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ここはどこ?自分は誰?
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ピッ………ピッ………ピッ………
機械音がする。
体がひどく重たく、まぶたが開かない。
***
「ーーーーーーす?わーーりまー?」
近くで聞こえた声に、ハッと目を覚ます。
また眠っていたのか。
「あぁ、私が見えますか?」
どうやら 顔を覗き込むように見るこの女性が、声をかけていたらしい。
「ここがどこだか分かりますか?」
女性は立て続けに聞いてくる。
ここがどこだか全く分からないし、なぜここにいるのかも分からない。
ただ長いこと眠っていたのか、そんな頭の重さを感じながら、真剣な表情でこちらを見る女性を、じっと見つめ返した。
「うん、大丈夫ですよ。少し眠っていただけです。ドクターを呼んできますね。」
そう言って女性は立ち去った。
目の前には、白い天井に白色の明かりがたった一つあるだけだった。
何が何だか分からない。
見ているものも聞いている声も全て自分に向けられているのか、それすらよく分からない感覚。
うまく言えないが、自分が自分に溶け込んでいないように思えた。
***
「おお、目覚めたね。」
声のする方へ目線を送ると、先ほどの女性よりもうんと若い女性がこちらへ歩み寄ってくるところだった。
その姿は女性というよりも、少女だった。
「どうしてここへ来たか分かる?」
少女は音が鳴る機械を確認しながら聞いてくる。
腰まで伸びた髪を一つのおさげに束ね、涼しい目元はどことなく子供っぽくない目つきをしている。
その横顔をただ見つめていた。
その目線に気付いたのか、一呼吸置いてから少女は話し出した。
「……ここはラボだよ。私はドクター。君は3時間程前にここへ来たんだよ。思い出せる?」
長い眠りだと思っていたが、どうやらたった3時間しか経っていないらしい。
飾り気のない少女の瞳がこちらへしっかり向けられると、その力強さに目をそらした。
「君はいまの状況に頭が追いつかないのか、それとも余程無口なのか。…一度起きてみよう。」
ドクターはそういうと手元のボタンを押し、ベッドは上半身を起こすように持ち上がった。
先ほどよりも視界が広がる。
部屋は思ったよりも狭く、白い壁に覆われていた。そしてベッドの隣にベッドと同じくらい大きな機械が一つあるだけの部屋だった。
「さて、大丈夫かな?痛いところやめまいはない?」
「……はい。」
「よかった、てっきり話せないのかと思ったよ。」
ドクターはにっこりと笑ってみせた。
正直、自分もそう思った。
「さて。」
ドクターはベッドの端に腰を下ろすと少し真剣な表情で話し出した。
「君について教えてくれるかな?」
え、と声が漏れる。
てっきり今から自分について教えてもらえるかと思っていたので、この目の前にいる人やこの空間が自分とは無関係だということに、驚いた。
「何も…分かりません。」
「あらら、本当に。ここへどうして来たか覚えがない?」
こくんと頷くと、ドクターも驚いているようだった。
「ふむ、君を拾ったときは、特に外傷もなかったし、あんまり詳しく検査はしていないんだ。頭だけ投写したけどね、なんともなかったよ。」
そう言いながら、考えるように腕を組み、黙り込んだ。
その姿を見ながら、このふわふわした掴み所のない感覚の原因に気付いたような気がした。
「あの、自分を…見たいです。」
そう言うと、ドクターはこちらをじっと見つめ、ポケットからリモコンを取り出し、一辺の壁に向けてボタンを押した。
すると、白い壁は幕が上がるように鏡に変化した。
そこに映っていたのは、ベッドに腰掛ける少女と、その少女より一回り大きな青年だった。
長めの髪だがきちんと整えられ、傷も汚れも髭もない顔。本当についこの間まで、"日常"があったのだろう。
「これが…」
瞬きをすれば、鏡の青年も瞬きをする。
他人を見るようだったが、さっきよりも馴染んだ気がした。
それにしても、鏡に映すとより一層殺風景な部屋だ。
「さて、じっくり確認しておくといいさ。またしばらくしたら来るよ。」
ドクターはベッドから降りると、部屋を立ち去った。
静まった部屋に一人、これからを考えると無気力だ。どうやら自分は何も覚えていないようだし、自分という存在すら曖昧な状態である。
しかし、言葉を理解して喋れるだけ運が良かったと感じた。
再び鏡へ視線を戻すと、ゆっくりベッドから降りた。
3時間しか眠っていなかったのは本当のようだ、体は思ったより軽く、意識もはっきりしてきた。
高身長とは言えないが、ある程度筋肉のついた体。それに上下の繋がった白いペラペラな服。
