14 / 123
第1章 幼子は、もふもふな幼子たちと子守役に出会う
1-14
しおりを挟むゆきを躱しながら、あっちこっちうろうろとしずくは自分の歩き易い場所を探しながら歩いていた。
そのうちに、林の奥が明るくなってきて、そちらを目指して進めばいいようだと分かった。
(私の足取りも、少しずつ軽くなったかな~?
ゆきとかすみのおかげだね~
頭上のかすみも気にならなくなってきたし~
足元も明るくなって、歩きやすいし~
草原なら、もっと早く歩けるかな~?)
確かに木々が減ってきていて、目の前には草原が広がってきていた。
だが明るいのは、草原の奥に広がった湖の輝きのおかげでもあった。
「わ~おみじゅたくしゃんでしゅ、ひろいでしゅ~
キラキラちて、まぶちいでしゅ~」
驚くしずくの頭上から飛び立ったかすみは、羽を広げたまま湖面をぐるりと軽く一周した。
それから近くの岩に止まって、
「ぴぃ~ぴるぴる、ぴぃ~」
と、大きく鳴き声を上げた。
その姿は、とてもうれしそうで、この景色を自慢しているようでもあった。
(私たちにこの風景を見せたかった、のかな?)
「ちれーなとこでしゅね、かしゅみ。
おちえてくりぇちぇ、ありあとね。」
しずくがお礼を言うと、かすみは羽を広げて尾羽を震わせながら、うれしそうに
「ぴぃ~ぴるぴる~」
と、鳴いて答えてくれた。
一方でゆきの方は、林から出たとたんに草原へと走り出した。
今も走り回っているようで、あちらこちらからゆきの吠える声と水飛沫が上がっている。
「わおん、わおん、きゃんきゃん!」
(なぜ、草地で水飛沫が上がるの~?)
よく見れば、草原の半分近くまでが湖なのだった。
見た目よりずっと広い湖と時々水が輝く草原を、かすみとしずくは並んで岩に座って眺めていた。
そうしてかすみとしずくがまったりとしていると、ようやく満足したのか、ゆきが戻ってきた。
びしょ濡れのゆきは、ふわふわが無くなって、まるでやせ細ってしまったように見える。
「わー、ゆち、べしょべしょでしゅね~、
しゃむいでしゅか?だいじょぶでしゅか?
ぽかぽか、ちましゅか?」
心配になったしずくが近付こうとすると、立ち止まったゆきが大きく体を振って、水を弾き飛ばした。
慌てて顔を反らしたしずくが目を戻した時には、もう元通りのふわふわなゆきがいた。
「ゆち、ふわふわ、もとにもどったでしゅか~?
ぽかぽかでしゅか?」
しずくが念のためゆきに尋ねると、元気な鳴き声がフリフリしっぽ付きで足元に帰ってきた。
「キャンキャン…わふん」
それでもしずくの中から、水に濡れると病気になりやすいとの知識が出てきて、心配になっていた。
しずくがゆきを抱えてすみずみまでなでなでしながらも、ふわふわが戻ったか確認していた。
するとしずくの不安を感じた師匠たちから声がした。
『あの湖はいつも飲んでいる滝の水と同じ水源から流れてきて集まってできたのよ~
冷たい水だけど、飲めば力になる所も一緒よ~
濡れたままでもすぐに力に変わるから、心配ないわよ~』
『ゆきもかすみも強い体を持っている。
この程度濡れたくらいで病に罹ったりはしない。
だからしずくも安心するように。』
心配ないと、師匠達が丁寧に説明してくれた。
1
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる