幼子達と子守役のモフモフたちと

神無月

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第2章 幼子たちは、もふもふな子守役と出会う

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 森の長の羽に包まれたまま、揺られて優しい声を聞いているうちに、幼子たちは移動していた。

 『迎えに来た者が、儂ごと皆を運んでいますでの~
 もうしばらくこのままじっとしてましょうかの~』

そのおかげで移動中の外の様子はわからなかったが、幼子たちはかなり落ち着いた。


 『さあ~着きましたかの~』

とんと軽い音の後で、幼子たちはそっと下に降ろされた。

目の前に森の長、その後ろの木の影の中に迎えに来てくれた者の大きな姿が見えた。

 
 「ここまで、ちゅれてきてくえて、ありあとーごじゃましゅた。

 ごあいしゃちゅ、おしょくなりまちた、しじゅくでしゅ。

 こっちは、ゆちと、かしゅみでしゅ。

 おむかえも、うれちかったでしゅ。

 こえかや、よよちく、おねまいちましゅ。」

 「わふっ!わふわふっ!(ありがと、よろしく~)」

 「ぴぃ~ぴぴっ!ぴぴぴぴ…(ありがとう~よろしく~)」

その影の中の姿に向かって、幼子たちはようやくお礼を述べることができたのだった。 


大きな影に向かってぺこりと頭を下げる幼子たちを、森の長は嬉しそうに笑って見ていた。

 『とても上手な、あいさつでしたの~』

そしてご褒美のように、その柔らかな羽根で幼子たちの頭を撫でた。

大きな影からも長い影が伸びてきて、幼子たちの頭をふわりと撫でていった。


 『気にするな、いい子たち、こちらこそよろしくだ。

 さて、長、我は先に行き、皆にこの子たちの到着を知らせる。

 この子たちの案内は任せる。』

大きな影の主はそう言って、足早に木陰の奥に入っていってしまった。


そのそっけない態度に、怒らせてしまったかと萎れる幼子たちに対して、森の長は楽しげに教えてくれた。

 『ほっほっほほ~そんなことを気にするとは、いい子たちですの~

 心配せずとも、あれは照れているだけですの~

 その証拠に、あなたたちの頭をしっぽで撫でていきましたからの~

 次に会ったときに、あなた達の方から話しかけてみればいいですの~』

照れ屋なので、こちらから話しかける分には大丈夫なのだと幼子たちを安心させた。
 

 『では師匠代理として、他の者たちも紹介しますかの~

 先ずはこちらがこの森で一番大きい樹ですかの~

 遠くからでも目立つので、近くの森に住む者たちが集まるのにも、よく使われてますかの~』


それから森の長が、両翼を広げて最初に私達に紹介してくれたのは、それまで幼子たちが断崖だと思っていた壁だった。

幼子たちが改めてよく見れば、壁の下部からは根っこらしきものが伸びているし、上を見上げれば壁のあちらこちらから枝葉が伸びていた。


 (枝葉を見ようとすると、見上げた首が痛い~

 横幅だけでも、他の巨木より何倍も太いのか~それなら大きくもなるか~

 ン~?枝葉の間のあちらこちらで、ちらちら何かが動いてる?)


幼子たちが降りたのは、この根の道が広く平らになっている場所で、壁に空いた大穴に向かう途中なのだった。

その大穴に、先ほどのお迎えの方の大きな影が余裕で入るのが見えた。

それを見て、しずくが抱えたままだったゆきとかすみがバタバタと動き出した。


 「わふっ!わふっ!(あいさつ、いく~)」

 「ぴぃ~ぴぴっ!(あいさつ、しよう!)」

 「ちょとまてくなしゃい~おちましゅよ~」

しずくがゆきとかすみをそっと降ろすと、どちらも全身を振るわせてから大きく伸びをした。

どうやらしずくと同様に大穴が気になるようで、今にも飛び出しそうだ。

ゆきは尻尾をふりながら、四肢に力を入れているし、かすみは羽を広げてばたつかせている。


しずくも手足を動かしつつ、ちびゆきとちびかすみが全身を巡る様子を思いながらぽかぽかを動かしていった。

 「おまたて、ちまちた、もいのおしゃしゃん。

 もー、うもけましゅ。」


 『では案内しましょうかの~

 あの大穴が地上からの出入り口になりますでの~

 しずくとゆきはあそこから入ってもらえばよいのですがの~

 かすみはどうしますかの~

 儂と一緒に空中の出入り口を使いますかの~?』


森の長に問われたかすみは、小首を傾げて考えると飛び上がり、しずくの頭の上に止まって座り込んだ。

 「ぴぃ~ぴぴっ!(あいさつ、いっしょ!)」

 「かしゅみの、いちゅものばちょでしゅね~うれちいでしゅ~」


 『なるほど、皆で一緒に行くのですかの~

 では儂もご一緒しましょうかの~』

みんな一緒に入口へ向かうことになった。


だがその前に、幼子たちは一列に並んで、力を入れて大きな声を出す。

 「こにちわ、しじゅく、でしゅ~

 こっちは、ゆちとかしゅみ、でしゅ~

 よよちく、おねまい、ちましゅ~」

 「わふっ!わふっ!(こんちゃ!よろしく~)」

 「ぴぃ~ぴぴっ!(こんにちは、よろしく!)」


幼子たちは岸壁のような巨木に向かって、揃ってぺこりとごあいさつしたのだった。

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