幼子達と子守役のモフモフたちと

神無月

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第1章 幼子は、もふもふな幼子たちと子守役に出会う

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 その森はキラキラしていてとても綺麗に見えた。

薄暗い場所から急に外に出たからだけとは思えない輝きがそこにあった。

ここは丘の上なのか、周りの山々もそのふもとに広がる森も、その輝くような姿がよく見えた。

幼子がぼんやり遠くを見廻していると、足元近くから頻りに仔犬の鳴く声がする。

よく見れば幼子たちの周りは低い木々が疎らにある開けた草地で、辺りには様々な草が生えていた。

その草の間から、白い毛玉が振り返りながら少しずつ遠ざかっていく。


 「ひゃんひゃん…キャンキャン…」と、鳴き声も段々と遠ざかっていく。


 (仔犬さんが呼んでるんだ…行かなくちゃ…)

鳴き声に向かって進もうとするが、上手く歩けない。

前に後ろにと転びそうになりながら、幼子はよたよたと歩き出した。


 なかなか仔犬に追い付けず少し焦り始めたころ、ようやく鳴き声に追い付いたようだ。

大きな石の上に白い毛玉が乗っているのが見えた。

近づいてみると、それは平たいが大きな岩だった。

ずっと向こうの岩山から流れてきた水が、この岩の窪みに溜まって池を作り、そこからまた水が流れて川になっていた。


(仔犬さんは、ここに案内してくれたのか~

 きれいな景色だ~ありがとう仔犬さん。)


 並んで岩に座り、お礼のつもりか仔犬を撫でながら周りの風景を楽しんでいた。

すると今度は岩山から流れ落ちるように光る水玉が飛んできて、白い毛玉に並ぶようにふわっと止まった。

思わず光る水玉に幼子は手を伸ばした。


 (きれいな水の色?

 ん~、空の色だ~空色の光。

 この光も暖かいけどフワフワな毛ではなくて~

 すべすべの羽、空色の小鳥さんだ~

 あ~、でもお腹の羽はふかふかだ~)


うっとりしながら羽を撫でていると、また声がした。


 『もうほかの仲良しがいるとは珍しいわね~

 それならその子とも仲良くしてくれるかしら?

 そのこたちもあなたが気に入ったようね~
 
 そうね、あなたは人の子ね、どうかしら?

 それぞれに素敵な呼び名をつけてあげたら~。』


 『人の子は名を付け呼ぶ習慣があったな。

 ならばその前にそなたの名だ。

 なんと呼べば良い?』


急に幼子は不安になった。


 (なまえ、私の名前?なんだろう?

 そう言われればここはどこだろう?

 どうしてここにいるのかも分からない...)


 「なまえ…わかにまてん…ぐしゅん…

 にゃにも…わかにまてん…ぐしゅん…」


言葉もうまく出てこなくて片言になっている。

しかもあせって涙が出てしゃくりあげてしまった。


 『泣くな、何もわからずとも大丈夫。

 まだ知識が安定していないのだ、心配ない。

 人の子はゆっくり育つ、そのうち分かる様になる。

 ただ呼びかけるときどう呼べばよいか。

 それを聞いてみただけだ。』


 『あなたは何と呼ばれたいのかしら?

 じっくりと考えて、ゆっくりお話ししてね。』


優しい言葉に励まされて、しゃくりあげながらも、幼子は一心に考え始めた。

 
 (私のなまえ…私の呼び名…

 誰かに呼ばれるときの私のなまえ…)


 「しじゅく(しずく)でしゅ…

 し、ず、く、がいいでしゅ…

 こにちわ、しじゅく、でしゅ。

 よよちく、おねまい、ちましゅ…」


 『しずく、良い名だ...こちらこそよろしく。

 次はこの者たちの呼び名だ。

 ゆっくりと考えて決めろ。何と呼びかけたいか?』


 『しずく、こちらもよろしくね~

 とにかく心の中で思ったことと一緒に言葉に出して くれればこちらにもあなたの思いが伝わるわ~

 心話と言ってね、此処ではみんなが使えるから。

 少し言い間違えても大丈夫、安心して~』


いまだにしゃくり上げているし、言葉もかみかみだが挨拶は出来た。

ほっとして一つ頷くと、幼子はまた一心に考え出した。


 (仔犬さん…光る白い玉、手元に落ちてきたフワフ ワな毛玉…

 小鳥さん…光る空色の玉、ふわっと降りてきた、柔 らかい空の色をした羽…)


「こいにゅしゃん…ゆち(ゆき)...

 こちょいしゃん…かしゅみ(かすみ)...」


 『穢れのない白い新雪の、ゆき、良い名だ。』

 『暖かい陽射しを注ぐ春の空にたなびく、かすみ。

 とても良い名だわ~どちらも心のこもった名ね。

 さあ、呼んでみて。』


「ゆち(ゆき)、かしゅみ(かすみ)、

 わたちわ、しじゅく(しずく)でしゅ…

 にゃかよくちて、くにゃしゃい…」


 「キャンキャン…クウンクウン…

 (ぼく、ゆき…しずく、すき…)」

仔犬は尻尾をふりふりしながら、幼子の手にすりすりしてうれしそうだ。


 「ピーッツ…チチッ、チチッ…

 (わたし、かすみ…しずく、よろしく…)」

そして小鳥は、ふわっと幼子の腕に止まった。


 (今のは仔犬さんと小鳥さんの鳴き声…

 それで一緒に聞こえたのは、ゆきとかすみの気持ち かな?

 だったらうれしいなぁ~)


ゆきとかすみと見つめ合いながら、幼子は不安も忘れてドキドキワクワクしていた。


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