるのですから」
 
 アネモイはさっそく領民獲得のために動き始めた。
 アネモイが目を付けたのは、他国の領民ではなく、各地に点在する国に属さない者たちが集う独立国家だ。
 彼らは、国を追われたり、独善的なやり方の領主に不満を抱いたり、様々な世界に対する不満を持った者たちが自分たちの国を造ろうと集まってできた集落である。
 
 アネモイは彼らの地を訪れ、ともに国を造ることを条件に、その対価として自分が神であることを証明。その力をもって彼らを守護することや国を運営するうえで領民に対する負担をできるだけ少なくすることを約束した。
 とはいえ、決して無理強いはせず、納得と同意を得られた独立国家のみ自国に向かい入れる。
 
 こうしてアネモイはフィルスとリアを連れ、数日掛けて転移を繰り返し、世界各地にある独立国家を訪れては交渉を行っていった。
 中には賊のような目的で集まった独立国家もちらほらあったが、そこはアネモイが神の力を見せつけ、力ある者に従う賊の習性を利用しながら自国へと引き込んだりもした。
 
 結果、新たに13の独立国家や組織が、アネモイの国に領民として加わることになった。それにより、国の人口は約150名から1000人を超えるまでに規模が拡大。
 
 新たに領民として加わった者たちには、いったんアネモイが創造した仮設住宅地に住んでもらうことにした。
 そして今度は力で住まいを建築するのではなく、アネモイが開拓し広げた領土に、アネモイ自らが領民たちに前世で培った建築物の技術を提供。新たな住民の住まいを領民自らの手で建築していきながら、一丸となって国を創り上げてゆく。無論、アネモイも必要に応じて力を貸しながら、作業効率を高くしていった。
 
 その間、同盟国であるスプリブルク王国からの派遣が必要だった国の運営や管理を任せる財政部署や警備部署の職員、さらにはリアが開いた診療所の新たな医療技術者など、国の経済を回していくうえで必要不可欠な人員を新たに加わった領民の中から募集。
 スプリブルク王国からの派遣の他に、この世界から去ったガルドや、王としての務めに専念するアネモイなど、彼らの抜けた穴を埋める対策も行っていった。
 
 少しずつ神の力をも生かしながら、国の運営に務めるアネモイ。
 同時に、人が歩くような速さではあるが、だた確実に一歩ずつ、世界は完成に向けて回り始めるのだった。
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