まちカドらぞく~脱げば脱ぐほど強くなる~

junhon

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宇座土流

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 その日、女子高生・吉田好美よしだよしみは親友の桃田千代ももたちよと共に海水浴場を訪れていた。
 「う~み~だ~~~!」
 「海ね」
 テンションMAXな好美に対し、隣の千代の声は平坦だ。
 「はははっ、千代ちゃんもテンション上がってるね!」
 無表情な顔といい、とてもそうは見えないのだが長い付き合いの好美には分かるらしい。
 「じゃ、更衣室へ行きましょう」
 と、歩き出した千代だが、好美はその場に留まったままだ。
 「好美?」
 「ふふ、ふふ、ふふふ」
 俯いた好美は不気味な笑い声を上げる。
 「これを見よ!」
 そう言って顔を上げた好美は一瞬で服を脱ぎ捨てた。
 そこにはすでにビキニを着用済みの姿があった。
 好美は身長145センチと小柄ながら、バスト90のEカップ。いわゆるロリ巨乳である。
 ちなみにビキニの色は紺色だ。
 そして、輪ゴムで素早くウェーブのかかった茶髪をポニーテールにまとめた。
 「子供か」
 そんな好美を千代はいつもの半眼で眺めるのだった。
 「じゃあ私先に行ってるから。千代ちゃんも早く来てね~」
 そう言い残し、好美は海めがけて走り出した。
 「ちゃんと準備体操しなさいよ~」
 その背中に千代は声をかける。
 「うわははははは~」
 ちゃんと聞こえたかどうかは定かではなく、千代は軽くため息をつくのだった。
 
 
 
 その後、好美と千代は合流し、二人で海を楽しんだ。
 千代は身長165センチと背が高く、ピンクのビキニを着たその体型はスレンダー。
 栗色のショートヘアを今は頭の横で両お下げにしていた。フリルの付いたビキニと相まってちょっと子供っぽい印象だった。
 そして昼時となり、財布などを取りに一旦更衣室へと戻る。
 「さーて、なに食べようかな~。千代ちゃんは何にする?」
 ご機嫌な好美が千代を見ると、彼女はスマホを手に固まっていた。
 「な、何かあったの? 千代ちゃん」
 「……お父さんが車にはねられた」
 千代はスマホの画面から目を離さずに言った。
 「ええ!?」
 「幸い足を骨折する程度で済んだみたい。悪いけど私帰るね」
 そう言うとすぐさま水着を脱いで洋服を着る。
 千代の母は亡くなっており、今は父娘二人だけなのだ。
 「う、うん。千代ちゃんも慌てて事故に遭わないでね」
 「ありがと」
 短く答えると、千代は更衣室を出て行くのだった。
 
 
 
 その後、海の家で昼食を取った好美は浮き輪に入って波に揺られていた。
 「やっぱ一人じゃつまんないな~」
 折角楽しみにしていた海なのに、一人は味気なかったし、千代やその父のことも気にかかる。
 浮かない気分のまま、早めに帰ることにした。
 そして更衣室で着替えようとしたところで、好美は自分が重大なミスをしていたことに気が付く。
 替えのパンツ忘れたーーーーー!!
 好美は頭を抱えるのだった。
 
 
 
 なんとか無事家の近くまで、好美は辿り着くことが出来た。
 コンビニでパンツを買えば良かったのだが、それも何か恥ずかしい気がしたし、余計な出費は財布にも厳しい。
 結局ノーパンノーブラのまま好美は家路についた。
 ブラの方はまだいい、揺れる胸が気になるものの上に服を着ているのだ。
 問題はパンツである。
 あの三角形の小さな布切れ一枚がないだけで、こんなにも不安になるなんて……。
 好美は内股になりながら、歩幅を狭くしてモジモジと歩いていた。
 と、目の前を灰色の毛並みの子猫が通り過ぎた。
 「メタコ~」
 その後を小さな女の子が追いかける。
 子猫は道路へ飛び出し、
 女の子も続いた。
 パァアアアアアア!!
 突然けたたましく鳴り響くクラクション。
 急ブレーキをかけながらも大型トラックが女の子に迫る。
 好美は自分がパンツをはいていないことも忘れて駆けだした。
 速い。元来運動が苦手な好美が目にもとまらぬ速さで女の子に迫った。
 子猫を胸に恐怖に顔を引きつらせる女の子を抱き上げる。
 しかし、すぐ目の前にトラックが。
 ぶつかる瞬間、好美はトラックの車体へと手を伸ばした。
 トン!
 そして脚を蹴って軽やかに身を躍らせる。
 伸ばした腕を支点に前転した身体はトラックを乗り越えた。
 その際、運転手が好美のお尻を目にしたことも付け加えておこう。
 女の子を抱いた好美はトラックの荷台の上に華麗に着地する。
 そしてハンドル操作を誤ったトラックは道路脇の小さな祠へと突っ込んで止まった。
 「……え?」
 好美は今の一瞬に自分が見せた動きに驚愕する。
 腕の中の女の子も、何が起こったのか分からずにきょとんとしているのだった。
 
