【BL】合体戦士ダンバスター

junhon

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第十四話『ドリルカッパーの逆襲! ダンバスター危機一発!』Aパート

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「な!? なんだこれは!?」
 東京わんで漁師を営む松村洋まつむらひろし(62さい)は海の下に映る大きなかげに目を見張った。
 ざっと目測しただけでも100メートルをえている。こんな巨大きよだいな生物など地球上に存在しない。
 松村が自分の目を疑っていると、それまでおだやかだった水面が波打ち始める。海中にいるそれ・・が姿を現そうとしているのだ。
「うわぁあああ!」
 木の葉のようにれる船のへりに必死にしがみつきつつ、松村は海中から現れようとするモノの姿に目を向ける。
 つるりとした頭頂、その周りを囲むギザギザの円盤えんばん、平たい鳥の様なクチバシ――
「かっ――」
 その頭部からあるモノを連想した松村だったが、その名を言い終えることなく波にまれるのだった。
 
 
 
 東京湾に現れたその怪物かいぶつは海沿いに建てられたある施設しせつへと向かう。
 派手なネオンきらめくその建物はスーパー銭湯『お風呂ふろ天国』。
 怪物の右手に備え付けられたドリルが建物のかべを突き破った。
「「きゃああああ!!」」
 壁の向こうは女湯だ。女性客達からは悲鳴が上がり、みなはだかのまま建物のおく、あるいは気が動転しているのかくずれた壁をけて外へと逃げ出す。
「カアッパッパッパァ!」
 そんな女性達の姿は怪物の目を通してその内部へと伝えられた。
「カパパ! 眼福眼福」
 いくつものモニターで裸の女性達をながめるのは緑色のはだ恰幅かつぷくの良い体型の異形の怪人かいじん
 頭頂部は禿げ上がっているがその周りをツンツンとしたかみび、口元はしつぶされた鳥のクチバシの様になっている。緑色の肌はぬるりとした粘液ねんえきおおわれ、その背中にはかめの様な甲羅こうらを背負っていた。よく見れば操縦桿をにぎる指の間には水かきがついている。
 その姿は伝説に登場する「河童」に酷似こくじしていた。
 そしてかれが操る怪物――巨大ロボットの姿も搭乗とうじよう者の姿を模したものとなっている。
 ちがいは右手に大きなドリルがついている点だ。
 そのコックピットでやたらとトゲトゲした派手な衣装をまとう彼の名は、カッパード星の将軍の一人、カパパ将軍である。
 かれらカッパード星人には女という性が存在しない。故に異星を侵略しんりやくし、女性をさらって子孫を残そうとするのだ。
「カパパァ、若い女が選り取り見取り。さぁて」
 肌色はだいろの映像に囲まれながら、カパパ将軍は舌なめずりをするのだった。
 
 
 
「カッパじゆう出現! カッパ獣出現!」
 男子力だんしりよく研究所内に警報と共にアナウンスが流れた。
「来たか、カッパード星人!」
 トレーニングルームであせを流していた青年が身体を起こす。
 その身体は細身ながら鍛え上げられた筋肉に包まれ、その顔は獅子ししのような野性味にあふれていた。
 青年――明神みようじんアキラはタオルをひっつかみ、走り出した。
 
 同じ時、カフェテラスで文庫本に目を落としていた青年も顔を上げた。
 長い黒髪くろかみを首の後ろで結び、銀縁ぎんぶちの眼鏡をかけた白皙はくせきの美青年だ。
 青年――堀井ほりいショウは文庫本を閉じると眼鏡を胸ポケットに仕舞しまう。
 彼も椅子いすから立ち上がり、その場から走り出すのだった。
 
 
 
「博士!」
「父さん!」
 アキラとショウは同じくして発令所に姿を現す。
「来たか。アキラ、ショウ」
 そう言って振り向くのは白髪はくはつをなでつけ、ひげを生やした五十代の男性だ。
 細面に銀縁の眼鏡をかけ、知的な印象を受ける。その顔はどことなくショウと面影おもかげが似ていた。
「見てくれ」
 そう言って男性――堀井博士はモニターを目で示す。
「カッパ獣!」
 モニターに映る河童の化け物にアキラが声を上げた。
「場所は?」
八尋やひろ区のスーパー銭湯『おふろ天国』がおそわれている」
 八尋やひろ区とは東京湾にかぶ巨大人工島〈バビロン〉のことだ。東京都第二十四区となる。
「ちっ!」
 モニターに表示された地図を一瞥いちべつしたアキラは命令も待たずに走り出した。
「おい! アキラ!」
 ショウはその背中に声をかけるが、アキラは振り向きもしない。
「まったく……ではぼく出撃しゆつげきします」
 ショウは自分の父親、堀井博士に敬礼する。
「うむ。二人ともたのんだぞ」
「はい!」
 大きくうなずき、ショウもアキラの後を追うのだった。
 
 
 
 二人はそれぞれ身体にフィットした戦闘せんとう服に着替きがえると、格納庫の二台のマシンに乗り込んだ。
「バスター1号、発進!」
「バスター2号、発進!」
 声をそろえてマシンを発進させる。
 海の中から空へと飛び上がった二つのマシンは、形はちがうもののどちらも真っ赤にられていた。
 ただ、かざり程度の羽根が付いているだけでとても空を飛べるようには見えない。
 しかし、航空力学を無視して二つの機体はマッハで〈バビロン〉を目指すのだった。
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