幼子達と子守役のモフモフたちと

神無月

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第1章 幼子は、もふもふな幼子たちと子守役に出会う

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 ゆきを躱しながら、あっちこっちうろうろとしずくは自分の歩き易い場所を探しながら歩いていた。

そのうちに、林の奥が明るくなってきて、そちらを目指して進めばいいようだと分かった。

 (私の足取りも、少しずつ軽くなったかな~?

 ゆきとかすみのおかげだね~

 頭上のかすみも気にならなくなってきたし~

 足元も明るくなって、歩きやすいし~

 草原なら、もっと早く歩けるかな~?)



確かに木々が減ってきていて、目の前には草原が広がってきていた。

だが明るいのは、草原の奥に広がった湖の輝きのおかげでもあった。


 「わ~おみじゅたくしゃんでしゅ、ひろいでしゅ~

 キラキラちて、まぶちいでしゅ~」


驚くしずくの頭上から飛び立ったかすみは、羽を広げたまま湖面をぐるりと軽く一周した。

それから近くの岩に止まって、

 「ぴぃ~ぴるぴる、ぴぃ~」

と、大きく鳴き声を上げた。

その姿は、とてもうれしそうで、この景色を自慢しているようでもあった。


 (私たちにこの風景を見せたかった、のかな?)

 「ちれーなとこでしゅね、かしゅみ。

 おちえてくりぇちぇ、ありあとね。」


しずくがお礼を言うと、かすみは羽を広げて尾羽を震わせながら、うれしそうに

 「ぴぃ~ぴるぴる~」

と、鳴いて答えてくれた。


一方でゆきの方は、林から出たとたんに草原へと走り出した。

今も走り回っているようで、あちらこちらからゆきの吠える声と水飛沫が上がっている。

 「わおん、わおん、きゃんきゃん!」

 (なぜ、草地で水飛沫が上がるの~?)

よく見れば、草原の半分近くまでが湖なのだった。

見た目よりずっと広い湖と時々水が輝く草原を、かすみとしずくは並んで岩に座って眺めていた。


そうしてかすみとしずくがまったりとしていると、ようやく満足したのか、ゆきが戻ってきた。

びしょ濡れのゆきは、ふわふわが無くなって、まるでやせ細ってしまったように見える。


 「わー、ゆち、べしょべしょでしゅね~、

 しゃむいでしゅか?だいじょぶでしゅか?

 ぽかぽか、ちましゅか?」


心配になったしずくが近付こうとすると、立ち止まったゆきが大きく体を振って、水を弾き飛ばした。

慌てて顔を反らしたしずくが目を戻した時には、もう元通りのふわふわなゆきがいた。


 「ゆち、ふわふわ、もとにもどったでしゅか~?

 ぽかぽかでしゅか?」


しずくが念のためゆきに尋ねると、元気な鳴き声がフリフリしっぽ付きで足元に帰ってきた。

 「キャンキャン…わふん」

それでもしずくの中から、水に濡れると病気になりやすいとの知識が出てきて、心配になっていた。


しずくがゆきを抱えてすみずみまでなでなでしながらも、ふわふわが戻ったか確認していた。

するとしずくの不安を感じた師匠たちから声がした。

 
 『あの湖はいつも飲んでいる滝の水と同じ水源から流れてきて集まってできたのよ~

 冷たい水だけど、飲めば力になる所も一緒よ~

 濡れたままでもすぐに力に変わるから、心配ないわよ~』


 『ゆきもかすみも強い体を持っている。

 この程度濡れたくらいで病に罹ったりはしない。

 だからしずくも安心するように。』

心配ないと、師匠達が丁寧に説明してくれた。


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