 
 
 近所の人が轟音に気付いてすぐに警察を呼んだ。
 トラックの運転手は病院へと運ばれ、荷台の上から下りられなくなっていた好美と女の子も救助される。
 その後、事情聴取を受け、首を捻りながらも好美は家へと帰る。
 「ただいま~」
 玄関を開けて中へと入った好美は、居間でテレビを観ていた母に声をかけた。
 「あら、お帰りなさい。速かったわね」
 ソファーに座った母・さやかが振り返る。
 長い黒髪を首の後ろ辺りで結んでおり、十五歳の娘がいる様には見えない妙に若々しい母親だった。
 「ねぇ、お母さん」
 「なに?」
 「ウチのご先祖様に忍者とかいた?」
 ガチャーン!
 さやかは手にしていた湯飲みを床へと落とした。
 好美としてはほんの思いつきだったのだが、母親の態度を見るにあの身体能力について何か心当たりがありそうだ。
 「あ、やだ、いけないいけない」
 さやかは割れた湯飲みを拾い上げ、慌ててティッシュで床を拭く。
 「私今日トラックにひかれそうになったんだけど、すごい動きで無事だったの」
 好美は先ほどの出来事を詳しく母親に話す。
 さやかは好美の姿を見ながら何か考え込んでいたが、
 「あなたその時全裸だった?」
 とワケの分からない質問をする。
 「そんなわけないでしょ! どこの痴女よ!」
 「おかしいわね……そうだったら分かるんだけど……」
 「どういうこと?」
 「ふぅ……」
 さやかは息を一つ吐き、姿勢を正した。
 「あなたに我が吉田家の秘密を話す時が来たようですね」
 「吉田家--つまりあなたのお父さんの血筋は代々宇座土うざど流忍術を継承する忍者なの」
 「う、うん」
 どうやら好美の言は的を射ていたようだ。
 ちなみに父の出雲は仕事で家を空けることが多く、今も不在だ。
 「そして彼らはとある特殊能力を代々受け継いでいたわ」
 「もしかして、それが私の中にも……」
 好美はなんだかワクワクしてきた。人とは違う何かに憧れる年頃なのだ。
 「その能力の名は”破裸漢はらかん”--」
 「名前もなんか格好いい!」
 「脱げば脱ぐほど強くなる能力よ」
 「……は?」
 好美の目が点になる。
 「つまり服を脱いで裸に近い状態になるほど身体能力が上がっていくの。戦国時代の宇座土流くノ一・吉田しのぶは一糸まとわぬ全裸で千人の鎧武者を倒したという伝説が残っている程よ」
 「なんなのよ、その破廉恥能力……」
 「でもおかしいわね? あなたちゃんと服を着ていたんでしょう?」
 「うっ……実はその時、というか今もなんだけど、私パンツはいていないの」
 「ノーパン……」
 さやかは何やら考え込む。
 「そうか! 本来なら最後に脱ぐべき下着を最初に脱いでいたことによって力が発動したのかもしれないわ」
 「あれ? でも服を脱ぐほど強くなるんなら水着の時はなんで力が発動しないの?」
 「水着はあれで完成した衣装だからよ。あなただって水着を見られても恥ずかしくないでしょ?」
 「精神的な部分が大きいのかなぁ?」
 なんとか納得出来た好美だったが、この能力、使い道がありそうにない。
 パンツをはかない状態であんな激しい動きをすれば絶対に見えてしまう。
 好美はこの力を永遠に封印することに決めた。
 --だが、その力を使わざるを得ない危機が迫っていたのだった。
 
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