なかずとばず

さらさら4

「夜中か」
　蜃気楼が見えそうな昼。黒皮と灰色の車のシートは、言っていた。

「止まれ」
　仁王立ちの男は、全身を赤く光らせ命令している。

　白と黒の縦じまに立ちすくむ男の手には、白い杖。
「行ってて」
　そう言う、きみのうしろ髪は、上下に激しく揺れていた。

「寒い」
　ちいさい四角の穴は、横長の棒がはめ込まれている。隙間から冷たい息を吐き出し、言った。

「どうなった」
　黒いレバーは、一番上の階で聞いている。丸い銀色の口は、黒い髪を巻きつけ、「杖は無事だ」
と暑そうに言った。

　柔らかい口元のきみは、静かだった。

　行き先は分からないが、居場所を掲げた木の看板が置いてある。白い杖は、青く大きな走る入れ物を待った。

　強い陽射しは空気の中で、膨れ上がり優しく揺らめいている。

　振り向く横には、誰もいない。
　
「笑え」
　笑っている。そう言い聞かせた。