私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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連行される二人

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王宮の裏門。そこは、華やかなパーティー会場とは似ても似つかないゴミ捨て場のような薄暗い場所でした。

いつもなら美しい白馬が引く豪華な馬車が停まっているはずですが、今日そこに用意されていたのは鉄ごうしがハマった黒くて古ぼけた囚人護送用の馬車でした。

「放せ! 放せよ! 僕は王子だぞ! こんな汚い馬車に乗れるか!」 

「私のドレスが汚れちゃうじゃない! ちょっと、もっと丁寧に扱いなさいよ!」

アルベルトとミナが、騎士たちに引きずられてきました。二人の姿は見る影もありません。

アルベルトの服は襟が破れ、ミナの自慢だった盗作ドレスはすそが踏まれて泥だらけになっています。髪の毛もボサボサで幽霊のようです。



「乗れ!」

騎士は無慈悲に二人を荷台に押し込み、ガチャン! と外から鍵をかけました。

狭くてカビ臭い箱の中。ガタガタと馬車が動き出すと、中で二人の醜い争いが始まりました。



「おいっ! どうしてくれるんだよ!」  

アルベルトがミナに怒鳴りつけました。 

「お前のせいで僕は『廃嫡』だぞ!? 平民だぞ!? どう責任取ってくれるんだ!」

「はぁ? なによそれ!」 

ミナも負けじと叫び返します。 



「もとはと言えば、あんたがしっかりしてないからでしょ!? 王子様のくせに、ロゼリア様一人言い負かせないなんて、役立たず!」

「なんだと!? お前が『私に任せて』って言ったんじゃないか! 変な魔法なんか使いやがって……お前さえいなければ、僕は今ごろロゼリアと結婚して幸せだったんだ!」

「ハッ! 笑わせないでよ! あんた、ロゼリア様の前だといつもビクビクしてたくせに! 私が『かっこいい』ってを言ってあげてたから、調子に乗れてたんでしょ!?」

馬車の中で、ののしり合いが響きます。

「愛してる」「君は天使だ」と言い合っていた口で、今はお互いの傷をえぐり合っているのです。

魔法が解けて権力が消え、残ったのは性格の悪い男と性格の悪い女だけ。

二人は夜通し、揺れる馬車の中で喧嘩を続けました。しかし、どれだけ叫んでも助けに来てくれる人はもう誰もいませんでした。



――翌朝。王立学園の空気は、昨日までとは劇的に変わっていました。台風が去った後の青空のように、スッキリと晴れ渡っています。

全校集会が開かれ、校長先生が壇上に立ちました。

「えー、昨夜の王宮での決定に基づき、以下の生徒を処分します」

校長先生の声が講堂に響きます。

「まず、ガストン君。君は度重なる騒音被害と、魔法の不正利用により『退学』とします。なお、今後は『王立図書館・地下書庫』での清掃作業に従事してもらいます」

「そ、そんなぁーっ!!」  

ガストンが叫びました。
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