ふぅ、とため息をつき、もう一度ベッドへ腰をかけ、ドクターが戻って来るのを待つことにした。
機械音がする。
体がひどく重たく、まぶたが開かない。
***
「ーーーーーーす?わーーりまー?」
近くで聞こえた声に、ハッと目を覚ます。
また眠っていたのか。
「あぁ、私が見えますか?」
どうやら 顔を覗き込むように見るこの女性が、声をかけていたらしい。
「ここがどこだか分かりますか?」
女性は立て続けに聞いてくる。
ここがどこだか全く分からないし、なぜここにいるのかも分からない。
ただ長いこと眠っていたのか、そんな頭の重さを感じながら、真剣な表情でこちらを見る女性を、じっと見つめ返した。
「うん、大丈夫ですよ。少し眠っていただけです。ドクターを呼んできますね。」
そう言って女性は立ち去った。
目の前には、白い天井に白色の明かりがたった一つあるだけだった。
何が何だか分からない。
見ているものも聞いている声も全て自分に向けられているのか、それすらよく分からない感覚。
うまく言えないが、自分が自分に溶け込んでいないように思えた。
***
「おお、目覚めたね。」
声のする方へ目線を送ると、先ほどの女性よりもうんと若い女性がこちらへ歩み寄ってくるところだった。
その姿は女性というよりも、少女だった。
「どうしてここへ来たか分かる?」
少女は音が鳴る機械を確認しながら聞いてくる。
腰まで伸びた髪を一つのおさげに束ね、涼しい目元はどことなく子供っぽくない目つきをしている。
その横顔をただ見つめていた。
その目線に気付いたのか、一呼吸置いてから少女は話し出した。
「……ここはラボだよ。私はドクター。君は3時間程前にここへ来たんだよ。思い出せる?」
長い眠りだと思っていたが、どうやらたった3時間しか経っていないらしい。
飾り気のない少女の瞳がこちらへしっかり向けられると、その力強さに目をそらした。
「君はいまの状況に頭が追いつかないのか、それとも余程無口なのか。…一度起きてみよう。」
ドクターはそういうと手元のボタンを押し、ベッドは上半身を起こすように持ち上がった。
先ほどよりも視界が広がる。
部屋は思ったよりも狭く、白い壁に覆われていた。そしてベッドの隣にベッドと同じくらい大きな機械が一つあるだけの部屋だった。
「さて、大丈夫かな?痛いところやめまいはない?」
「……はい。」
「よかった、てっきり話せないのかと思ったよ。」
ドクターはにっこりと笑ってみせた。
正直、自分もそう思った。
「さて。」
ドクターはベッドの端に腰を下ろすと少し真剣な表情で話し出した。
「君について教えてくれるかな?」
え、と声が漏れる。
てっきり今から自分について教えてもらえるかと思っていたので、この目の前にいる人やこの空間が自分とは無関係だということに、驚いた。
「何も…分かりません。」
「あらら、本当に。ここへどうして来たか覚えがない?」
こくんと頷くと、ドクターも驚いているようだった。
「ふむ、君を拾ったときは、特に外傷もなかったし、あんまり詳しく検査はしていないんだ。頭だけ投写したけどね、なんともなかったよ。」
そう言いながら、考えるように腕を組み、黙り込んだ。
その姿を見ながら、このふわふわした掴み所のない感覚の原因に気付いたような気がした。
「あの、自分を…見たいです。」
そう言うと、ドクターはこちらをじっと見つめ、ポケットからリモコンを取り出し、一辺の壁に向けてボタンを押した。
すると、白い壁は幕が上がるように鏡に変化した。
そこに映っていたのは、ベッドに腰掛ける少女と、その少女より一回り大きな青年だった。
長めの髪だがきちんと整えられ、傷も汚れも髭もない顔。本当についこの間まで、"日常"があったのだろう。
「これが…」
瞬きをすれば、鏡の青年も瞬きをする。
他人を見るようだったが、さっきよりも馴染んだ気がした。
それにしても、鏡に映すとより一層殺風景な部屋だ。
「さて、じっくり確認しておくといいさ。またしばらくしたら来るよ。」
ドクターはベッドから降りると、部屋を立ち去った。
静まった部屋に一人、これからを考えると無気力だ。どうやら自分は何も覚えていないようだし、自分という存在すら曖昧な状態である。
しかし、言葉を理解して喋れるだけ運が良かったと感じた。
再び鏡へ視線を戻すと、ゆっくりベッドから降りた。
3時間しか眠っていなかったのは本当のようだ、体は思ったより軽く、意識もはっきりしてきた。
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ふぅ、とため息をつき、もう一度ベッドへ腰をかけ、ドクターが戻って来るのを待つことにした。
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