私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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被害者アピール

アルベルト様は呆然と口を開け、捕縛されるミナを見ていました。次にキース様に守られている私を見ました。

彼の瞳から、急速に熱が冷めていくのが見えました。

ミナの魔法の効果が切れたのか、それとも権力を失う恐怖が洗脳を上回ったのか。彼の顔色がサァーッと白くなっていきます。



「あ……あぁ……」

アルベルト様はガタガタと震え出しました。そして、信じられない行動に出ました。

「そ、そうだ! 僕は被害者だ!」

彼は捕まっているミナを指差して叫びました。

「その女だ! その魔女が、僕に呪いをかけたんだ! 僕は騙されていたんだ!」

会場中の空気が、さらに一度下がりました。さっきまでを誓い合っていた相手をのために一瞬で切り捨てたのです。

アルベルト様は、なりふり構わず私に駆け寄ろうとしました。



「ロゼリア! 聞いてくれ! 本心じゃなかったんだ! 僕が君を傷つけるようなことを言うはずがないだろう!? 全部、あの女の魔法のせいだ! 僕の心はずっと君だけを見ていたんだ!」

彼は必死な形相で、手を伸ばしてきました。

「やり直そう、ロゼリア! 君も分かってくれるだろう? 僕は操られていた『可哀想な被害者』なんだよ! さあ、僕の手を取ってくれ!」

私は扇子を閉じ、その手を見下ろしました。かつては温かいと思っていた手。今は薄汚れて見えます。

私は一歩、後ろに下がりました。たった一歩ですが、それは永遠に越えられない拒絶の壁でした。

「……触らないでくださいませ」

私の声は、自分でも驚くほど冷たくて落ち着いていました。

「ロゼリア……どうして?」

「『騙されていた』? 『被害者』? よくもまあ、そんな恥ずかしいセリフが言えますわね」

私は怒鳴りませんでした。ただ淡々と事実を並べました。



「魔法にかかったのは不運だったかもしれません。ですが、アルベルト様。あなたは魔法にかかる前から、私の努力を見ようとしませんでした。私の忠告を『うるさい』と耳をふさぎ、楽な方へ、甘やかしてくれる方へと流れていきました」

「そ、それは……」

「ミナさんの魔法は、あなたの心の『隙間』に入り込んだだけです。その隙間を作ったのは、あなた自身の弱さと傲慢さです」

私は彼を真っ直ぐに見つめました。十年間、言いたくても言えなかった言葉を今ここで告げます。

「騙されたから無罪? いいえ。騙されて婚約者を傷つけ、公衆の面前で恥をかかせ、国に泥を塗った……その責任は、魔法のせいにはできません」

私はキッパリと宣告しました。



「あなたは『共犯』です。今のあなたは、ミナさんよりも醜くてよ」

「あ、あぁぁ……」

アルベルト様は膝から崩れ落ちました。反論できませんでした。図星だったからです。

彼はロゼリアが好きだったのではなく、自分を全肯定してくれる都合のいい女が好きだっただけなのです。

それがミナであって魔法が解けた今は、また私にその役割を求めているだけ。その浅ましさが誰の目にも明らかでした。

「見苦しいぞ、アルベルト」

その時、雷のような声が会場を震わせました。

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