3 / 15
嵐の転校生!
しおりを挟む
雪乃が一騎に告白予告をされてから一週間ほど経った。
あれ以来、一騎は雪乃の前に姿を見せてはいない。
どうやら諦めたかとすっかりその存在を忘れていた。
そんなある日の朝のホームルーム――
「皆さん、突然ですが転校生を紹介します」
担任の夏木恵里――二十九歳、独身――の言葉にクラスがざわついた。
今は五月下旬、こんな時期に転校生とは珍しい。
「入ってきなさい」
恵里は教室の戸口に向かって声をかける。
「失礼します」
扉を開け、背筋を伸ばして一人の少年が教室に入ってくる。
「な、な、な――」
「なんでアンタがここに!?」
その姿に思わず立ち上がった雪乃が大声を上げた。
「首藤一騎です。皆さんよろしくお願いします」
その疑問を聞き流し、一騎は頭を下げる。
「千明さん、お知り合い?」
「悪質なストーカーです!」
恵里の問いにそう雪乃は叫び返した。
「人聞きが悪いな。少し自意識過剰なんじゃないか? ――先生、彼女は俺のちょっとした知り合いです。できれば席は彼女の隣にしてもらえませんか?」
「え、ええと……」
恵里は二人の間で視線をさ迷わせる。どちらの言葉が正しいのか判断がつかないのだ。
「恭子、あなたはこいつのこと知っているわよね?」
雪乃は恭子に話を振った。
その恭子に向かって一騎は素早くハンドサインを繰り出す。
(スペシャルデラックスジャンボパフェ三つ)
恭子もハンドサインを返した。
(五つで)
(よかろう)
「雪ちゃん、こないだちょっと喧嘩したからって友達のことをそんな風に言うもんじゃないよ」
「き、恭子!?」
「ああ、そうなんですか。仲良くしないと駄目ですよ。では宅間くん、悪いけど席を譲ってくれるかしら?」
「あ、はい」
雪乃の隣の眼鏡をかけた小柄な少年――宅間は机を持ち上げると後ろの空席の方へと移動した。
一騎が代わりにその空席を雪乃の隣に運ぶ。
「これからよろしくな。お隣さん」
一騎は雪乃にそう声をかけ、ニヤリと笑うのだった。
◆
改めて一騎は自己紹介をし、恵里が諸連絡を伝えてホームルームが終わる。
「ちょっと来なさい」
雪乃は一騎の襟首を掴んで引きずり、教室の外へと出た。
階段下の陰に入ると、壁に背をつけた一騎の頭の横に手のひらを打ち付ける。
逆『壁ドン』である。
「どういうつもり? わざわざ私の学校にまで転校してくるなんて」
額に血管を浮かせながら雪乃が訊ねる。
「自意識過剰だと言っただろう。たまたま転校した学校にお前が居たんだ」
一騎は涼しい顔で答えるのだった。
「こんな時期に転校なんておかしいでしょうが!」
「実は前の学校で酷いイジメに遭っていてな。耐えきれなくなって転校したんだ」
「アンタイジメられるような柄じゃないでしょうが!」
「何を言う。俺は毎日戦々恐々としながら過ごしていたのだ」
自信満々に一騎は言った。
「傍若無人の癖によく言うわねっ」
「まあ、こうして同じクラスになれたのも何かの縁。仲良くしようではないか」
さすがにその部分にまで一騎の意思は関与していない。本当に偶然だった。
まさに天が一騎の味方をしてくれたのだ。一騎は運命の追い風を感じる。
「とにかく、これ以上私につきまとうと承知しないからね。半径三メートル以内に近づかないでっ」
そう言い捨てて雪乃はその場を後にした。
「……隣の席でそれは無理だろう」
その背中を見送りながら、一騎はそう呟くのだった。
あれ以来、一騎は雪乃の前に姿を見せてはいない。
どうやら諦めたかとすっかりその存在を忘れていた。
そんなある日の朝のホームルーム――
「皆さん、突然ですが転校生を紹介します」
担任の夏木恵里――二十九歳、独身――の言葉にクラスがざわついた。
今は五月下旬、こんな時期に転校生とは珍しい。
「入ってきなさい」
恵里は教室の戸口に向かって声をかける。
「失礼します」
扉を開け、背筋を伸ばして一人の少年が教室に入ってくる。
「な、な、な――」
「なんでアンタがここに!?」
その姿に思わず立ち上がった雪乃が大声を上げた。
「首藤一騎です。皆さんよろしくお願いします」
その疑問を聞き流し、一騎は頭を下げる。
「千明さん、お知り合い?」
「悪質なストーカーです!」
恵里の問いにそう雪乃は叫び返した。
「人聞きが悪いな。少し自意識過剰なんじゃないか? ――先生、彼女は俺のちょっとした知り合いです。できれば席は彼女の隣にしてもらえませんか?」
「え、ええと……」
恵里は二人の間で視線をさ迷わせる。どちらの言葉が正しいのか判断がつかないのだ。
「恭子、あなたはこいつのこと知っているわよね?」
雪乃は恭子に話を振った。
その恭子に向かって一騎は素早くハンドサインを繰り出す。
(スペシャルデラックスジャンボパフェ三つ)
恭子もハンドサインを返した。
(五つで)
(よかろう)
「雪ちゃん、こないだちょっと喧嘩したからって友達のことをそんな風に言うもんじゃないよ」
「き、恭子!?」
「ああ、そうなんですか。仲良くしないと駄目ですよ。では宅間くん、悪いけど席を譲ってくれるかしら?」
「あ、はい」
雪乃の隣の眼鏡をかけた小柄な少年――宅間は机を持ち上げると後ろの空席の方へと移動した。
一騎が代わりにその空席を雪乃の隣に運ぶ。
「これからよろしくな。お隣さん」
一騎は雪乃にそう声をかけ、ニヤリと笑うのだった。
◆
改めて一騎は自己紹介をし、恵里が諸連絡を伝えてホームルームが終わる。
「ちょっと来なさい」
雪乃は一騎の襟首を掴んで引きずり、教室の外へと出た。
階段下の陰に入ると、壁に背をつけた一騎の頭の横に手のひらを打ち付ける。
逆『壁ドン』である。
「どういうつもり? わざわざ私の学校にまで転校してくるなんて」
額に血管を浮かせながら雪乃が訊ねる。
「自意識過剰だと言っただろう。たまたま転校した学校にお前が居たんだ」
一騎は涼しい顔で答えるのだった。
「こんな時期に転校なんておかしいでしょうが!」
「実は前の学校で酷いイジメに遭っていてな。耐えきれなくなって転校したんだ」
「アンタイジメられるような柄じゃないでしょうが!」
「何を言う。俺は毎日戦々恐々としながら過ごしていたのだ」
自信満々に一騎は言った。
「傍若無人の癖によく言うわねっ」
「まあ、こうして同じクラスになれたのも何かの縁。仲良くしようではないか」
さすがにその部分にまで一騎の意思は関与していない。本当に偶然だった。
まさに天が一騎の味方をしてくれたのだ。一騎は運命の追い風を感じる。
「とにかく、これ以上私につきまとうと承知しないからね。半径三メートル以内に近づかないでっ」
そう言い捨てて雪乃はその場を後にした。
「……隣の席でそれは無理だろう」
その背中を見送りながら、一騎はそう呟くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2025.12.18)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる