67 / 123
第3章 幼子たちと子守役たちはモフモフ巡りをする
3-26
しおりを挟む九尾の長がぎっしりと詰まった森の木々から、枯れ木を森の外に放り出し始めた。森の縁を巡るように歩きながらの作業だったため、森の縁の外には、枯れ木の壁が築かれ出した。
夢中で美味しい木の芽を掘り出していたお散歩隊の面々は、新しい森の風景に驚きよりも呆れていた。
「ぴぃ~『いつのまにか、かべがある!』」
「わふっ『もりをかこんで、まもるの?』」
「きゅうびのおさのおうちのきへのみちは、あいてゆから、みえましゅね。」
幼子たちの反応は可愛いものだが、みかん色の尻尾と薄紅色の尻尾の反応は冷たいものだった。
『こんなに多くの木を枯れさせて、そのままにして置いたなんて、酷い、なの。いったい何をして、こんなに枯らした、なの。』
『こんなに枯れ木が詰まった森なんて、この森の毛玉たちには如何にも出来ないなのね~枯れ木が無くなるまで、待つしかない、なのね~』
一転しての責め言葉に、九尾の長は説明に困った。
『最初からこうやったわけや無いで。新しい樹がぽつぽつ生えて来とるだけやったんや。どんどん生えとる場所も広うなって行って、そのうちその中に見た目が変わったもんが出始めてなぁ。今ならそれは枯れ木やって分かるけど、そん時はまた新しい樹やと思うたんよ。変な樹やーと思うたけど、折れもせん倒れもせん、ただ少しづつ増えていったからなぁ。』
相変わらず枯れ木をポイポイと森の外に放り捨てながら、九尾の長は愚痴をこぼし続けた。
『最近になって、たぶん一等古い枯れ木が倒れだしてなぁ。それであれらがただの枯れ木やと分かったんやけど、すでにこの有り様でなぁ。どーしたもんかと思うとったんよ。
そこに今回の長の集会や。ここで力の扱い方と制御の技を会得できたんは、ホンマに助かったわ。
お陰で、ワイの力だけで何とか出来そうや。』
話を聞いていたみかん色の尻尾と薄紅色の尻尾は、九尾の長が放り捨てた枯れ木を森の外できちんと積み上げだした。
『この枯れた木、とても古そうなのに、全く土に還る様子が見えない、なの。不思議な枯れ木なの。』
薄紅色の尻尾が枯れ木を観察し始めた。
『この枯れ木、長いし太いのに、全く重くないなのね~これなら細くて短い枯れ木なら、この森の毛玉たちでも動かせるかもなのね~』
みかん色の尻尾も、枯れ木を動かしては観察を続けながら、意見を述べた。
『この枯れ木、軽いのんか、しかも土に還り難いんやったら、この森の毛玉らが、折れた木に挟まれる心配もないな。貴重な意見や、ありがとなぁ。』
何とかなりそうな意見に元気を貰いながら、長たちは作業を続けた。
幼子たちは、長たちが作った見透しの良い森の縁に沿って、順番に若木の芽を掘り上げていった。途中でそれまで掘り上げた芽を、九尾の長のお家の樹に集めようと運んでいると、見知らぬ毛玉たちが、恐る恐る近付いてきた。
「『こんにちは、おさんぽにきたよ、ゆきとしずくとかすみだよ、よろしくね~いっしょに、これたべよ~』」
幼子たちは気軽に挨拶をすると、そのまま毛玉たちを誘って若木の芽を食べだした。
『…おさのけはいがしたのに、あいさつはあとまわしかニィ。』『…このきのめ、ひさしぶりだニィ。』『…いいにおい、おいしそう、がまんできないニィ。』『…いただきますニィ。』
幼子たちと見知らぬ毛玉たちが仲良く分け合って若木の芽を食べると、今度は楽しいお話の時間だ。幼子たちは、わくわくして毛玉たちに話しかけた。
「このもりのけだまたちでしゅよね?しじゅくたちは、きゅうびのおさに、のせてもらって、あっちのもりから、きまちた。」
「わふっ『きゅうびのおさは、このもりの、おさのことだよ~』」
「ぴぃ~『おさたちは、そこで、おしごとしてる。』」
『…おさは、ちかくにいるのかニィ。』『…ぜんぜんこわくないニィ。』『…ねてるのかニィ。』
『…失礼な奴らやなぁ。たった今、その子らが、お仕事中や、ゆうたやろうに。』
毛玉たちの背後から、九尾の長が静かに姿を現した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる