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第3章 幼子たちと子守役たちはモフモフ巡りをする
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しおりを挟む雨の中お散歩中の幼子たちは、・たけ・の森まで足を延ばしていた。そして、最初に見た・たけ・の切り株によじ登ったところで、二尾の長の一行がやって来た。幼子たちはこの時、長たちは偶然同じ時と場所に来たのだと思っていた。
「わふっ『わざわざここまで、けだまのおさんぽ?』」
「しじゅくたちも、ここに、きまちたよ、ここは、あるきやしゅいから、かも~」
その時二尾の長の背中から、声がした。
『…おさなごが、やっとなきやんだにぃ。かわりに、おさをよんでるにぃ』
長の背中で、雨除けの・たけの皮・を支えていた毛玉が、雨除けを少し持ち上げて云った。おさは、しっぽで包んで守っていた、小型の・たけの切り株・を背中から降ろすと、覗き込んだ。
『…どないしたんや、此処があの大切り株があった場所やでなぁ。落ち着いたんかなぁ。
あんまり泣くと、体に悪いで~お散歩で満足したかいな~それとも、ワイに、なんぞ頼みかいな~』
か細い心の声が、小型の・たけの切り株・から漏れ出てきた。
『…ともだち、ちかくにいる、そこに、いく…』
長は切り株から、しっぽで小さな毛玉を持ち上げて、顔を寄せそのまま歩き出した。毛玉の小さな姿は、最初に巨大な切り株の中で見つかった時より、力なく思えた。
『…こっちやな?ここに下りたいんやな?』
そして、幼子たちがよじ登っている大きな切り株に、そっと小さな毛玉を置いた。その小さな毛玉は、幼子たちのいる真ん中に向かって、もぞもぞ動き出した。
『…ともだち、どこいく、ともだち、いかないで…』
あまりに弱々しい声に、思わずゆきとかすみはその小さな毛玉に寄り添って力を流してみた。
『…ともだち、あたたかい、うれしい…』
しずくは、思い切って、以前と同じく切り株の中に溜まっていた輝いて見える水を、その幼子に飲ませてみた。前回は、水玉にするだけで誰も飲まなかった水を、今回はきちんと小さな毛玉に飲ませていった。
『…ともだち、おみず、おいしい、あたたかい、もっと、おみず…』
水を飲むたびに声が力強く感じられて、幼子たちは交替で次々と水玉を作っては、小さな毛玉に飲ませていった。切り株に溜まっていた輝く水も、染み出さなくなるまで水玉を作っては、すべて飲ませてしまった。その様子を、二尾の長とお供の毛玉たちは、息を呑んで見守っていた。
『…ともだち、おみず、おいしかった、あたたかくなった、とてもうれしい、ありがと…』
そして、小さな毛玉の声が元気になると、大きく息を吐いた。
『…何やよう分からんけど、とにかくそこの水を飲んで、元気になったんやな、もう大丈夫なんやな?』
『…ねてるじかんがながいのは、おさないからとおもってたにぃ…』『…よわってるとおもわなかった、ごめんだにぃ…』
安心して謝罪を口にした毛玉たちに、小さな幼子ははっきりといった。
『…あやまらないで、わたしは、ずっとねてたけど、げんきだった。いつも、ともだちが、ちかくにいて、げんきをくれてた。さっき、ともだちがとおくなって、きゅうにくるしく、かなしくなった。でも、もうだいじょうぶ、げんきに、なった。』
『…ほな、その友達は、まだそこに居って、力を分けて呉れとるんやな?ずっと一緒に居るんやな?』
その時幼子たちは、知らないはずなのにどこか懐かしい声を聞いた。
『残念ながらそうではないのだ。そこな幼子もその友達も、皆迷子なのだ。今まで探していて、ようやく見つけたのだ。』
『その幼子の、本来共に居るはずの友達は、もうすぐここに現れるはずなのよ。それでこの森の長たちには、この子たちが現れたこの森で、この子たちを育ててほしいのよ。この場に湧いた水は、この辺りの力を強く含んでいるから、時々飲ませてあげればいいのよ。』
二尾の長とお供の毛玉たちは、かしこまって答えた。
『…御山の守護者様方の代わりになるよう、皆で力を合わせ、見守り育てます。』
『期待している、頼んだのだ。さて、今までこの子に力を分けてくれて助かったのだ。ありがとう、迷子の幼子たち。』
『この子はもう大丈夫、安心して、もうお家に戻りなさい、白い御山の幼子たち。』
幼子たちは、光に包まれた。
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皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
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